シンガーソングライターのeddaが19日、2ndアルバム『いつかの夢のゆくところ』をリリース。昨年10月から3カ月連続で配信リリースした「雨の街」「ポルターガイスト」「イマジナリーフレンド」を含む全11曲を収録。夢の中にいるような、不思議で少し不気味ながらファンタジックな“夢の館”をテーマとした世界感が歌われた作品。アルバム制作の話や楽曲にまつわる話を聞き、彼女の想像力の源に迫った。【取材=榑林史章】
ガリッと傷が残るようなものになったら
――『いつかの夢のゆくところ』というタイトルですが、今回はどんなコンセプトで制作しましたか?
今回は“夢の館”という場所をテーマにしています。今まではeddaが旅をして来た場所を題材に制作して来て、その旅の過程で夢の館に辿り着き、そこで見た夢をまとめたアルバムですね。
――夢の館という題材は、どういうきっかけから生まれたんでしょう。
もともと夢が好きで。音楽塾ヴォイスで学んでいた頃に授業制作の一環で「夢日記」という曲を作ったことがあったんです。『ねごとの森のキマイラ』という作品にも「夢のレイニー」という曲を収録していたり、夢に関係した曲を作ることが多くありました。それから趣味で夢日記をつけているので、夢がテーマならきっとたくさんのお話が書けるんじゃないかと思って。
――今作にも「夢日記」という曲を収録していますね。その時に作った曲ですか?
そのままではなくて。当時の歌詞は、夢日記はこういうものなんだよということを歌っていて。今回は、夢日記を書いてきて、自分がそれを書いている意味も踏まえて、新たな物語として書きました。
――夢日記は今も?
はい。今も付けています。
――細かく覚えているものですか?
最初の頃はすぐ忘れてしまっていたんですけど、覚えていることだけでも書くようにしていたら、そのうちに慣れて思い出せるようになって。それで、面白かったものを書くようにして。
――実際に見た夢を元に書いた曲もあったり?
それはないんですけど。実際に見る夢は、歌詞にするのがけっこう難しくて。
――どういう夢を見るんですか?
自分ではない子が主人公になっていることが多くて、自分が中学生の男の子だったり、外国人の女の子だったり。外国人の女の子だった時は、自分は9歳で20歳前後のお兄ちゃんがいて。お兄ちゃんのことが怖いから、お兄ちゃんから逃げるんですけど、ヘリコプターで逃げるんですね(笑)。それで逃げた先の家で女性のお医者さんと出会って、私はそのお医者さんと一緒に住みたいんですけど、その人は問題を抱えていて…という。
――スティーヴン・キングの小説みたいですね(笑)。
すごく細かく覚えていて、家がピンクの外壁だったり、崖の上に立っていたり。
――eddaさんの楽曲は、いろいろ空想や妄想から生まれた物語が多くて、物語を生み出す原点が、夢なのかもしれないですね。
物語を考える上で脳のトレーニングになっている気がします。夢って、経験したことのないことや見たことのないことは出てこないって聞くじゃないですか。私もきっと、ピンクの家とかどこかで見たことがあるんだなって思うと不思議な気持ちです。
――今作に先駆けて、先行配信されていた「雨の街」「ポルターガイスト」「イマジナリーフレンド」の3曲は、クリエーターとコラボしたジャケット写真で、アニメーションも公開されて話題でした。不気味さがあって、でも可愛くて。温かさがありながら、どこか切ない。こういったアニメーションとのコラボは、以前から考えていたんですか?
ずっとやりたかったんです。私の曲は以前からそうなんですけど、聴いた人のトラウマに残るような、ガリッと傷が残るようなものになったら良いなと思っていて。私自身そういう音楽が好きで、NHKさんの『プチプチ・アニメ』の「ニャッキ!」とか「ジャム・ザ・ハウスネイル」とかのようなイメージと言うか。内容はよく分からないけど、後から思い出して考えるみたいな感じがいいなと。
――3曲は、アニメーションが付く想定で作曲を?
「ポルターガイスト」と「イマジナリーフレンド」はそうでした。「雨の街」は、もともとミワコウダイさんが作ってくださった曲と歌詞がワンコーラス分だけあって。アニメーションとコラボすることが決まって、歌詞を広げていった形です。
――コラボしたクリエーターのしばたたかひろさん、ギブミ~!トモタカさん、イケガミヨリユキさんとは以前にも面識があったのですか。
全員初めましてでしたが、ギブミ~!さんとイケガミさんは、私が一方的に好きで見ていた方々で。しばたさんはスタッフに紹介されて初めて見たら、めちゃめちゃ私の好きな映像だったので、「ぜひ一緒にやらせていただきたいです」とお願いさせていただきました。
――各クリエーターさんとはお話しされたのですか。
最初にいろいろお話をさせていただきました。でも、私はこういう気持ちで曲を作りましたけど、それをどう解釈してどう映像にしていただいても大丈夫ですとお伝えして、自由に作っていただきました。こちらから一方的に依頼するのではなく、お互いにやりたいことが両立しているものにしたいと思ったので。
――「雨の街」のしばたさんのアニメーションは、モノクロの質感が独特の絵で、女の子の描写もなんとも言えず不思議ですね。
すごく可愛いと思いました。それこそトラウマじゃないけどインパクトがあって印象に残るし、でもすごく愛おしくも感じて。すべてが良い味になっているなって。