神サイ「みんな行き着く先が同じ」いま思うバンドの強みとは
INTERVIEW

神はサイコロを振らない

「みんな行き着く先が同じ」いま思うバンドの強みとは


記者:村上順一

撮影:

掲載:22年12月09日

読了時間:約10分

 2022年はバンド初となるMajor 1st Full Album『事象の地平線』をリリースし、それを携えた全国ツアーも成功に収めた神はサイコロを振らないが、11月25日に配信リリースされた「キラキラ」を皮切りに、Monthly Winter Release “冬の大三角形“ と題し、新たな3楽曲を 11月、12月、1月の冬のシーズンにリリースする。MusicVoiceでは、その第一弾「キラキラ」をリリースした神サイの4人に本作の制作背景から、頭を空っぽにした実験的なステージにしたい、という2023年1月からスタートするZeppツアーへの意気込み、デビュー3年目に突入した神サイの強みなど、話を聞いた。【取材=村上順一】

一歩間違えるとダサくなってしまう

「キラキラ」ジャケ写

――柳田さん、最近アメリカに行かれたみたいですけど訪れてみていかがでした?

柳田周作 色々ありましたが、ストリートミュージシャンがすごく上手くてビックリしました。めちゃくちゃレベルが高いなと、刺激を受けました。あと、日本の良さも改めてわかったり。

――ちなみに皆さんが行きたい国は?

吉田喜一 好きなイラストレーターさんがイギリスにいて、実はその方と連絡を取り合っているので、イギリスにいずれ行きたいです。街中に描いてあるグラフィティーもすごくカッコいいので、生で見てみたいです。

黒川亮介 インドに行ってみたいです。僕、占いが好きなんですけど、インドでは占いが学問として認められているみたいで。色んなことを占いで決めると聞いて、自分も体験してみたいなと思い、行ってみたい国のひとつになりました。

桐木岳貢 僕は韓国の映画がすごく好きなので、韓国に行ってみたいです。聖地巡礼じゃないですけど、撮影現場を回ってみたいなと思っています。

柳田周作 韓国映画が好きだというのは知らなかった。

――韓国映画のどんなところに魅力を感じていますか。

桐木岳貢 バッドエンドが多い印象なんですけど、そこがすごく魅力的なんです。あえてハッピーエンド、綺麗に纏めないところが面白いなと思っています。

――さて、今回、Monthly Winter Release “冬の大三角形“ と題し、新曲が連続リリースされますね。

柳田周作 僕らの曲をずっと聴いてくれているファンのみんなの生活を夜空と例えて、今回リリースする3曲をみんなにとっての冬の大三角形に見立てています。夜というのはちょっと気持ちが内に入ってしまうところはあると思うんですけど、そんな時に自分と重なる曲を聴くと、暗くなった気持ちを照らしてくれる感じがしています。「キラキラ」は夜というよりは朝のイメージもあるのですが、「朝靄に溶ける」と、1月にリリースするもう1曲は夜に聴くとすごく良いと思います。

――柳田さんのツイートで相当大変だったことが伝わってきましたが、制作はどんな感じでした?

柳田周作 最近、制作するためのスタジオを借りているんですけど、そこに篭って楽曲制作をしていました。そこに行くと作曲モードになれるんです。とはいえ何も思い浮かばない時もあって…。でも、メロディーが降りてくる瞬間というのがあるので、その時に一気に構築していきます。降りてくるのをずっと待っているみたいな感じでした。大変だったんですけど3曲良いものが出来たので、いまは安心しています。

――「キラキラ」がリリースされましたが、どんな曲になったと感じていますか。

吉田喜一 「キラキラ」はすごく気に入っていて、完成してからもよく聴いています。メロディーもカッコいいし、全員の良さが出ている楽曲だなと思いました。こういったロックチューンは久々だったので、楽しみながらレコーディングもできました。

黒川亮介 この曲を聴いて、昔のことを歌っているなと感じて、その時の時間はすごく大事だったんだなと思いました。いま気づくことも沢山あって、また何年も経ってから今の大切さにも気づくんだろうなと思いました。なので、みんなで曲を作ったり、ライブをしたりしている時間も、もっと大切にしたいと思わせてくれた曲になりました。

