『2分の1の魔法』試写して思ったこと、大切なのは「想像力」
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志尊淳と城田優が日本語版声優を務める『2分の1の魔法』が21日公開となる。当初は3月に公開予定だったが、新型コロナウイルス感染症拡大の影響で延期。5カ月越しの公開となる。先日行われたイベントで主人公イアン役の志尊は当初通りの日程で公開されていたならば本作の意味合いはまた変わっていたかもしれないとの趣旨を語った。鍵となるのは「大切な人に会いたい」。
『トイ・ストーリー』シリーズや『リメンバー・ミー』などで知られるディズニー&ピクサーの最新作。魔法の才能を知った主人公イアンは、生まれる前に亡くなった父に一度だけでも会いたいと、24時間だけ蘇らせることが出来る魔法をかける。しかし、その魔法は失敗し半身だけが蘇ってしまう。そこで父を完全に蘇らせる魔法を探す旅に、兄バーリーと共に出る。
「もし一度でいいから父親に会えたら」物語の着想は、ダン・スキャンロン監督の願いがもとにある。「僕が1歳で兄が3歳の時に父親が亡くなり、僕はつねに父はどんな人だったのか? 自分は父に似ているのだろうか? と考えながら育ってきた」「もし1日だけ父に会えるとしたらどんな経験になるのか? 僕と兄は父に会って何を学ぶのか? という考えが浮かび、そこからこのストーリーが生まれていったんだ」と語っている。
主人公イアンは、何をやってもうまくいかず自分に自信がない。一方の城田優が演じた兄バーリーは弟イアンとは正反対の陽気な性格のキャラクターで、彼自身も「もう一度だけお父さんに会って伝えたい」という願いを持っている。冒険のなかで様々な困難に当たるが、「父に会いたい」という思いが彼らを強くする。そうした道中で二人は成長し、強くなっていく。
映画の冒頭で描かれるのはこの街の過去。もともと魔法が使えていたが、暮らしが豊かになっていくことでその力を忘れてしまったというものだった。映画を見終えて思うのは、文明が発達したことで人と人が容易に会えるようになったが、その分だけ何か大切なものを失っていないか、ということだった。
それが、新型コロナウイルス禍によって突き付けられた。当たり前に会えていた人と、当たり前に飲み明かしていた仲間と、そして離れて暮らす大切な家族、友人と会えなくなった。大切に思うからこそ会うことを控える。電話やネットで繋がることが出来るのが救いだ。
イアンとバーリーは、亡くなった父と会えるのはたったの24時間。しかも半身では会話も成り立たない。言葉を交わしたくてもできない。しかし、言葉が全てではないと語りかけているようにも感じる。大切なのは「想像を膨らませる」こと。きっとそれが人々を真の意味で豊かにする。魔法を使うことはできないが、私達には想像することはできる。相手を思いやり、未来を見つめ、今を生きる。
城田は先のイベントで「観終わった後に一歩踏み出す勇気、大切なものの存在を再認識できる温かい映画です」と語った。
音楽もそうだが、映画で感じるのは人それぞれであり、捉え方が違ってもいい。3月に試写したそのなかの一人が感じたこととして、ここにしたためた。【木村武雄】
筆者紹介
木村武雄 書く人、撮る人。新聞社を経て現職。昨夏、音楽班からエンタメ班に。