永瀬廉『おかえりモネ』に見る繊細な表現、作品ごとに大きな成長<キンプリ魅力紐解き連載3>

永瀬廉
<King & Princeは全員が演技班?メンバーの活躍を紐解く(3)>
7月21日に3rdアルバム「Re:Sense」(読み:リセンス)のリリースしたKing & Prince。それぞれの俳優としての活躍に着目して、魅力を紐解いていく連載。今回は、永瀬廉について触れていきたい。
現在放送中のNHK連続テレビ小説『おかえりモネ』で、“りょーちん”こと及川亮を演じている永瀬廉。ドラマ公式サイトの登場人物紹介で、“実は人知れず、父親との関係に悩んでいる”と書かれてはいたものの、彼がここまで物語のキーマンになるとは思っていなかった。
『おかえりモネ』は、“東日本大震災から10年”の節目であることを意識した作品だ。ヒロイン・永浦百音(演・清原果耶)が宮城県気仙沼湾沖に浮かぶ島で育っているため、物語を進めるなかで“あの日”のことは避けて通ることができない。
第37話では、亮の母・美波(演・坂井真紀)が震災で亡くなっていることが明かされた。百音は、家族も家も無事だったのに対し、家も船も津波で流され、母まで奪われた亮。そのほかの幼馴染も、家族が亡くなった様子はない。つまり、永瀬は“遺された子ども”の苦悩を伝える役割を、たった一人で担っているのだ。
亮の唯一の家族である父の新次(演・浅野忠信)は、「俺は立ち直らねえ」と美波の死の苦しみを抱え続けている。それはきっと、自分が立ち直ってしまったら、妻の存在がなかったことになってしまうような気がするから。
だが、まだ10代の亮の人生は始まったばかりだ。辛く、苦しいことがあったとしても、ずっと暗いままではいられない。
第40話、百音たちの前で「俺らが、前を向くしかないんだ」と宣言した時の姿が、鮮明に記憶に残っている。
「俺は、親父とは違うから。過去に縛られたままでなんになるよ。ここから先の未来まで、壊されてたまるかっつーの」と言いながらも、父のことを憎みきれない。感情的に涙するわけではないが、胸の奥にある苦しみが伝わってくる演技だった。
大切な存在を亡くした時。その悲しみを忘れゆくことに、戸惑いを覚える人が多いだろう。だが、遺された者は生きていかなければならない。“過去”に縛られるのではなく、“未来”を見据えて、前を向くべきなのだ。永瀬の繊細な表現を見てそんなことを考えさせられた。
俳優・永瀬廉の魅力は、作品に出るたびに大きな成長を見せる点にあると思う。『俺のスカート、どこ行った?』(日本テレビ系)で目に宿る光までもを操る演技を見せた時の驚き。映画『弱虫ペダル』(2020年)では、大人気漫画の実写化で主演を務めるプレッシャーを跳ね除け、『第44回日本アカデミー賞』新人俳優賞を受賞した。
“国宝級イケメン”と言われるほどのビジュアルを持ちながら、それを消すこともできる演技力。これからも彼の作品を見るのが楽しみだ。
今回は、永瀬をピックアップして俳優としての活躍を振り返った。次回は、“月9”ドラマ『ナイト・ドクター』(フジテレビ系)に出演中の岸優太の魅力辿っていく。【菜本かな】
筆者紹介
かなぴす メディア学科卒のライター。19歳の頃から109ブランドにてアパレル店員を経験。大学時代は学生記者としての活動行っていた。エンタメとファッションが大好き。ツイッターは@kanawink