edda「私自身が聴いて楽しい音楽」独特の世界観で作り上げる物語の魅力
INTERVIEW

edda


記者:榑林史章

撮影:

掲載:18年11月17日

読了時間:約12分

 シンガーソングライターのeddaが7日、1stアルバム『からくり時計とタングの街』をリリース。昨年10月にシングル「チクタク」でメジャーデビュー。これまでにアニメ『Infini-T Force』エンディングテーマや、映画『アヤメくんののんびり肉食日誌』主題歌などを手がけ、最新シングル「フラワーステップ」は、日本テレビ系ドラマ『探偵が早すぎる』主題歌として話題を集めた。今作にも多彩な物語が詰まっていて、eddaは「私の色がすごく濃く出ていて、私自身が聴いて楽しい作品」と話す。今作の魅力や制作について話を聞いた。【取材=榑林史章】

トラウマになる曲ほど好きになる

『からくり時計とタングの街』通常盤ジャケ写

――eddaさんは毎作ごとに物語を考えて、それを曲にしているわけですが、『からくり時計とタングの街』はどんなイメージを持って作り始めましたか?

 「トントン」、「リンドン」、「宇宙ロケット」という3曲があって、この3曲が核となる雰囲気で作りたいと思っていました。中世の街並みと言うか、ちょっとカラカラとしたような、色で言うとオレンジ色の街並みのイメージで、その世界観に合う子(曲)たちを詰めていった感じです。タイトルにある「からくり時計」は、街にあるシンボルみたいないもので、「タング」は、私の家にいるテディベアの名前です。タングがいる街で生まれた物語を詰めたのがこのアルバムで、ブックレットにはその街の地図も描いているんです。

――この街の地図を?

 はい。昨年インディーズで出した『さんかく扉のむこうがわ』というミニアルバムは、『さんかく扉のむこうがわ』にある世界でeddaが物語を集める旅をしているというコンセプトでした。それで今年リリースしたミニアルバムが『ねごとの森のキマイラ』というタイトルだったので、地図にはその『さんかく扉』があったり『ねごとの森』があったり、『からくり時計とタングの街』も描かれています。そうやって作品を出すごとに、地図をどんどん広げていこうと思って。

――中心になっている「トントン」、「リンドン」、「宇宙ロケット」は、おとぎ話と言うか昔話のような雰囲気で、子どもが好きそうな感じの曲ですね。「トントン」というのは、トンカチで何かを作っている擬音ですよね。

 はい。死刑台を作っています。

――そんな恐ろしいものを作っていたんですか!?

 はい(笑)。だからこそ、そこでの葛藤も描いています。主人公は9歳くらいの男の子で、死刑台を作る仕事の家系で、受け継いできた仕事に誇りを持っているんです。

――カントリー調の軽快なサウンドと、“死刑台”という恐ろしさのギャップがすごいですね。

 NHK『みんなのうた』に流れる様なな曲を、作ろうと思ったんです。私の中で『みんなのうた』と言うと、小さい子が聴いてトラウマになりそうな曲というイメージがあって。子どもが“ゾッとするお話”だけど、つい見たくなってしまうと言うか。

――『みんなのうた』で、怖かった曲というのは?

 諫山実生さんが歌っていた「月のワルツ」という曲とか。今聴くと決して怖い曲ではないんですけど…薄暗い雰囲気のアニメーションと、曲調がブルースやジャズっぽくて、決して子ども向けではない感じだったんです。でも、子どもの頃はイントロが流れてくるだけですごく怖かったんですけど、大人になって改めて聴いて、すごく好きな曲になりました。きっと当時も、怖かったことも含めて好きだったんだと思います。あと『ポンキッキーズ』で和田アキ子さんが歌っていた「さあ冒険だ」という曲は、バックに流れる映像に『月世界旅行』という古い映画のシーンが使われていて、子どもの時はそれもトラウマでした。

――『月世界旅行』はモノクロの映画で、月が人の顔になっていたり、eddaさんが好きそうな世界観ですけど。

 これも「月のワルツ」と同様で、大人になってからは好きなんですが、当時は月が顔になっているのが怖かったんです。そういうものほど大人になって聴くと、曲としてもすごく好きだし、映像もすごく自分の好みだったりするんですよね。きっと私の場合は、トラウマになるくらい強烈な印象を残したものほど、好きになる傾向があるみたいです。

――eddaさんのこれまでの曲にも、死体に生える植物をモチーフにした「ディストランス」とか、前回のシングル「フラワーステップ」も体中に花が咲く病気をモチーフにしていたり、トラウマ成分がすごくありますけど、どれも明るい曲なのがポイントです。「トントン」も一聴すると、男の子が元気にお手伝いをしている歌だし。

 はい。「トントン」は、その子の成長が描けたらと思いました。設定は怖いけど、決して暗い歌ではないです。

――「リンドン」もカントリー調のところがあって、クリスマスがモチーフですね。でも歌詞には、<つぶせクリスマス>と出てくる。これもクリスマスソングの一種でしょうか。

 一応はクリスマスソングですね(笑)。主人公の友だちがサンタクロースの息子で、毎年クリスマスになるとお父さんが忙しくなるので、友だちが寂しくてシュンとしてしまうんですね。それを心配した主人公が、「じゃあクリスマスをぶっつぶそう!」と計画を企てる…クリスマスに子どもがイタズラする曲です。「トントン」に出てくる子も含めて、曲に出てくる子どもたちは、この『からくり時計とタングの街』で暮らしている元気な子どもの象徴です。周りの大人たちも「またあいつらか!」みたいな感じで、微笑ましく見守っているイメージです。

――実際にクリスマスの思い出などありますか?

 私は12月生まれで誕生日もあるし、楽しいことしかないから12月が好きなんです。特にクリスマス時期は、街も全部がファンタジーな世界になるので、「1年中12月だったらいいのに!」と思います(笑)。

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