INTERVIEW

よりよいものを作る一つの歯車に――、杏の原動力
『アダムス・ファミリー2 アメリカ横断旅行!』でモーティシア役


記者:木村武雄

写真:興梠真穂

掲載:22年01月22日

読了時間:約5分

 アニメ映画『アダムス・ファミリー』の第2弾『アダムス・ファミリー2 アメリカ横断旅行!』が1月28日に全国公開される。思春期を迎え家族の食卓に顔を見せない長女ウェンズデー(CV:二階堂ふみ)を心配したゴメズ(CV:生瀬勝久)が家族の絆を深めるため家族旅行を企画する。しかしその旅先で待ち受けていたのはある事件――。前作に引き続き、モーティシア・アダムスの日本語吹替を担当した杏はどのような思いで臨んだのか。そして活動の原動力になっていることは。動画インタビューと共に届ける。【取材=木村武雄/撮影=興梠真穂】

家族の普遍的なテーマ

――前作の反響はいかがでしたか。

 いろんな方たちに観て頂けたという実感はありました。私の子供たちもそうですが、映画を観始める幼稚園くらいの子たちはどんな反応なんだろうと正直、気になっていました。でもいろんな子供たちがとても気に入って何度も観ているということを、私の家庭でもそうですし、他のお家でもいろいろと聞き、嬉しかったです。それから「大人向けでもあるんだね」という感想もよく聞きました。

――その前作からの続編となりますが、モーティシアの続投が決まった時の心境は?

 実は、前作が公開されたタイミングの時に「もしかしたら続編があるかもしれない」という話を聞いていました。でもこの1年で本当に実現したことに驚きました。なかなか企画が上がっても実現するのが難しい中で、こうやって1年後に同じ役を同じメンバーでやれることがすごく嬉しかったです。

長女ウェンズデー(CV:二階堂ふみ)と母モーティシア(CV:杏)(C)2021 Metro-Goldwyn-Mayer Pictures Inc. All rights reserved.

――今回のテーマ性はどう捉えていますか?

 普遍的なテーマだと思いました。娘のウェンズデーが思春期を迎えて、その状況を打破したいという父親ゴメズの思いから、家族でアメリカ横断旅行に出かけていくお話ですが、どうしても気になって口を出してしまうゴメズと、それをちょっとうっとうしいと思ったり、少しずつ自分の時間を欲しくなって家族と距離を取りたいという段階に差し掛かった思春期のウェンズデー。その気持ちは分かると思いながらも黙って見守るモーティシアというのは、日本に住んでいる私たちからしてもすごく共感できると思います。それが海外で作られた作品でも同じような姿で描かれていること、さらに普通の人間とは違う環境でコミュニティーを作って暮らしているアダムス・ファミリーでさえもこういう問題に差しかかり衝突して悩んでいるのかと思うと、誰でも人を想うあまりに悩んでぶつかることは、古今東西どこにでもある悩み、シチュエーションなんだろうと思いました。だからこそ世界中から好かれる作品でもありますし、長い時間愛されながら、2020年、2021年と新たに作品が作られる理由なのかなと思いました。

自然と溢れた母性

――前作もそうですが、声を作るにあたってどのように取り組まれましたか。

 元の言語の吹き替えがある状態ですので、なるべくその形に沿うようになるだろうなと思いつつ、演出して下さる方とお話しして、落ち着いていて、優しさや母性があるという事を念頭に置いて、ゴメズとのキャラクターの違いを色濃く出せるような声にしてみようという感じで、現場で作り上げていきました。

――声優での母親役は別の作品でも担当されたことはありますが、それとはまた違った妖艶さを持ちながらも母性が出ていて、素晴らしいと思いました。

 演じるキャラクターが過去のキャラクターとぶつかることはあまり自分の中ではありませんが、自分自身がプライベートで母親になったということもあり、モーティシアの気持ちが何となく想像しやすくなったというのは付随してある気がします。まだ私の子供たちは幼稚園児の年齢ですので、ウェンズデーくらいの年齢で、一人で社会を持ったり、一人で外に出掛けたりという想像はまだできませんが、あと10年くらいしたら今回のようなシチュエーションになったり、モーティシアのように悩んだり、だからこそ一緒に旅行ができる楽しみもあるのかなと思うと、すごく良い疑似体験ができたと思います。

よりよい未来を作りたい

――ところで5年前に「モデルはハンガーのような意識でやっている」という趣旨のことを話されていましたが、俳優、声優はどのような意識で取り組まれていますか。

 何かのキャラクターを演じる時には、そのキャラクターがすごく近しい親友になるような感じで、役が増える度に友達が増えていくような感覚です。ですので、一番理解しなければいけないと思っていて、深く理解して一緒にキャラクターを作っていくような感じで、役が終わっても思い出として友達がいるみたいな感覚です。それがあるから、このお仕事をしていて良かったなと思います。形に残るというのは、責任感もあるんですけれども、その分、自分がしたことが残るというのは、とても恵まれたお仕事だなと思います。

――そのうえで、ご自身の活動の原動力になっているものは何ですか?

 広く言いますと、歴史がすごく好きなので、何かよりよい未来を作るために残していけるものを作るとか、過去からの色んなものをキャッチして表現してみんなで共有してというメッセンジャーのような気持ちで、よりよいものを作る一つの歯車になりたいという思いがあります。そういうことに関わっていたい気持ちが一つの大きな原動力になっています。

――とても大局を見ていますね。フランスともゆかりが深く、フランス映画祭の大使に選ばれた際には「フランスは青春の場所」だと。フランスが好きな理由も歴史があるというところでもあるんですかね。

 そうですね、フランスの映画を観ていても、根本的な街並みってそんなに変わっていなかったりするんです。だからこそ、細かい所の年齢の違いを感じられたり、建物も築100年や200年のものばかりなので歴史が根付いた街というのは歩いていて楽しく感じますのですごく好きです。

包容力のある歌声

――YouTubeチャンネルを開設されて素敵な歌声も披露されていますが、歌にすごく包容力を感じます。歌う時に意識されていることはありますか。

 歌も言葉を伝える手段なので、その言葉が届くようにしたいなといつも思います。

――ギターも?

 ギターはあまり上手くないです(笑)。伴奏程度なので、技術的にもっと耳あたりの良い音をだせたらいいなというのは思っています。

(おわり)

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興梠真穂

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