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9月末をもってSKE48を卒業する古畑奈和が、卒業ソロシングル「ひかりさす」をリリースした。表題曲はゴスペラーズの黒沢薫がプロデュースした。黒沢は、『第3回AKB48グループ歌唱力No.1決定戦』の審査員でもあり、ファイナリストで結成された「Nona Diamonds」の「はじまりの唄」を作詞・作曲している。いわば古畑の歌声を熟知する黒沢が歌を通して「アイドル・古畑奈和」を表現した曲とも言える。それを歌う古畑はどのような思いで臨んだのか。そして「歌」は自身にどういう影響を与えたのか、今の心境を聞く。※なお動画ではアイドルになった理由、そして「アイドル・古畑奈和とは」について聞いている。【取材・撮影=木村武雄】
「ひかりさす」に私らしさ
――卒業発表から時間が経ちましたが今の心境は?
特に変わりはなく、本当にいい意味で普通というか今まで通りという感じです。実感がまだないというか。「自分の番が来た」くらいのテンション感で落ち着いています。小中学校を卒業するような感覚に近いです。「早かったな」「あっという間だったな」って。
――そのなかで迎えた「ひかりさす」。黒沢さんとヒアリングされたようですが、どのように進められたんですか?
どういう思いを込めてどういう言葉を入れたいのかを聞いてくださって「これで終わりじゃない、さよならじゃないということを伝えたい」と話しました。黒沢さんも「古畑さんのことを応援して良かったって思ってもらえるような曲で、バイバイっていう感じの曲じゃない方がいいと思う」と言ってくださって。私と同じ気持ちだったので「あとはお任せします」という感じでした。
――最初に曲を聴いた時はどうでしたか。
嬉しかったです。最初は「バラードを書いて下さったんだ」と思いましたが、早い段階でバラードからダーク感に急展開して良い意味で裏切られる感じがありました。きっとファンの方も「奈和ちゃんぽい」ってほっこりする瞬間だと思うので、私らしさを入れていただいたのがすごく嬉しいです。
――古畑さんはロック系の印象も強いですが、黒沢さんは繊細なバラードも高く評価されていて、Aメロはそれが表れていると思いますが。黒沢さんから言われたことは?
黒沢さんは「優しいのも歌えるし、激しさがあるのも古畑さんぽいから入れるね」と言ってくださって、私が持っている声の性質とかを引き上げてくださった感じでした。
「AKB48グループ歌唱力No.1決定戦」、Nona Diamondsが与えた大きな影響
――少しさかのぼりますが、Nona Diamondsで昨年6月に発売記念スペシャルライブをやって、そのリハには黒沢さんもいらしてアドバイスされていましたね。
黒沢さんは、みんなのことを見守ってくださっていました。「大丈夫だよ」って声かけてくれたり「よく音を聞いてね」って言って下さったり。Nona Diamondsの活動をしている間も大切なことをいっぱい教えて下さって。歌詞に対する解釈や「こういう歌い回しをしたらこういう感情で届く」とか、「休みも大事だから頑張りすぎないようにしようね」とストッパーになってくださって。どのぐらいやっていいか分からないから、みんなが今ほしい的確なアドバイスをくださって。黒沢さんに教えてもらったことで成長できましたし、ステージも楽しいって思えました。
――もともと歌うのが好きな古畑さんですが、Nona Diamondsとしての活動はすごく楽しい期間でもあったんですか?
ここまでがっつり歌に真剣に向き合う機会はなかったので、本当に貴重でした。「なんでできないんだろう」とか「もっとこう歌えたらいいのに」とか、後で音源を聞き返して「こう表現したかったな」とかいろいろ出てくるのがすごく面白くて、楽しかったのもあるけど、「もっとうまくなりたい」とか「安心して届けられる歌声になりたい」って思えるようになって歌に対しての欲が出たというか、そういう意味でも成長できたなって思います。
――あの期間がご自身のこの先の道に影響を与えたんじゃないかと思いますが、実際はどうですか?