桐木岳貢 僕の根本にある考えとして「自由にいこう」というのがあります。しっかり考えてはみるんですけど、結果的には自由に行こうぜ、自由にやったらいいという気持ちになることがります。この曲で<自由にいこうぜ >と歌詞の最後に登場するんですけど、すごく共感しました。

柳田周作 確かに桐木はその傾向がすごくありますね。この曲はけっこう難しくてギターロック的な感じではあるんですけど、一歩間違えるとダサくなってしまうところがあって。

――紙一重なところがあったんですね。

柳田周作 その塩梅と曲調が、ポップが故にすごく難しかったんです。アレンジ一つとってもガラッと雰囲気が変わってしまうので、そのバランス感覚は模索しました。イントロもギターではなくシンセにしたり、サビでもシンセを入れたのもそういうところからでした。自分たちしかわからない領域かもしれないですけど、細かいところを突き詰めていきました。

――ギターのアレンジはいかがですか。

吉田喜一 ギターソロはレコーディング当日、その場でフレーズを作ってレコーディングしました。

柳田周作 フレーズを事前に考えてきてくれて、すごくカッコ良かったんですけど、もっと頭を空っぽにしたような感じのソロが欲しくて。

吉田喜一 もう頭を空っぽにして、いくつかソロを弾いて一番いいのを選びました。

――ドラムはいかがでした?

黒川亮介 パワーという言葉が似合うドラムになっていると思います。ただ、バスドラムを踏むタイミングは柳田と相談して決めた部分もありました。

柳田周作 あまり重たい感じにしたくなかったんです。前のめりなスピード感が欲しくて、それはバスドラムで決まると思いこだわりました。

黒川亮介 音に関してはDWという、いつもと違うメーカーのドラムを使いました。あと、ビーターをローボーイというのを使ったのも今回のレコーディングの特徴だったと思います。ちょっとローの感じがふくよかになっていると思います。

――ベースで意識されていたことは?

桐木岳貢 スピード感を大切にしていたのと、ライブでずっと前を向いて演奏していたい、お客さんの顔を見て演奏したいと思いました。あまり手元を見ないように、というのを念頭に置いてフレーズを作っていきました。

――そう思ったのはどんなきっかけが?

桐木岳貢 ライブをやっていく中で、僕らが笑顔で演奏していればみんなも笑顔になりますし、お客さんの顔を見て演奏しないと伝わるものも伝わらないんじゃないかと思いました。自分が他のアーティストのライブを観にいった時に、目線がお客さんにある方がすごくいいなと思うことが多かったので。

みんな行き着く先が同じ

――来年はZeppツアー『Zepp Tour 2023「雪融けを願う飛行船」』も決定していますけど、今どんな意気込みで臨もうと思っていますか。

柳田周作 ツアーをイメージしながら今回の3曲を作っていったところもあります。セットリストも真新しいものにしたいなと思っていて、もちろんメインで聴かせる曲はありつつも、流れをガラッと変えてみるとか実験的なツアーにできたらいいなと考えています。

吉田喜一 Zeppツアーというのはロックキッズにとって憧れといいますか、自分もすごく憧れていたことなので、シンプルにZeppツアーができることが嬉しいです。前のライブでも片鱗があったのですが、昔の気持ちを思い出してやってみたい、自分の中で変革をもたらすツアーにしたいと思っています。

黒川亮介 メジャーデビューする前のライブ映像を観たんですけど、楽しく観れました。パッションしかないステージなんですけど(笑)。今は変に考えてしまっているところもあるので、ツアーではそれを一度忘れて演奏してみたいと思っています。

桐木岳貢 僕もこの前、ミュージシャンの友人と神サイの昔のライブ映像を一緒に観たんですよ。その時に昔の自分たちもいいなと思いました。知識や経験は必要なんですけど、それがちょっとよくない方に作用することもあって。頭を空っぽにしてライブをしてみるのもカッコいいと思ったので、“空っぽ感”というのを次のツアーは大事にしたいと思いました。

