INTERVIEW

柳俊太郎

根底にあるのは「人好き」 『神は見返りを求める』で念願の吉田組


記者:木村武雄

写真:木村武雄

掲載:22年06月26日

読了時間:約9分

 柳俊太郎が、ムロツヨシ主演映画『神は見返りを求める』で、クセが強いものの身近にいそうな役どころを好演した。本作は、お人よしな主人公の田母神(ムロツヨシ)が合コンで知り合った底辺YouTuberのゆりちゃん(岸井ゆきの)を手助けし、良きパートナーとなっていくが、あることをきっかけに2人の関係が「見返りを求める男」と「恩を仇で返す女」へと豹変していく様を描く。先日最終回を迎えたドラマ『ナンバ MG5』で8年ぶり共演を果たした間宮祥太朗と“壮絶な戦い”を演じ話題を集めた柳は今作では、2人が豹変するきっかけを与える新進気鋭のデザイナー・村上アレン役を演じる。吉田恵輔監督作に出演したいとかねてから思っていた柳にとっては念願の吉田組。キャラが濃い業界人をどう演じたのか。そして根底にある役者としての考えとは。※柳俊太郎の「柳」は、正しくは木へんに夘。吉田恵輔監督の「吉」は、正しくは士の部分が土。【取材・撮影=木村武雄】

念願の吉田組

――今回の役どころですが、どう捉えてアプローチされましたか。

 イメージがつきやすい役で、僕のなかでは「友達にはあまりなりたくないな」って(笑)。理屈っぽいし、上から目線ですし。ただ、周りのキャラクターが、自分の人生を戦わずに逃げてきた人ばかりで、村上は戦って結果を残してきたので何か妙に説得力があるんです。いわゆる嫌な奴だけど説得力があって何も言い返せないみたいな。

――最終的にああいうキャラクター像になったのは、現場でやってみてという感じですか。

 そうですね。吉田監督が決断の早い人というか「じゃあ、こういう」という感じでシンプルに言ってくれて、あとは「感情に任せて自由にやっていいよ」ということだったので、非常に心地良かったというか、ノンストレスで現場は過ごせました。

――そのなかでも吉田監督が求めたキャラクターの軸みたいなものはあったんですか。

 村上としては、ゆりちゃんをもて遊ぶ気はないんですけど、傍から見たらそう見えるようなことをストレートに伝えたりするので、はっきり言わなきゃいけないときは、吉田監督から「ここはもっと強く言って」というアドバイスを受けて作っていきました。

――どの作品も演じる役を愛するというのが柳さんのスタイルですが、今回は?

 尊敬できなくはないんですよね。ああやって人に嫌われながら結果を残すっていうところは。一匹狼な感じだけど、慕ってくれる人がいるから。結局嫌な奴だけど、この人に頼めば間違いないみたいなところは尊敬します。ただ何度も言いますが友達には絶対になりたくない(笑)。

――ビジネスの面では勉強になるかもしれないですけどね。

 結構そういう人いるじゃないですか。だからイメージがつきやすかったです(笑)

――監督の作品に出たかったとおっしゃっていましたが、気になった作品はあったんですか。

 過去作は結構好きで、『さんかく』(2010年)とか『ヒメアノ〜ル』(2016年)はもちろんですし、『愛しのアイリーン』(2018年)は単純に面白いなと思って観ていたので。吉田監督の映画は抑揚がすごいというか、今回のこの映画がそうなんですけど、ハッピーからバットに行く落差がすごかったり、波が異常に面白いというか、リズムもいいし、無理な落差とかじゃないんですよね。観ている人の感情をちゃんと突く映画を撮られる方なので、今回ご一緒できて嬉しかったです。

――出てくる人たちが実際にいるような感じで且つ面白い。

 舞台挨拶で言ったんですけど、本当にユーモアのある方なので、キャラクターそれぞれがみんな濃いんですよね。それは吉田監督の発想力というか、吉田監督がユーモアのある方だからキャラクターも面白くなるんでしょうね。

