9月15日に結成21周年を迎えた嵐。先日放送された『THE MUSIC DAY 人はなぜ歌うのか』(日本テレビ系)では、「日本の20年 嵐の20年」という企画が組まれた。この企画とともに彼らの歩みを振り返ってみると、デビューしてから21年、日本にはさまざまなことが起こった。もちろんうれしいこともあったが、ピンチを迎える局面も多々存在した。だがそんな時に背中を押してくれたのは音楽であり、嵐の楽曲もその役割を担った。

 この日、同番組の「SPメドレー」内で披露された「果てない空」は、2011年に起こった東日本大震災の復興支援として度々披露されてきた楽曲だ。同曲は、二宮和也主演の『フリーター、家を買う。』(フジテレビ系)の主題歌に起用されたもので、二宮が演じた武誠治の“復活”を連想したものだったが、震災後は、主題歌としてだけでなく、日本の“復興”への応援歌となった。

 震災発生の翌週に放送された『嵐にしやがれ』(日本テレビ系)では、「僕たちの歌を全力でお届けし、一瞬でも笑顔をお届けできるよう精一杯頑張らせていただきます」と話し、同曲を披露した。<果てない空がそこにあるって/いま確かな声が聴こえる>と力強く歌う彼らの声に、勇気をもらった人もいたことだろう。

 加えて、震災発生から32日後に『ミュージックステーション』(テレビ朝日系)に出演した彼らが、「感謝カンゲキ雨嵐」を披露していた姿に、勇気をもらったことを今でも覚えている。<Smile again ありがとう Smile again 泣きながら 生まれてきた僕たちは たぶんピンチに強い>というフレーズ。そして、拳を握りながら、「頑張れ」と言っていた彼らの姿。今でもこの楽曲を聴くと、当時の感情が蘇る。

 東日本大震災の復興支援チャリティーイベントとして開催された『嵐のワクワク学校』は、今年もオンラインで行われた。同イベントは、12年に宮城県と福島県で無料招待を実施。17年には、熊本地震で被災した小中学生とその保護者を無料招待した。このイベントの累計支援金は、18年に20億円を突破している。

 そして、新型コロナウイルスの感染拡大に悩まされている現状。嵐も、活動休止まで1年を切っているなか、5月に行われる予定だったコンサート『アラフェス2020』はオンライン配信に変更、また、放送スペシャルナビゲーターを務めることが決まっている『東京オリンピック・パラリンピック』が延期になるなど、思い描いたラストイヤーとは遠い日々が続いている。

 そんななか、『THE MUSIC DAY 人はなぜ歌うのか』で披露された「君のうた」は、5人のいま届けたい想いが詰め込まれた楽曲だ。活動休止発表直後に出演した『ミュージックステーション』(テレビ朝日系)でも披露され、「SONGS」(NHK)では、「自分たちの今の気持ちを最も表している楽曲」と語られた。

 <歩き出す 明日は僕らで描こう/涙に暮れたとしても 塗り替えていく/強さ教えてくれた君の温もりを>という歌詞は、嵐とファンとの関係性を表しているようにも感じる。直接楽曲を聴くことができなくても、この日のパフォーマンスを観ていると、彼らの想いが伝わってくるような気がして音楽が人と人を繋ぐことを実感させた。『THE MUSIC DAY 人はなぜ歌うのか』というタイトルの答えは、ここにあるのかもしれない。「君のうた」の前向きになれる歌詞は、先行き不透明な現状で、ファン以外の人へも勇気を与えることだろう。

 この21年間、嵐は変わらず、たくさんの希望を人々に与えてきた。もしかすると、変化をし続けることよりも、変わらないでいることの方が難しいことなのかもしれない。だが、「君のうた」のAメロ、<移ろいゆく風景の中/ずっと大切な人>を聴いた時、彼らがずっと「そのまま」でいられた理由が分かったような気がした。きっと彼らの周囲は目まぐるしく変化していたことだろう。しかし、そのなかでも5人が嵐を大切に思っていたことは変わらなかった。周囲が移ろいでも、彼らは「台風の目」のなかにいるように、いつも穏やかな雰囲気を漂わせている。その変わらない姿は、幾度となく安心感を与えてくれた。その姿を守るために、活動休止を決めた嵐。これまで、人々のピンチを救ってきてくれた彼らに感謝の気持ちを持ち続けたい。【かなぴす】

筆者紹介

かなぴす メディア学科卒のライター。19歳の頃から109ブランドにてアパレル店員を経験。大学時代は学生記者としての活動行っていた。エンタメとファッションが大好き。ツイッターは@kanawink

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