――衝動的なところが良かったり。

吉田喜一 一発目のライブが、一番カッコいいという説もありますから。

柳田周作 いま当時の映像を観るとグッとくるところがあります。こんなことやっていたこいつらが今こんな風になっているんだという、ストーリーが生まれていて。

吉田喜一 こんなことと言えば、ギターのペグとナットの間の弦を4回鳴らして曲に入るとか(笑)。

柳田周作 やってたね。歪ませて深いリバーブをかけて、それがすごくカッコいいと思って当時やってました。でも、そんな突拍子もないことを次のツアーでやってみたいです。学問だとまたちょっと違いますけど、芸術に関しては経験がマイナスに作用することもあるんじゃないかなと思います。上手さを提示したいだけなら経験は重要ですが、上手さだけが全てではなくて。上手くはないけどグッときたりする瞬間もありますから。

――ライブになると、それはより顕著かもしれませんね。

柳田周作 僕が神サイを組もうというきっかけになった憧れのバンド、ミュージシャンがいるんですけど、すごく歌も上手いし、なによりガムシャラにギターを掻き鳴らす姿がめちゃくちゃカッコ良いんです。経験を積んできたことによって、よりそのバンドは洗練されていきました。それも良かったんですけど、僕は当時の方がカッコよかったと思っていて、それを電話で本人に「今より昔の方が好きだった」と言ってしまったことがありました。

吉田喜一 憧れの人に最悪な電話をしたね(笑)。

柳田周作 そうだね(笑)。でも、それについて「わかった。そんなに言うんだったら今度2マンライブしよう」と言ってくれたんです。その2マンの時の彼がすごく良くて。昔に巻き戻ったわけではなくて、今の良さがありながら当時の雰囲気が出ていたんです。

――昔あった荒削りな部分も重要なんですね。さて、皆さんが“キラキラ”と聞いてイメージすることは?

吉田喜一 難しいですね...。キラキラと言ったらClubぐらいしかイメージがわかないです。

桐木岳貢 ラフを録り終えた時、近くに幼稚園があって、そこの園児がすごくキラキラしてました。なので、子どもたちが僕の中でのキラキラです。もう可能性が無限大だというのを感じました。

黒川亮介 僕は『遊戯王』カードですね。キラキラと聞くとその中の“キラカード”というのを思い出します。ファイルにそのキラカードを入れて見て楽しんでいました。見ているとテンションが上がるんですよ。

柳田周作 僕はやっぱりアメリカのLAです。3週間に一回くらいしか雨が降らないみたいで、ずっと晴れています。陽が落ちるのも午後の7時くらいでずっと明るいですし、湿度も低くカラッとしていて僕はそれがハッピーに感じていました。なので僕のキラキラはLAで見た太陽です!

――影響を受けて帰ってきましたね。

柳田周作 これはバンドメンバーと行ったら、すごくいい経験になるんじゃないかなと思いました。

――さて、今年はデビュー2周年を迎え、デビュー2周年イヤーを突き進んでいる神サイですが、今のバンドの強みはどこにありますか。

吉田喜一 本質は変わっていないと思っていて、今まで以上に楽曲の幅が広がったのは新たな強みになっているなと感じています。

柳田周作 うんうん、それは確かにあるね。あと、僕がいま感じている強みは、みんな行き着く先が同じところです。僕がすごくポップな曲を書いたとしても、それをしっかりカタチにしてくれる。デビューしてから本当に色んな曲を作ってきたんですけど、それが全てちゃんとカタチになっています。「自分はこれしかやりたくない」というのがなくて、神サイとしてのチャレンジにみんなのエッセンスをしっかりと落とし込めているなと感じています。

 僕らはジャンルがないんです。昔、赤い公園のインタビューを読んだ時に、赤い公園にはジャンルがない、津野米咲さんの作る曲を表現しているみたいなお話をされていて、すごく共感したのを覚えています。そのスタンスに僕らも近くて、すごく自由度が高いというのが強みになっていると思います。

(おわり)

ライブ情報

【フェス】

12月18日(日) MERRY ROCK PARAD 2022
12月25日(日) FM802 ROCK FESTIVAL RADIO CRAZY 2022
12月29日(木) COUNTDOWN JAPAN 22/23
1月28日(土) FUKUOKA MUSIC FES. 2023

【ツアー】

神はサイコロを振らない Zepp Tour 2023「雪融けを願う飛行船」

1月15日(日) Zepp Fukuoka
1月21日(土) Zepp Nagoya
1月22日(日) Zepp Osaka Bayside
1月29日(日) Zepp Sapporo
2月5日(日) Zepp Haneda(TOKYO)

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