King & Prince

 King & Princeの2ndアルバム『L&』に収録されている、メンバープロデュースの5曲から見えるそれぞれの個性について分析する連載。前回は、永瀬廉プロデュースの「No Limit Tonight」に着目した。シリーズ最後は、平野紫耀の「Focus」に触れる。

■平野紫耀「Focus」

 平野プロデュースの「Focus」は、日常に落ちているネガティブな感情を拾い上げ、「だけど毎日頑張ってるよ」と肯定してくれる応援ソングだ。

 作詞を担当したのは、前迫潤哉。作曲は、前迫とDr.Lilcomが共同で行った。これからの未来を明るく照らすような歓声で曲はスタートし、幻想的な世界観を演出するイントロで一気に引き込む。華やかなサウンドを支える繊細なピアノの音色も印象的だ。

 「Focus」に登場する歌詞、<夢は決して裏切らない/でも優しくはないこと 今更気づいたよ>は、前迫が所属するバンド「SingerSongDrivers」の楽曲「Pie in the sky」にも登場するので、そちらも合わせてチェックしたい。

 そんな華やかな音に乗せる歌詞に注目する。同曲の歌詞は、平野の魅力の一つである「スターになっても変わらない姿」が反映されているように感じる。

 デビュー曲「シンデレラガール」で、初週約57万枚の売り上げを記録。同年に主演を務めたドラマ『花のち晴れ〜花男 Next Season〜』(TBS系)も話題となった。そしてスターダムへと駆け上がり、人気グループのセンターとして活躍する平野。

 だが、そのなかでも謙虚さを忘れていない。そんな平野のプロデュース曲だからこそ、<毎朝同じ時間に鳴り響くアラーム/朝食よりも寝ていたい>など平凡な暮らしに寄り添った楽曲になったのだろう。<無理に押されて息苦しい満員電車>や、<冷め切ったコーヒー>など日常で起こるリアルな出来事にフォーカスを当てている。

 そしてサビの、<今日もここまでやったよ Good job/いつも通りにやれたら Good day/ほんの少し笑えたら Good time>という部分からは、この楽曲のテーマが伝わってくる。

 「いつもより頑張れたら」ではなく、「いつも通りにやれたら」。「たくさん笑えたら」ではなく、「ほんの少し笑えたら」。もっと頑張れと鼓舞するのではなく、背中をさすってくれるような優しい楽曲だ。新型コロナウイルス禍を意識して制作された楽曲だけに、<今できることにFocus/視界は晴れる>など現状にそぐう歌詞も多く登場する。

 コロナ禍の影響もあってか、応援ソングの形が変わり始めているような気がする。頑張りを“鼓舞する”のではなく、頑張りを“認める”。「Focus」も、<飾らなくてもいい/背伸びしなくてもいい/ありのまま 思いのまま 歩いてゆこう>と人々に寄り添う応援ソングで、まさに時代にマッチした楽曲であるとも言える。「Focus」は、そんな風に、私たちを優しく包み込んでくれるような一曲だ。【かなぴす】

筆者紹介

かなぴす メディア学科卒のライター。19歳の頃から109ブランドにてアパレル店員を経験。大学時代は学生記者としての活動行っていた。エンタメとファッションが大好き。ツイッターは@kanawink

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