主題歌のボーカルを務めた林原めぐみ

主題歌のボーカルを務めた林原めぐみ

 声優で歌手の林原めぐみの楽曲(16年1月スタートの「昭和元禄落語心中」のオープニング主題歌)を、歌手の椎名林檎がプロデュースすることが先日明らかになり、話題となった。発表文のコメントで椎名林檎は「その七色の声に触れられるなど、作家として夢のまた夢」「高校生時分の椎名林檎に知らせてやりたい」と寄せている。福岡で過ごした学生時代(90年代中期)はアニメを見ていたということなのであろうか。

 1999年のインタビューを見ると、当時21歳の彼女は「(中学生の頃)ヒップホップがすごい好きだった」や「(高校時代)マライア・キャリーをバンドでやっていた」などの発言をしている。ネット上ではすぐ見当たらない情報だったので、これにも驚いたのだが、彼女がアニメに熱を入れていたという発言は見当たらなかった。調べてもその様な事に言及している様子は見受けられない。

 椎名林檎に限らず、“声優”である林原めぐみが音楽シーンや音楽家に与えた影響は少なからずある。林原めぐみの“歌手”としての功績のひとつは、声優が歌う曲をチャートアクションさせたことである。それまでアニメの主題歌や声優の歌う音楽がオリコンチャート上位に食い込む様なことはみられなかった。

 林原めぐみ名義の「Give a reason」(1996年)で、はじめてオリコン・トップ10入りを果たした彼女。そして、これが声優の歌うCDがトップ10入りした記念すべき瞬間でもある。このことを足掛かりに13年後、水樹奈々が「ULTIMATE DIAMOND」(2009年)でオリコン1位を獲得するまでに声優の歌とアニソンは上り詰めるのである。現在のアイドル声優群雄割拠へとつながる道を示したと言っても過言ではない。

 また、林原めぐみが歌手として躍進した1996年から現在に至るまで、日本サブカルチャーに決定的な影響を与えた『新世紀エヴァンゲリオン』の綾波レイ役、その後も長く付き合う事になる『スレイヤーズ』のリナ=インバース役を務めるなど、声優としてもターニングポイントとなっている。

 そして、面白い事に、この1996年前後というのは椎名林檎の「高校生時分」とぴったり重なっているのだ。椎名林檎は林原めぐみの快進撃を、福岡にいながらブラウン管(懐かしい響きだ)を通して見つめ、その「七色の声」を魅了され憧れを抱いていた可能性はありそうだ。

 そんな女子高生だった椎名林檎も今回、「二人の女遊(女優)の絡み合い。お互いに、きっと一生忘れない宝物のような時間」と林原めぐみに言わしめたのだから「私に思い残すことはございません」という椎名林檎のコメントはリップサービスなどではなく、本心であろうことがうかがえる。何だか感慨深い。そんな2人のコラボレーションに期待である。  【文・小池直也】

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