INTERVIEW

本郷奏多

「悩みを相談することはほとんどない」その理由とは:『アイのない恋人たち』


記者:村上順一

写真:村上順一

掲載:24年03月17日

読了時間:約6分

 俳優の本郷奏多が、ドラマ『アイのない恋人たち』(ABCテレビ・テレビ朝日系毎週日曜よる10時〜放送中)に出演。久米真和(演・福士蒼汰)の同級生で揉め事や争いが嫌いな I(自分)のない淵上多聞を演じる。本作は遊川和彦の脚本によるオリジナル作品。主演に福士蒼汰を迎え、2024年の東京に生きるアラサー男女7人が、それぞれにワケアリな恋愛観や家族の問題を抱えながらも出会い、触れ合い、愛し合おうとする物語。インタビューでは、 I(自分)のない淵上多聞を演じるにあたり意識していたことや、多聞と違い“自分がある”という本郷に、自身の考え方について話を聞いた。【取材・撮影=村上順一】

人間味のあるキャラクター表現が素晴らしかった

村上順一

本郷奏多

――多聞と似ている部分があると完成披露会見でお話しされていましたが、自分とは一番違うなと思ったキャラクターはいますか。

 男性キャスト3人それぞれが、愛がない、eye(見る目)のない、 I(自分)のないというそれぞれの“アイ”があるのですが、その中で多聞は自分がないと真和(演・福士蒼汰)から言われてしまいます。僕は自分の意志もありますし、周りに合わせて無難な回答をすることはほとんどないので、自分と一番違うキャラクターが実は多聞かもしれないです。ただ恋愛にメリットを感じない、という部分は自分と似ていると思います。

――撮影現場はいかがですか。

 福士蒼汰くん、前田公輝くんと仲が良いので、現場に行くのがすごく楽しいです。福士君とは 7〜8 年ぶり、公輝君も3〜4年ぶりに共演したので、一緒になったシーンはそれまでの時間を埋めるかのように盛り上がっています。

――遊川和彦さんの脚本を読まれて、どのように感じましたか。

 7人のキャラクターを主として話が進んでいくのですが、それぞれにしっかり人間味があると思いました。ちゃんとその世界を生きていてそれぞれに悩みがあり、人間味のあるキャラクター表現が素晴らしく楽しく読ませていただきました。ドラマの終盤でそれぞれ7人が描かれるシーンがあるのですが、その時の心情がみんな同じ感じになっていて、それはあまり見たことがない作りだなと思いました。人間関係が絡まっていくと、いいこともあれば大変なこともあって、「この後どうなっちゃうんだろう 」という惹きこみ方もすごいです。僕らキャストも新しい台本をいただく度に、「次どうなっちゃうんだろうね」みたいな話を現場でよくしているぐらい、みんな惹き込まれています。

――本郷さん、恋愛作品への出演は珍しいですよね。

 そうですね。僕は恋愛ものというのはあまり出演したことがないジャンルなんですけど、このお話しをいただいたとき、自分が恋愛ものに出演することに驚きました。よくよく詳細を聞いてみたら、「恋愛に対して興味がなく、恋愛なんてめんどくさいと思っているような役柄です」と聞いて、そういうことかと思って腑に落ちました(笑)。

――あはは(笑)。撮影ではアドリブのシーンはありましたか。

 アドリブはないのですが、公輝君はセリフの読み方にすごく個性があって、「あっ、そういう風に読むんだ」というのがありました。同じ文面のセリフを渡されても僕は公輝くんのようにしゃべる引き出しはなかったなって。そういうことに気づかされることはあるので、すごく刺激的でそこから生まれる空気感みたいなものはあったと思います。

――それによって本郷さんのセリフの言い回しが変わったりもされますか。

 意識はしていませんがそれはあると思います。お芝居は相手のものを受け取って、それをどう感じてアウトプットとするかみたいなものだったりします。

 また、僕は成海璃子さんと一緒のシーンが多いのですが、成海さんはベテランと言ってもいいぐらいのキャリアの方なので、信頼してお芝居できます。様々な感情になる2人のシーンがたくさんあるので、一緒に組み立てていけるのが楽しいです。

