Lucky Kilimanjaro「少し社会が良くなったと思える音楽を」6人で描く未来
INTERVIEW

Lucky Kilimanjaro「少し社会が良くなったと思える音楽を」6人で描く未来


記者:平吉賢治

撮影:

掲載:20年03月06日

読了時間:約12分

みんなの面白いことが交わってさらに面白い世界に

――今作を聴くとビート感もありつつ音像も豊かで、スピーカーで大音量で聴いていて心地良く感じます。

熊木幸丸 確かに今までの作品よりも広い音のレンジで作ったので、ちゃんとした環境で聴くほど伝わるかなと思います。

――今作は全て新録ですね。

熊木幸丸 そうです。昨年出したシングルも2nd EP『FRESH』も、そこで完結にしてしまい、2020年の新しい作品として制作しました。

――今作の特色として挙げられることは?

熊木幸丸 4つ打ちが好きだったのでそれをメインに出してきたんですけど、今作ではそういうハウス的な踊りのものだけではなくフワッと踊るような曲をたくさん入れたという点では、今までにはなかった作品だと思います。それこそ先ほど言われたように、スピーカーなどちゃんとした環境で聴いたほうが伝わりやすいような繊細さ、優しさ、包み込むような音が増えたと思っています。

――収録曲の「RUN」「時計の針を壊して」など、今作ではドラムンベースやヒップホップなどカラフルですね。

熊木幸丸 「RUN」はもともとドラムンベースを書こうと思っていました。でも、ただそれにするとつまらないからストリングスとか生っぽいテイストを足したりした曲です。「時計の針を壊して」はヒップホップや海外のソウルやR&Bをかなり意識して書いた曲です。ちょっと空間がグネグネするような感じがほしくて。

――「DO YA THING」もエレクトロパーカッション的なビートが面白いです。

大瀧真央 大きな会場でパフォーマンスするのが想像できる感じです。「ロケット」も「Imagination」もそうだよね?

熊木幸丸 そうだね。大きな会場でやらせて頂けるようになってきたこともあり、自然に大きなサウンドにしようという意識があったかもしれないです。

――ビート面についてですが、Lucky Kilimanjaroはライブは人力で演奏するそうですが、「RUN」などの楽曲を演奏するのは大変では?

柴田昌輝 僕が生ドラムを叩いてラミちゃんがパッドを使っているので、2人で相談しながらやります。どこを生でやって、というように。

熊木幸丸 曲はエレクトロサウンドだけど、ライブではガッツリとバンドっぽくなるのはLucky Kilimanjaroの面白い部分なのかなと思っています。バンドっぽくもエレクトロにも寄せられるというバランスは、リズムの2人が組んでくれているからできているんです。

――ベースはライブでどのようにプレイするのでしょうか。

山浦聖司 1st EP『HUG』の頃からシンセベースが入りだして、今作では「時計の針を壊して」が一番印象的なシンセベースです。凄く難しいんですけど。シンセベースは押せば同じ音が出るような感じですけど、弦を弾くほうのベースだと若干のニュアンスで違いが出せるので、そこが最も異なる点だと思います。けっこうそこの違いが面白いんです。

――松崎さんがライブで心がけていることはありますか。

松崎浩二 常に弾いているようなスタイルではなく、必要なところで弾くという感じなので、弾いていない時も演奏に入り込んでお客さんと一緒に遊ぶということに重きを置いています。

熊木幸丸 うちのバンドってみんなプレイヤー気質というよりは、Lucky Kilimanjaro全体でそれぞれのパーツを担っているような感じなんです。だからプレイヤーとして「オラァ!」みたいなのはあまりないよね?

松崎浩二 会場全体を6人でつくっているようなね。

――ここぞという時はバシッとギタープレイを決めて、あとは楽しくお客さんを煽ったりするような?

松崎浩二 そんな感じです(笑)。

――大瀧さんのこだわりポイントは?