二面性にも「らしさ」

――今回のバックボーンについては監督とも結構話し合ったんですか。

 いや、淡々とミステリアスな方がいいって言われて。衣装もああいう感じだし。バックボーンに関して変に気にしていると余計に動いちゃうのでそこは淡々と。でも、何となく単純に僕がイメージするデザイナーの理屈っぽい感じを軸に置いて演じました。

――柳さんらしさが出ている感じがしますね。ドライだけど愛くるしさもほんのり出ていて人間味があるんですよ。感情の起伏が激しい中で、何かピンボールじゃないですけど、ボールをはじく物語の杭になっているというか。そんな立ち位置なんだろうなと思いながら観ていました。

 嬉しいです。ありがとうございます。彼自身言っていることは全然間違ってないと思うんですよ。確かに言い方に問題あるし、もうちょっと人付き合い上手くやれよって思うんですけど、言ってることはそんなに間違ってないというか、実際に彼女を手伝っているわけで、本当に性格悪い奴だったら手伝わないですからね。村上はわりとまともな方なんですよ。そういうポイントでまともなことを言うところは自負して臨みました。

――ムロさん演じる田母神からしたら憎たらしい人。でも岸井さん演じるゆりちゃんからしたら頼れる人。この二面性がちゃんと出ていて。

 でも割と僕はそのまんまで。淡々とすることで、違う感情を持っている人同士が見たら、全然違う角度に僕を見るので。僕は動いてないけど、後ろから見る人もいれば、前から見る人もいて、見る角度によって全然違うよっていうところはもちろん台本に描かれていた部分なので、僕が作っていくというよりは、吉田監督がそういうキャラを作りあげてくれました。現場で吉田監督のイメージに合うように指示に従って、あとは自由にお芝居しました。

柳俊太郎

柳俊太郎

2年前のことが現実に

――今回の出演はどういう流れだったのですか。

 お話をいただきました。吉田監督の作品は好きですし、オリジナルでテーマも現代の闇というか、今ちょうどこういう問題が大きくなってきているじゃないですか。でも2年前撮影していた時とか台本いただいた時にきっとどこかでみんなこういうことが起こるんじゃねえかっていう怖さは風潮的にあったと思うんです。それを先に吉田監督が作り上げたことは、さすが見る角度が面白い方だなって思います。

――コロナになった直後くらいですか。

 コロナ中でした。

――多分、捉え方とかも当時と今とでは全然違いますね。

 そうですね。でもこういう社会の問題を取り上げて映画を作ることって昔からあったことで、それは映画の持つ力だと思う。現代の問題を映画を通じて訴えかけるっていうのは、映画にできる貢献だと思うから、こういう作品を一緒に作れたことは嬉しいですし、それを観て受け取る人がどう判断するかというのはお客さんのものなので。でも、そのダークさというのは吉田監督の世界だなって。しっかりダークなところに落とし込んできたなという印象ですね。

――混沌としたなかで今回の作品は改めて、何が大事なのかというのを考えさせてくれます。

 みんな同じ恐怖はあると思うんですよね。これから社会どうなっていくんだろうとか、もちろん仕事とか環境は違えど、絶対みんな共通して持っている怖さってあると思う。これだけSNSが発達して、これどこまでいっちゃうんだろうなっていう怖さとかあると思うので、こういう映画を観て、自分の人生に落とし込んだときに、その人なりにいろいろ考えていただけたら嬉しいです。その人の人生の何かになれれば嬉しいかなと思います。

続く“再共演”

――それと『ナンバMG5』での陣内一久役はすごくカッコ良かったですね。

 ああいう熱い作品はどこか懐かしさを感じるというか、どの時代にもあのいい熱さが響くと思っていて。出演したのは2話だけですけど、参加できたのは嬉しいですね。

――インパクトがありました。それは柳さんのイメージが付いているからかもしれないですけど。どっちにつくんだろうとか、そういう良い意味での不穏さというか。

 そこは台本をもらって、ずっと求められているなと思いましたし、そのミステリアスさは大事にしました。最後は結局拳で分かり合うみたいな、不良漫画の解決方法というか。あれが気持ちいいですよね。

