葵わかな&三吉彩花、強さのエマ ピュアさのアリッサ 琴線に触れる歌声
『The PROM』ゲネプロ
葵わかな主演、三吉彩花らが共演の『Daiwa House Special Broadway Musical『The PROM』Produced by 地球ゴージャス』が10日、TBS赤坂ACTシアターで幕が上がる。ブロードウェイミュージカルの日本初演。葵わかなと三吉彩花が逆境を乗り越えるカップルを熱演する。9日には同所で取材会とゲネプロが行われた。ステージはキャストが口々にしていたエネルギー溢れるものだった。
地球ゴージャス主宰のひとり、岸谷五朗は冒頭の挨拶で「2カ月の大変な稽古を乗り越えてきました。沢山のエンターテインメントの要素がある作品をみんなでこなすためには努力と時間が必要でした。まだまだ安心していません。まだまだ努力しようと」と作品の大きさを改めて実感していることを明かした。寺脇康文もまた「違った緊張感があります。最後まで完走したい」と語っていた。
舞台では、レズビアンの主人公・エマが、様々な人たちとの触れ合いにより、“自分らしく生きる”ことを貫こうと奮闘する姿、そして、落ち目になったブロードウェイスターが再起をかける2つのストーリーが描かれる。
本作の醍醐味は歌とダンスで作り上げる壮大な世界観だ。岸谷は「ここまで歌稽古したのはかつてない」と語り、ブロードウェイスター、D.D.アレンを演じる大黒摩季(トリプルキャスト)も「楽曲的には最高峰。でもトラップがある」と半音や転調、転拍子などが大胆に織り込まれた難易曲であることを明かしつつ「これまでの音楽の良い所を全て詰め込んだスーパー幕の内弁当のようなもの」と名曲揃いだと語った。
その言葉の通り、素晴らしい音楽がその場で奏でられた。生演奏によるグルーヴ感と物語を進行した上で届けられる音楽はよりそのキャラクターの心情を立体的に映し出していた。キャストによるキレキレのダンスも見ものだ。
そして、レズビアンのカップルを演じる葵と三吉。葵は製作発表会ではどこか不安な様子もうかがえたが、この日の取材会では芯の強さがあるエマのような雰囲気で堂々としていた。劇中で見せる、立ちはだかる様々な壁に苦しみながらも前をしっかり向いて歩いて行く姿が感動的だ。岸谷はこのエマについて「エマは可愛らしい子。でも芯が強くないといけない」とし、葵には可愛さと芯の強さが備わっていて適役だと明かしていたが、まさにその通り。逆境のなかにあっても心には、希望や強さがずっと灯っていた。そして葵の深みのある歌声もその強さが表れていた。
対する相手役の三吉。強さのエマに対して、柔らかみのあるアリッサを表現していた。三吉はここ最近は強い女性を演じている印象があったが、アリッサはしなやかさとピュアさがあり、そのピュアさが2人の間に訪れる喜びや悲しみをより深いものにさせていた。なんといっても壁を乗り越えた後での歌。その歌い出しは澄んでいて純粋。それまでの苦悩が報われる瞬間であり、その歌声が全てを浄化してくれるようで琴線に触れた。
葵、三吉それぞれが自分の曲にしていて、2人を中心に全てのキャストが役とともに生きていた。D.D.アレンを演じる草刈民代(トリプルキャスト)は取材会で「作品自体がエネルギーが高い。人の心が揺さぶられる要素が詰まっている。今の日常とはかけ離れた心の動きが体験できる」と語っていたが、それを生で体感した。終盤に向けてふとこみ上げてくるのは感動の涙と明日を強く生きようとする力だった。