――本郷さんが印象的に残っているシーンはどこですか。

 多聞は変わった人です。普段は人当たりも良くて柔和という人物なんですけど、時々スイッチが入るというか、キャパシティをオーバーしてしまうと感情的になり言いたいことを全部言ってしまいます。表に見せている自分と、本心のギャップがすごくあって、2面性が強いキャラだと思います。

――等身大で演じられそうな役ですが、多聞を演じるにあたり考えていたことは?

 役者としてキャラクターにアプローチしていくときに、そこはあまり重要ではないと思っています。自分を役に近づけていく作業というよりは全く別の誰かを演じる作業を僕はやっています。あくまで本郷奏多という人間をどう寄せるかではなく、別なものをやるだけなのでアプローチの仕方は変わらないんです。

――初めてお芝居に携わった時から、アプローチの方法は変わっていませんか。

 僕の初めてというと、小学生頃の話になってくるのですが、その時は何も考えていなかったと思います。渡された台本のセリフを覚えて、読んでいるというレベルだったので、いつからなのかはわからないですけど、自然とそうなっていました。

――変化の過程で誰かの助言が重要になってきたりもしますか。

 芝居に関して誰かに教わったというより、自然と現場で 「この人のここが良いな」とかそういったものを感じ取って、自分に取り入れている感じです。

ピュアなものに心を動かされる

村上順一

本郷奏多

――多聞は“自分のない”と言われていますが、自分をしっかり持たれている本郷さんが、もし多聞にアドバイスができるとしたらどんなことをお話しされますか。

 多聞はなんだかんだ幸せに生きているので、正直僕から何も言うことはないです。頑張って恋愛に向き合おうとして、それがうまくいっていないだけなので。そういうものに踏み出さなければ、多聞は平和に楽しく過ごしていたと思います。でも意外と多聞は真和や雄馬には弱いところを見せるんです。心を許した人には割と素直なキャラクターだと思います。

――本郷さんは誰かに悩みなど相談されることはありますか。

 僕が誰かに何かを相談することはほとんどないです。相談して誰かに意見を求めると、責任の所在をそっちに求めてしまいそうな気がしていて。全ての物事を自分の判断で決めれば責めるべき相手が周りに存在しなくなります。とにかく責任を全て自分に置いておきたいタイプなんです。

――ところで、本郷さんは普段どんなことに心が動かされますか?

 ピュアなものに心を動かされることはあります。例えば子犬がなついてきた、子どもからハッとさせられる一言を聞いたとか、そういうものが心に響くかもしれないです。

――さて、最近、多聞のように恋愛がめんどくさいと感じられている方が多い印象があります。本郷さんが現在めんどくさいなと感じていることはありますか。

 めんどくさいとは少し違うのですが、最近セリフを覚えるのがちょっとしんどくなってきました。もちろんお仕事なので一生懸命やっているのですが、今までセリフを覚える作業が苦に感じることはそこまでなかったんです。おそらくちょっと脳が劣化してきていて、物覚えが10代の頃と比べたら若干悪くなったんじゃないかなって。今ありがたいことにドラマを2本並行してやらせていただいているので、毎日10ページくらいセリフを覚えるのですが、自分に憤慨しながらセリフを覚えています。自分の覚えが悪いせいで睡眠時間が少ないんだよみたいな(笑)。

――あはは(笑)。セリフが多い役は覚えるのは大変だと思いますが、逆にセリフがほとんどない役も難しそうですよね? セリフが普通にある役とない役でしたらどっちがやりやすいとかありますか。

 ベッドで寝たきりの役とか最高だと思います(笑)。

――そういう役やられたことあります?

 まだないんですけど、そういう役って周りを見ているとちょこちょこあって、オファーしていただけたら挑戦してみたいです。

(おわり)

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