――間宮祥太朗さんとはどうでしたか。

 久々の共演だったんですよ。俺が22歳で彼が20歳とか、それ以来10年ぶりだったんですけど、なんか大人になっていました(笑)でもこういう出会いを大切にしたいなと思うし、すごく嬉しかったです。しかも殴り合ってという関係性がまたぐっとくるものがありました。

――体がぶつかり合うと芝居もぐっと距離が縮まるものですか。

 それはめちゃくちゃあると思います。やっぱり違う人間と言えど感情に乗っかって言葉を交わしているので。

――『ヒル』での坂口健太郎さんとか、最近久々の共演が多いと思うんですけど、その中で気付いたり感じたことってありますか。

 昔からの友達とか、昔共演した人と一緒になると本当に感慨深いですし、自分が年を重ねていくのと一緒に、来る役も年相応の役になっていって。昔、高校生で一緒の教室にいたやつらが次は会社の同僚とかシチュエーションが変わって再会できるっていうのはすごい面白いですし、お互い現場もいろいろ経験して、人間的にも大きくなって、そこでセッションするというのは嬉しいし負けたくないという気持ちももちろんあるし。何か1つの答え合わせというか、あの頃からお前はどう変わったとか芝居を通して感じることもあります。

――それはゾクっとしますね。

 祥太朗と会った時も現場の空気はもちろん、今回主演で座長という形で相手の姿を見たときに、頼もしいなと思いました。だからこっちもより熱が入ると言うか。

柳俊太郎

柳俊太郎

根底にある人好き

――そのなかで柳さんが今度、吉田監督作で感情が荒れ狂うような役柄を観てみたいですね。

 ぜひやってみたいですよね。吉田監督の映画は本当に感情をめちゃくちゃにするのが多いので、やってみたいですね。

――それを楽しみにしています。

 相当鍛えないといけないですけどね(笑)。

――今、出演作品を重ねてきているじゃないですか。視聴者にとっても柳さんの人物像というのが明確になってきているような気がします。

 そう見ていただいて嬉しいです。

――違う現場に行って演じて肌で感じてっていうところだと思うんですけど、重ねてきた今の自分ってどう見えていますか。

 いや、何か成長できているようで全然まだまだだなって思いますし、もっと現場を踏んで芝居したいなと思います。特に最近亡くなられる方とご一緒したかったのにと思うこととか、僕が青春時代に観ていた作品の監督とかに会えない状況が多いので、よりいろんな現場でいろんな人と出会って、いろんな作品を作っていきたいなという気持ちはあります。一期一会ですし。

――一期一会というのは昔から考えていることですか。

 いや、そこまで実感しなかったというか、仙台から出てきて東京では初めて会う人ばかりだったので、それが当たり前だったというか。12年東京にいてようやく気付けてきたというか。昔の友達と最近会わねぇなとか、誰か田舎に帰ったらしいよとかそういうのを聞くと、何かわりと固まってきたんですよね。新しく出会う人の数が昔に比べたら減ってきているし、コロナもあって出会う環境が少なくなったっていうのはあるんですけど、でも12年東京住んで、よりそういう出会いも大切なんだなって思うようになりました。

――根底に人好きがあるんですね。

 人と話すのが好きですし、何か気になるんですよ。この人どういう人だろうとか。職業病というのかな。なんかどこかで観察しなきゃみたいな。役が来たらいろんな人を見て参考にしますし。もともと好きだから役者になったのかもしれないです。いろんな人に興味があるから、じゃあ自分がなったら?とか。

――結果、人は面白いみたいな。

 役を通じても思います。架空人物だったり、実在人物だったりいろいろパターンがあるんですけど、自分だったらこんなこと言わないけど、なんでこんなことを言っちゃうんだろうという役もやらなきゃいけない。だったらそういう人を探して観察しなきゃいけないので、その作業はすごく楽しいです。

(おわり)

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