今後何をするかはまだ決まってないんですけど、歌に関しては自信がないタイプで良いところが分からなくて。自分の声に特徴があるわけでもないですし、安定して歌えるわけでもないですから。一時期自信がなさすぎて「無理だ」ってなったこともあって。でも本気で向き合って好きになれましたし、それこそ「良かったよ」って言ってくれる審査員の方もいて。もちろん人によって嫌だって思われることもありましたけど、それでもいいって思ってくれる人がたくさんいたから、何か自信が持てるようになったというか。今後がどうなるか分からないけど…これからも続けていけたらいいなっていうのはあります。
――もう無理だなとかつらくなったというのはいつ頃ですか?
わりと定期的にあるんです。でもコンサートや劇場で歌っていると「なんで歌えないんだろう」って落ち込むことがあって。上手な人の歌を聴いていると「私下手だな」って痛感させられて。もともと家族にも言われていたぐらい音痴だったので、よく成長したなって思います(笑)。きっとそれまでは向き合うことに逃げていたんだと思います。
――向き合えたのは、やっぱり「AKB48グループ歌唱力No.1決定戦」ですか?
歌唱力No.1決定戦も大きいですね。歌は好きですが、審査されること自体は嫌だったんです。でも出たら気付くこともいっぱいあるもんですね。今となっては出て良かったなって思いますし、歌に苦手意識があるまま終わらなくて良かったって思います。
「争う」ことに抵抗
――歌唱力No.1決定戦にそれまで出なかった理由は「争うことが嫌い」とも話していましたね。
やっぱりストレスになるので。考え方を変えれば良かったんですけど、順位が付くことは争わないといけないですから。自分が上に上がったら誰かが下に落ちることになりますし、自分が下に行ったら現実を見るし、難しいですよね。歌って別に張り合うものじゃないというのが自分の中であって。
でも考え方を変えたら自分のやる気にも繋がりましたし、生バンドで歌えますし。緊張でいっぱいいっぱいになるステージってなかなかあるわけじゃないので、争いに行くって考えなきゃいいんだって。順位が付くことによって「もっともっと上手にならなきゃ」という気持ちも出てきますし、そこに対して少し柔らかく考えられるようになりました。出ないと気付けないこともありますし、挑戦して意味ないことなんてたぶんないって。
――AKB48グループで言うと、争う=総選挙ですけど、やっぱり総選挙の影響も大きかったんですか。
それもありました。総選挙の時は必死でした。SKE48がちょうど先輩が卒業されていく時期でもあったので「今ここで後輩が勢いをつけないといけない」って勝手に思い込んじゃって。でもそれはそれで頑張れたので良かったのかなって。
――「ひかりさす」の歌詞には、<「私らしさってなんだろう?」/「私にしかできないことは?」/探しては見えなくなってたあの頃>というのがあって、迷っていた時期にグループから逃げたいと思ったことは?
それはなかったです。自分らしさというのは、これだけグループに女の子がいたら、自分の個性って何だろうって考えますし、自分はどうしたいのか、自分は何なのかって考えれば考えるほど分かんなくなっていくと思うんです。だから、そういう心境を表してくださったのかなって思います。歌詞にもあるように、私は私ですし、ファンの方にとったら「古畑奈和」というのは私しかいないので、私が立ってるだけでもう自分なんだと。自分らしさはもうそこにあるんだと思ったらそこで悩むことはなくなりました。
考えても仕方ないですし、ファンの方から見る私らしさと、私から見る私らしさって違う部分もあると思うんです。それを気づかせてくれたのは、ファンの方のおかげでもあるし「奈和ちゃんは奈和ちゃんだよ」って何回も言い続けてくれたから、私は何しても私なんだって思えました。こうやって大人になって成長できたのは、いろんな意見を聞いてきたこともあって。SKE48にいる11年間でメンタルは強くなりました。
――だからこそ「アイドルをやりきったから卒業」って言えたのかもしれないですね。
その通りです。やりきったって思えているからだと思います。多分やりきれてなかったら卒業を決めていないと思います。
かっこいい背中をみせたい
――古畑さんは休符のブレスもすごく大事にされていて、なおかつ歌詞の裏で流れているメロディや音も意識しているとも話されていましたが「ひかりさす」でもそうした細かいところは意識されたんですか?