大瀧真央 ストリングスの音色がカラフルになったのが大きいと思います。例えば『HUG』の時は“ザ・シンセ”というような音が多かったけど、今作では生楽器と混ぜた音色などを入れたり、表現の幅が増えました。

熊木幸丸 ストリングスとかブラスの音色が増えたよね。チャランゴ(ウクレレ程のサイズの弦楽器)の音も使ったり。

大瀧真央 そうそう。あとピアノの音も意外と多いんです。シンセ特有の音以外のサウンドが増えました。

――そういった音色の広がりもあり、カラフルなサウンドの作品となったのですね。ところで今作のリードトラックは「Drawing!」になるのですか。

熊木幸丸 そうです。でもリードトラックをどうするかという時に、けっこうメンバーで意見が分かれたんです。「350ml Galaxy」がいいというのもあれば、僕は「ロケット」がいいというのもあったり。「Drawing!」がリードだけどアルバムとして聴いてほしい、というのはあります。全体でちゃんと作品になっているというか、良い塩梅で繋がっていると思うんです。

――“アルバム感”は確かにありますよね。歌詞全体面、世界観のコンセプトはあるのでしょうか。

熊木幸丸 今作で最初に出来た曲が「ロケット」なんです。去年『FRESH』を書き終えて、「Lucky Kilimanjaroってどういう作品を書けばいいんだろう」と、ちょっと頭の中で混乱した時期があったんです。そこで「Lucky Kilimanjaroはバンドだから」とか「4つ打ちを作らなきゃ」とか、そういうのを全部なしにして「一度自分が今カッコ良いと思う曲を書こう」と思って書いたのが「ロケット」で、かなり気に入った作品になったんです。「自分達が今信じているカッコ良いと思っていることを表現、形にする」ということは大事だなと思ったので、それをやり続けようというのが今作のテーマにあります。

――「ロケット」は重要な楽曲なのですね。柴田さんが今作で好きな楽曲は?

柴田昌輝 「DO YA THING」は今までにない壮大さがあるので、演奏でどう表現しようかというテーマがあります。ライブではパーカッションとの絡みが面白くできそうです。

ラミ 僕は「春はもうすぐそこ」が純粋に一番好きで、この楽曲の抑揚をライブでどう表現できるのかというのが楽しみです。お客さんとの熱量をどう上げるかという点でもそうです。

――「春はもうすぐそこ」はハウスビートですね。

熊木幸丸 これはもともと何を作ろうかはっきりしていない時に作った曲で、ちょっと不思議な感じというかアジアな感じが入ったというか。

大瀧真央 “アジアンハウス”?

熊木幸丸 アジアンハウスですね(笑)。

――新しいジャンルですね(笑)。「Drawing!」のMVのテーマはありますか。

熊木幸丸  “自分のなかのアイディア”です。例えば僕と松崎のアイディアはそれぞれタイプが違うだけで、各々ユニークなものがあると思うんです。「それがいびつな状態でも表現していくと、みんなが面白いことをやれて交わってさらに面白い世界になるよね」というのがざっくりとした主題なんです。それを考えた時に、みんなの中にあるそれぞれのアイディアがフェイスペイントとかに出たらいいなと思って、監督に「『Drawing!』のアートっぽいモチーフを使ったらどうなりますか?」って相談したらああいうMVになりました。

山浦聖司 あれ、ほとんど1カットなんです。けっこう緊張感がありました。あと、途中でプロデューサーさんに「ちょっと暗いからもっと明るくして」と言われて(笑)。

松崎浩二 MV撮影は楽しかったけど、やや緊張感はありました。ラミちゃんと大瀧が絵を描くシーンでもう一回やり直すシーンもあって。

ラミ あれは申し訳なかった!

熊木幸丸 そういう意味では緊張感があったね。あの楽しさは意外と頑張ってました。

――歌詞にはシリアスな部分もあるので、緊張感も含まれているとちょうど良いかもしれませんね。

熊木幸丸 監督もそこを狙ったのかもしれません(笑)。

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