INTERVIEW

橋本環奈

そこまでドラマチックに考えていないかも。
順調なキャリアも冷静。
主演ドラマ『インフルエンス』で難役。


記者:木村武雄

写真:興梠真穂

掲載:21年03月18日

読了時間:約6分

 橋本環奈が3月20日スタートのWOWOW『連続ドラマW インフルエンス』で主演を務める。友情が引き金となって3つの殺人事件を犯した女性3人の生涯を描いたサスペンスドラマで、秘密を抱えた影のある難役に挑む。

一つの一つの役が挑戦

 「一つ一つの役が自分にとっては挑戦です。ですので、あまり気負い過ぎずに取り組むのがある種の正解だと思っています。もちろん物語のキーとなる重要なシーンは大事にしたいですが、考えすぎず自然な心理描写も大事だと思っています」

 透き通った目の奥に芯の強さが見える。これまで数多くの作品でヒロインを務めた。どこか天真爛漫な役柄が多かった印象もあるが、本作では秘密を抱え影のある難役に挑む。

 幼馴染が性的虐待を受けていると知りながらも守れなかったことを負い目に感じ、暴漢に襲われた親友を守るため男を刺し殺めてしまう役どころで、役者としての新境地が期待される。しかし、彼女は冷静に見つめる。

 さかのぼれば、初主演映画『セーラー服と機関銃-卒業-』(16)で「第40回日本アカデミー賞」新人俳優賞を受賞。映画『銀魂2 掟は破るためにこそある』(18)とドラマ『今日から俺は!!』(18)で「第7回ジャパンアクションアワード」ベストアクション女優賞部門で優秀賞受賞。映画『キングダム』(19)では力強く生きる河了貂を好演した。

 そして、昨年1月公開の主演映画『シグナル100』でも難役に挑戦した。死と隣り合わせにある絶望のデスゲームのなかで理性を失わず生き残ろうと奔走する主人公を熱演、この作品で女優としての新たな一面を見せた。

 甘酸っぱい青春を描いた作品だけでなく、繊細に感情を紡ぐ役どころや体当たりの芝居にも挑戦。そしてこのタイミングでの本作。着実にキャリアを積み重ねる「女優・橋本環奈」への信頼の厚さをうかがえる。だが彼女はここでも変わらずに冷静に捉えている。

 「そこまでドラマチックに考えていないかもしれません。今までやったことがない事や、それを乗り越えるのに大変そうだと思うことも、やっていれば乗り越えられます。逆に『今、私やっているぞ』と客観的に見てしまうと雑念が多くなりできなくなる気もします。ですので、周りの事はあまり考えないで、目の前の目標を達成することだけを考えています」

 順風満帆な女優人生についその先の青写真を描きたくなるが、目の前のことに集中し全力を注ぐ彼女は、自分の物差しで着実に歩を進めている。

 「もちろん大変だと思うときもあります。でもその大変さも人によって捉え方は違いますし、それを幸せに感じる人もいると思います。周りから大変ですねと言われてもその時は気づかないこともあります。なので、あまり周りを見ようとしていないかもしれません。今思うと、高校生の時、仕事と両立していたのは大変だったと思いますが、当時はそう思っていなかったです」

 そしてこう続ける。

 「楽しくやっていますので、ストレスが溜まることはあまりないです。私は本や漫画を読むのが好きで、そうした好きなことに集中できる時間、一人で考える時間は私にとって息抜きにもなっています」

 奇遇にも今回演じる友梨も本が好きだ。

橋本環奈

正反対の性格

 橋本が演じる主人公の戸塚友梨は、幼い頃から団地で育ち、本が好きでおとなしい女性。

 「人を殺めてしまう役柄ですが、それを除いてはごく普通にいる女性です。彼女が里子と真帆と関わることでどう変化していくかというところも楽しみです」

 ただ、自身の性格とは正反対という友梨というキャラクター。演じる苦労はあったという。「私は積極的に周囲に話を振っていくタイプですが、友梨はあまり前に出ず、感情も押さえているタイプです。こうした女性の役を演じること自体が初めてでした。難しかったです」

 友梨の人柄を象徴するものとして挙げたのは、教室で言い合う真帆(葵わかな)と里子(吉川愛)の2人を止めることができなかったシーンだ。「普通でしたら真帆と里子の言い合いを止めると思いますが、友梨にはそれができません。そのシーンが物語っていると思います」

 真逆のタイプの友梨を表現するためにどう臨んだのか。

 「友梨には意思を感じさせたくないと思いました。私の場合はどうしても強い口調になりがちです。だからと言って弱々しく言うことが正解でもないんですよね。言葉尻や言葉の重み、意味を持たせない言い方なども含めて考えました。行動が先に作られ、感情を帳尻合わせていく感覚もありましたので新鮮でした」

 そしてこう続ける。「友梨役を演じられたのは良かったです」

橋本環奈

葵わかなと吉川愛の存在

 物語の鍵を握る友梨を含めた女性3人。友梨が暴漢から助けた坂崎真帆を演じるのは葵わかなだ。両親の離婚を機に友梨と同じ団地に引っ越してくるが、プライドの高い母親と都会育ちの洗練された容姿や性格が仇となり、周囲から孤立。そんな状況を見つつも、秘かに真帆に憧れを抱いていた友梨は彼女に声を掛け友情が生まれる。

 そして、劣悪な家庭環境から不良となった日野里子を吉川愛が演じる。里子は、幼いころ友梨と仲が良かったが、祖父から性的虐待を受けていることを知られたことをきっかけに疎遠となっていた。だが、友梨が暴漢を刺した際、なぜか里子が警察に逮捕されてしまうのだが、その真相は…。

 もともと原作を読んでいたという橋本。「真帆、里子との3人の関係性で作品の流れが変化していきますので、誰と一緒に演じられるんだろうという楽しみがありました」

 そのなかで葵と吉川の出演決定を知り「より楽しみになりました。3人のシーンを撮った時に、3人の関係性がこんなにもくっきり浮かび上がるんだと思うぐらいでした。相性は良いと思います」と胸を躍らせる。

 なかでも吉川とは2019年1月公開の映画『十二人の死にたい子どもたち』で共演している。「愛ちゃんはその時もインパクトのある役でした。今回も同じようにインパクトが強い役ですので、どういうふうに演じられるのか楽しみでした」。

 “相性の良い”同性代の3人が紡ぐ物語はどのような結末を迎えるのか。

 「ある意味、重たい話ではありますが、友情や感情の揺れ、細かい移り変わりを体験してもらえる作品だと思います。真帆はこの時嘘をついていたんだとか、友梨のあの行動は里子を守るためだったんだとか、最終話になるにつれて伏線が回収されていく感じが観ていて楽しめます」

橋本環奈

日常に寄り添う音楽

 そんな橋本は本だけでなく音楽も愛聴している。

 「邦楽も洋楽も聴きます。音楽は控室でもずっと流していて日常に寄り添ってくれています!」

 なかでもサカナクションの大ファンだ。

「小学校6年生から大好きで、今でもよく聴きます。サカナクションさんに関してはオタクで詳しいです! ツアーも回っちゃうくらいですから(笑)。昨年中止になったツアーで京都と高崎だけ開催されたのですが、それにも行きました!」

 透き通った目を輝かせ、笑顔でそう語った。

橋本環奈

(おわり)

取材=木村武雄
撮影=興梠真穂

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