edda「これまでの旅を夢のかたちに」不思議な世界観生み出す想像力の源泉
INTERVIEW

edda「これまでの旅を夢のかたちに」不思議な世界観生み出す想像力の源泉


記者:榑林史章

撮影:

掲載:20年02月21日

読了時間:約13分

話し相手にイマジナリーフレンドが欲しい

『いつかの夢のゆくところ』初回限定盤

――「イマジナリーフレンド」にしても、アルバムに収録の新曲「Alice in...」にしても、子どもと大人の狭間だったり、夢と現実の狭間だったり。その狭間が、いい感じでモラトリアム感を生んでいますね。そういう“狭間”みたいなものは意識しましたか?

 前回のアルバムは、タイアップ曲やもともと作っていた曲を集めて、それを街として表現しました。今回は「夢の館」というコンセプトをまず置いて、じゃあそこにはどんな夢が保管されているだろう? と想像を膨らませて作っていきました。もともとあったものに名前を付けた前作と、ないところに新たな物語を作っていった今作では、作り方がまるで違います。1曲1曲コンセプトを意識しながら作ったので、夢とか現実が夢に変わる様は、確かに意識しながら書きましたね。

――「イマジナリーフレンド」という曲は、子どもの時にだけ見えて、大人になると見えなくなる想像上の友だちの曲。eddaさんも子どもの頃は、そういう友だちがいたんじゃないですか?

 いえ、残念ながら私はいなかったです。だからいた人が、すごく羨ましいです。今でも欲しいですもん。いたら良くないですか? 家で話し相手がいない時とか(笑)。自分では経験がなかったんですけど、ネットで調べたら、イマジナリーフレンドがいたという人はけっこういて。どんな感覚だったか、たくさん学べました。

――曲調も、シンフォニックからポップ、バンドサウンドもあって。ちなみにInstagramで、弦がむき出しのピアノが置いてある部屋の写真がありましたが、あれはレコーディングスタジオですか?

 はい。前作のDVDにライブ映像を収録したんですけど、その場所と同じスタジオです。前作でdetune.さんとレコーディングする時に使って以来、その時の感触が良かったので、それからちょくちょく使わせていただいていて。今作でも、何曲かそこで録っています。

――レコーディングスタジオと言うと、ガラス、器材、防音の壁という無味乾燥なイメージです。ああいう温かみの感じられるスタジオだというのが、eddaさんらしいなと思いました。

 そうですか、ありがとうございます。珍しいですよね、あんなカフェみたいなスタジオって。でも、あそこはアットホーム過ぎて人の家にいるみたいで、ソワソワすると言うか。だから、私はむしろ一面コンクリートみたいな、それこそ無味乾燥なスタジオのほうが集中出来るんです。きっと見るものがたくさんあって楽しくて、いろんなものが気になって、それでソワソワしちゃうんだと思うんですけど。

 今作では「Alice in...」をそのスタジオで録ったんですけど、めちゃめちゃいい感じで録れて、今作で一番好きと言っていいくらいの曲になりました。そう考えると、ソワソワして集中出来なかった壁を乗り越えたなって感じがします。

――「Alice in...」は、切なさがありながらも最終的には前向きさもありますね。『不思議の国のアリス』がモチーフになっていて。

 『不思議の国のアリス』は大好きで、今回は夢の館がテーマなので、「アリスの曲は入れなきゃでしょ!」って(笑)。そもそも拍子を先に決めた曲で。メロディを作るよりも歌詞を作るよりもまず先に、拍子を決めたんです。6/8から12/8に変わるんですけど、そういう曲がやりたいと思って。私の楽曲は、けっこう6/8が多くて、「ポルターガイスト」もそうだし、「ルンペル」もそうです。

――その拍子によって、独特なゴシック感が出ていますね。

 はい。物語としては、アリスが大人になってもまだ不思議の国の夢に夢中なことを異常だと思われ、病院に入れられてしまうんですけど、でもアリスは夢を忘れたくなくて、噂の「夢の館」に自分の夢を保管してもらうために夢を持って逃げ出す、という内容です。

 現実である病院の部分と、不思議の国に思いを馳せる部分をバキッと分けたいと思って作っていて。病院での部分は心電図の音みたいなピコピコした音を入れてもらいました。逃げ出してからは夢のことを考えているので、そこではファンファーレが鳴ったり、ファンタジックな音が入っていて。

――違う曲が2曲合わさっているような感じですね。「時をかけ飽きた少女」も、違う曲が合わさっているみたいな曲になっていますね。

 そうですね。それも途中でリズムが変わりますし。

――「時をかけ飽きた少女」は、eddaさんがファンだと公言しているdetune.の郷拓郎さんが作詞作曲されてますね。

 これは一番緊張しました。detune.さんが、レコーディングに来てくださったんです。今まで楽曲提供をしていただいて、レコーディング現場に来ていただくことはありましたけど、歌詞を書いてくださったご本人が、現場に来てくださるというのは初めての経験でした。本来は歌詞って歌い手の好きに解釈して歌って良いものですけど、自分の解釈が間違っているんじゃないかと気になってしまって。

 例えば<大丈夫>という言葉を、声を張り上げるのか優しく言うのか、一つひとつの言葉の表現に気を張って、ピリピリしながら歌いました。緊張感がすごすぎて、この日はすごく疲れて倒れるんじゃないかと思いました。

――ファンだからということもあるだろうし。歌詞が感覚的なので、そう思うのも無理もないと思います。『時をかける少女』という作品がありますが、この曲の少女は時をかけすぎて、飽きてしまっている、と。

 歌詞は、時をかけ飽きた少女が大事に思ってきたもの、時をかける中で見てきたものを思い出しながら、この子なりに誰かに向かって発している言葉だと解釈しました。きっと、この子はまた別のところに行ってしまうから、たぶん最後の挨拶をしているのかなと。

 掴み所がなくて、でもちゃんと経験してきたことがあって、ここからまた別の場所に行くんだという、歌う時は、そういう少女像を自分の中で作り上げるのに頑張ったという感じです。

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