INTERVIEW

葵わかな

本当に難しい役でした。
『連続ドラマW インフルエンス』で難役


記者:木村武雄

写真:

掲載:21年03月20日

読了時間:約5分

 女優・葵わかなが、WOWOW『連続ドラマW インフルエンス』(3月20日スタート)で新境地を見出す。NHK連続テレビ小説『わろてんか』以降、「笑顔」の印象が強くなった彼女が挑むのは、これまで演じたことがないミステリアスな役柄。「私のキャパシティを超える作品でした」。演じる上で意識したのは「本当か嘘かわからない表情」だった。

転機に

 3月、『The PROM』のステージに立っていた。ブロードウェイミュージカル日本初演作で、悲しみや笑顔など全ての感情を全力で表現していた。主人公が持つ芯の強さは彼女しか表現できないものだった。この作品で役者としての真価を見せた。

 そんな葵わかなはそれよりも以前に転機を迎えていた。遡ること数カ月前。撮影に臨んでいたのはドラマ『インフルエンス』。これまで演じたことがなかったミステリアスな役柄に挑んでいた。

 「今までは素直な子を演じることが多かったので、ミステリアスな部分をどうしたら表現できるかなと思いましたが、入念に役作りをしました」

 NHK連続テレビ小説『わろてんか』(2017年度後期)ではヒロインの藤岡てんを演じた。大阪を舞台に寄席経営に挑む姿を描いた物語で、困難な状況でも笑顔で乗り切る姿が印象的だった。葵はこの作品で役のなかだけではなく、自身も成長を遂げた。一方で「笑顔」の印象が強く残った。

 もともと清純派のイメージが強い。しかし、2019年公開の映画『任侠学園』では自身とは正反対の学園一の問題児の生徒を演じ、新たな一面を見せた。また、影のある役は、映画『罪の余白』(2015年)などこれまでも演じたことはあった。だが、『インフルエンス』はそれともまったく異なるものだった。

 「ここまでミステリアスな人物を演じるのは初めてかもしれないです。転機になる作品だと思います。また何年後かに演じてみたいです」

 「笑顔」の印象をくつがえす『インフルエンス』。葵にとって挑戦の連続だった。

葵わかな

演じたこともないような役

 ドラマは、友情が引き金となって3つの殺人事件を犯した女性3人の生涯を描くサスペンス。葵が演じるのはその一人で、戸塚友梨(演・橋本環奈)が暴漢から助けた坂崎真帆。

 「今まで外見は多少悪く見えても内面は真っすぐで、素直な役を演じることが多かったので、お話を頂いた時は自分の暗い側面を見て下さったのかと思い、驚きました」

 真帆は、両親の離婚を機に友梨と同じ団地に引っ越してくるが、都会育ちの洗練された容姿や気の強い性格が仇となり、周囲から孤立する。

 「真帆は優等生で周りから『可愛い』と噂になるような存在感を持っている子です。これまでは普通な子の役を演じることが多く、羨望の眼差しを受ける役は初めてでした。なので、どういう立ち振る舞いをしたら真帆の持つミステリアスな美しさが出るのかを考えました。それがうまく表現できるか不安もあったので撮影の初めは緊張しました」

 その真帆のミステリアスさが物語の鍵にもなるという。

 「真帆のミステリアスさによって展開が読めなくなる部分があります。これまでミステリアスな役を演じたことがなかったので、お芝居のなかで嘘をついたり、どちらともとれない表情をしています。でもそれはとても難しくて、台本に沿いながらも自分の中でプランを入念に立てて臨みました」

 ミステリアスな役を演じるために意識したのは「本当か嘘かわからない表情」。

 「真帆には笑顔になる瞬間がないんです。表情や声の出し方、例えば綺麗に喋ったり、綺麗に歩いたり、相手を見ているときの表情など、まずは外側から作っていきました」

 デビューから11年が経つ。これまで様々な役を演じてきた。しかし、『インフルエンス』は何もかもが初めての役柄だ。

 「本当に難しい役で、話を全体的に引っ掻き回していく、暗いのにパワーがあり、状況を前に押し進めていきます。間違ったパワーの大きさや物語を進めていく立場でもあり、友梨を押し流していく立場でもあります。回転させる動力を担う発電所のようなもので、表現するのはとても難しかったです」

 「転機」にもなる作品。撮影を終えて改めて気づいたことがあった。

 「もっと視野を広く捉えないといけないとだめだと思いました」

 この作品が役者としての新たな門戸を開けたようにも感じる。

葵わかな

歌にも強さ

 一方、同世代との共演は助けにもなった。劣悪な家庭環境から不良となった日野里子役を吉川愛が演じる。

 「環奈ちゃんは同い年、愛ちゃんは年下。同世代で共演できるのが嬉しくて、ワクワクしていました。役柄も本人もキャラクターが異なり、それぞれに柱があります。そのなかでエネルギーを循環させ大きくさせていく感覚があり、ちゃんとキャッチボールが出来ました。3人というこじんまりとした世界なのでいかにドラマチックに描けるかを意識しました」

 そんな葵に音楽の存在を聞いてみた。葵は『キャッツ』や『アナスタシア』、そして『The PROM』などで見せたように抜群の歌唱力がある。伸びやかで奥深い歌声には、儚さと強さが同居している。

 「私にとって歌がお芝居の表現の一つになっています。音楽の力を借りると自分が自分じゃないぐらいいろんなことができます。今後も長く関わりたい大切なものです。もっと深めていきたいです」

 『キャッツ』や『The PROM』で見せたように、たとえ悲しいシーンでも歌には役柄の強さが宿っている。それは歌に限らず芝居もそうで、彼女の魅力は「笑顔」ももちろんだが、内面にある「芯の強さ」。笑顔を封印した『インフルエンス』にもきっと真帆の強さが表れているはずだ。

葵わかな

(おわり)

WOWOW
「連続ドラマW インフルエンス」
3/20(土)スタート 毎週土曜よる10時放送・配信
※第1話無料放送(全6話)

取材:木村武雄

撮影:中田智章
ヘアメイク:竹下あゆみ
スタイリスト:岡本純子(afelia)

▽衣裳
・トップス 37,000円
・スカート 49,000円/共にミュラー オブ ヨシオクボ
・ピアス 144,000円/チェリーブラウン

▽問い合わせ先
・ミュラー オブ ヨシオクボ/03-3794-4037
・チェリーブラウン/03-3409-9227

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