岡田奈々、目頭に光るもの 歌に宿る思い

岡田奈々。2020年1月撮影
いつも通り、音楽番組をチェックしていた。22日は、TBS系『CDTVライブ!ライブ!』だった。
新型コロナウイルスの影響でスタジオ収録は見合わせ。15日から生放送を再開するも、完全なセットでは今回が初めて。多くのミュージシャンやバンド、グループが出演し、ヒット曲から新曲など、ほぼノーカットフルサイズで届けた。
19時台と21時台に登場したAKB48。21時台は、メッセージソング「離れていても」を初パフォーマンスした。
新型コロナウイルスによって大切な人と会いたくても会えなくなってしまったものの、きっと心では繋がっているという思いが込められた曲。
スタジオパフォーマンスでは、MVに参加した卒業生である前田敦子、大島優子、板野友美、篠田麻里子、小嶋陽菜、高橋みなみ、指原莉乃、山本彩たちの映像が後ろに映し出されるなかで、大切に歌うメンバーの姿が印象的だった。
そのなかで、ふと目に留まったメンバーがいた。岡田奈々だ。
<大切な人を守るそのために>
そう歌う岡田の頬に光るものがあった。はじめは「汗か」と思ったが、その線を辿ると、目頭まで繋がっていた。
「あれ、涙を流している?」
録画したものを再確認した。そのフレーズの数十秒前、サビのところだ。
<その手と手がふれなくても>
メンバーと共に歌う岡田が映し出されていた。それまで明るい表情で歌っていた岡田だが、その後のフレーズで表情が変わった。
<いつだって僕はここにいる>
溜め込んだ感情が溢れ出るかのように表情を静かに崩した。あれが本当に涙ならば、きっとこの時に流したものだろう。
真意は本人に聞かなければ分からないが、これまでの姿をみれば察しがつく。
他のメンバーと同様にグループを盛り上げるために尽力し、メンバーやファン思い。歌うことが好きで全力でパフォーマンスする。
だが、新型コロナウイルスによって観客を入れての劇場公演は出来なくなった。歌番組でのパフォーマンスもしかり、メンバーやファンに直接会うことも叶わなかった。
その劇場公演は13日に無観客で再開。初日は岡田と向井地美音のペアだった。
憶測の域を出ないが、そうした募る思いがこの歌を通して涙に変換されたのではないか。
コロナ禍で人々の意識は変わりつつある。当たり前の日常が、当たり前にあったライブがそうではなくなった。大勢の前で歌うこと自体が貴重なものになっている。
歌に心は宿る。
「心に響きました」
「色々伝わってきた」
「涙が出ました」
歌唱後、SNSに書き込まれたファンの声。これらの言葉からもそれはうかがえる。
筆者紹介
木村武雄 書く人、撮る人。新聞社を経て現職。昨夏、音楽班からエンタメ班に。