1回何も気にせずに感情のままに歌ってそこから修正していくことをよくやります。息づかいや声を震わせるのかとか、裏声やここだけ抜くとか、ちょっと変えるだけでニュアンス変わることは黒沢さんからも教わっていたので、細かいところまでやりたいと思って歌いました。
――歌う時に感情を出し過ぎるから客観的に歌うように心がけている時もあるとも話されていましたが、今回のように自分が投影された曲はより意識されましたか?
感情任せに大暴れして歌ってしまったら本当に伝えたいことが伝わらないと思いますし、出し過ぎても子供っぽくなると思うので。私はこの曲と共に次のステップに向かう姿をかっこよく見せたいと思っていたので、かっこよく終われるように頑張りたいと思っています。ジタバタしてる私じゃなくて、この曲でかっこいい背中を見せるという意識で歌いたいなと思っていて、だからこそわりと落ち着いて歌えたと思います。
「次を見たい」に希望
――最近、表情が変わったように感じますね。
そうですか!?(笑)確かにそうかも!卒業決めたメンバーを傍から見ると何か違うなって感じますよね?私もそれになってますかね(笑)
――なっていますね(笑)どこかリラックスしているような。いい意味で気を張っていないというか。卒業前は皆さんからそういう似たような印象を受けます。
背負うものが変わるんじゃないですかね。今までは自分のことだけを考えようと思っても、やっぱりSKE48というグループが大事ですし、SKE48なくしては自分はいられないですし、どうしてもメンバーのこと、SKE48全体を考えている。考えてなさそうに見えても、自分の立ち位置というのを考えながらみんな過ごしていて。その背負っていたものが、次は自分の人生一つに変わるので、そこが表情として変わってくるのかなって思います。でもどうなんですかね?結局卒業してからじゃないと分からないですけど、またベクトルの違うものを背負い出すんじゃないかなと思います。
――衣装はご自身が考えたんですか。
「赤色がいい」ということと、デザインは「私をイメージしていただければ嬉しいです」と伝えました。本当にお気に入りです。今までシースルーのドレスってあんまりなかったのでとても嬉しいです。
――情熱的な印象も受けますしね。
この曲も結構情熱的な曲だったので、やっぱり赤でしょう!って(笑)
――カップリングには「MESSIAH」のピアノバージョンもあります。レコーディングはどうでしたか。
歌い慣れてる曲ではあったので楽しかったです。ピアノバージョンなので、エモーショナルになれるというか。もともとがガンガンいく感じのテンポアップな雰囲気だったので、また違う雰囲気を楽しめました。
――今回の曲を通して感じるのは、バラードでの歌声の美しさで、やっぱり歌声が綺麗という印象を受けました。今後の活動がどういうものになるかは分かりませんが、歌手活動も楽しみですし、憑依型なのでお芝居も見てみたいなと。
そうやって「いろんな私を見てみたい」と思ってもらえる存在になれたことが嬉しいですし、この先の「次」が見える人になれて良かったなって思います。「ここで終わりじゃなさそうだな、次が見たいな」って思ってもらえるのはすごいことじゃないですか。だから嬉しいです!
(おわり)
古畑奈和卒業コンサート・卒業公演
「古畑奈和卒業コンサート@日本ガイシホール ~ハニーフェス~」
9月24日(土)開場 10:30 / 開演 12:00
https://ske48.co.jp/feature/furuhata_graduation
チームKII「最終ベルが鳴る」古畑奈和卒業公演
9月29日(木)開園 18:00
出演メンバー
青木詩織・青木莉樺・荒井優希・伊藤実希・入内嶋涼・江籠裕奈・太田彩夏・岡本彩夏・川嶋美晴・北野瑠華・鈴木愛菜・中野愛理・西井美桜・日高優月・藤本冬香・古畑奈和・水野愛理
SKE48 LIVE!! ON DEMANDでも、生配信+アーカイブ配信
https://ske48.co.jp/news/29/
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