TOKIOの長瀬智也が、来年3月末でジャニーズ事務所を退所することが発表された。TOKIOの音楽プロデューサとして多くの楽曲制作に携わってきた長瀬。今回は「リリック」に焦点を当て、彼が紡ぐ楽曲、なかでも歌詞の魅力を紐解く。そして、TOKIOが25年以上愛され続けて来た所以についても考察したい。

人を愛することの意味を体現した「リリック」

 「リリック」は、2013年に発売されたTOKIOの46枚目シングル。長瀬が主演を務めたドラマ『泣くな、はらちゃん』(日本テレビ系)の主題歌だ。この楽曲で自分たちで作詞作曲を行う路線に転換した。長瀬が作詞作曲編曲までを手掛けた「リリック」は、TOKIOの新たなスタートの歌だった。

 「(弾いている姿を)目で見なくても(メンバーが弾いているかは)耳だけでわかる」と言うほどメンバー全員の魅力を知り尽くし楽曲を制作していた長瀬。「リリック」でも、その信頼性がうかがえる。

 歌い出しは歪んだギターサウンドのもとで<逢いたいと思うだけで 胸が痛むよ>。そして<僕はどうかしているのか…>でバンドサウンドが加わる。

 <瞬きの間に 君が居たんだ/僕はどうかしているのか…>で恋の芽生えに気付き始め、Aメロの<今君は 何をしてんのかな/忙しくしているかな>に続く。恋の始まりとともに盛り上がりを見せるサウンドが印象的だ。

 ドラマ主題歌のためその物語に沿ったものも入れていると思われるが、彼らの魅力が詰まった「リリック」は、人を愛することの意味を教えてくれる。

 <当たり前のことがどこか美しく見えた>や、<明日も君に会えると願う/人はそれを愛と呼ぶのかな…>など恋心をストレートに記した歌詞。ヒロインと、漫画の主人公の次元を超えた恋を描いた『泣くな、はらちゃん』のストーリーにも通じる切なさも伝わってくる。ただ恋をするだけでは紡げない、その奥にある純真な気持ちを長瀬は書き起こす。

 また、NHKの番組で長瀬は<拙い言葉に色が付き始めてた/だから僕は空を見上げた>のフレーズについて、「ずっと一緒にいたり、好きという気持ちがあると、言葉じゃない(裏側にある)気持ちも感じる。その気持ちを色と表現した」と語っていた。“気持ち”を”色”と表現する部分から、他の言葉にも含みがあるのではないかと感じられ、彼が紡ぐ歌詞を深掘りしたくなる。そして、言葉の裏側に見える気持ちまでも読み解く長瀬の繊細さに意外性を感じた。

 長瀬は、どちらかというとワイルドなイメージがある。細かいことなんて気にしない、そんなイメージを持つ人もなかにはいるかもしれない。しかし、誰もが何も感じることなく通り過ぎていく日常にもスポットを当て、その裏側を読み解く。そんな彼の、ワイルドさとは裏腹な繊細さがTOKIOの楽曲を彩ってきたのかもしれない。

TOKIOが持つ相反するふたつの魅力とは

 長瀬の紡ぐ楽曲は、優しくて自由だ。だからこそ心にスッと溶け込み、癒される。その理由を考えた時、メンバーの顔が浮かび上がった。全員を優しく包み込んできた最年長でリーダーの城島茂。後輩から「松兄」と呼ばれ、信頼されている兄貴肌の松岡昌宏。頭の回転が早く、サイドからさりげなくグループをまとめてきた国分太一。そして山口達也も。そんな個性豊かなメンバーたちが与える安心感と長瀬に対する信頼が、楽曲の持つ伸び伸びとした魅力に繋がっていたのかもしれない。

 また、TOKIOは全員男気がある。そして、その奥に見える繊細な優しさが魅力だ。例えば、2014年の『24時間テレビ』(日本テレビ系)で、城島がマラソンランナーを務めた時、TOKIOのメンバーが並走。そして一緒にゴールをすることなく、彼らは会場の扉の前で立ち止まった。その理由を、「関ジャニ∞がメインパーソナリティだから」「TOKIO全員でゴールしてしまうとTOKIOの話で終わってしまう」と話していた。
 男らしく決めたことを突き通す姿。そして、後輩のことを思いやる繊細な気遣い。一見相反する、ふたつの魅力を持っている彼ら。だからこそ、25年以上の時を越えて愛され続けてきたのだと思う。

 いま、<当たり前のことがどこか美しく見えた>という歌詞がとても胸に響く。しかし、長瀬が紡ぎ、TOKIOが作り上げて来た音楽はなくなることはない。今後も私たちのそばで寄り添い、時には励ましてくれるはずだ。そんなことを願いながら、彼らの楽曲を末長く愛し続けていきたい。【文・かなぴす】

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