真木よう子、やりがいは「感情を出せるか」過去に役から抜け出せず
INTERVIEW

真木よう子、やりがいは「感情を出せるか」過去に役から抜け出せず


記者:木村武雄

撮影:

掲載:20年02月20日

読了時間:約6分

感情を切り替える音楽

 先の会見で真木は「この物語の世界に入ってみたいと思いました」とも語った。なぜその世界に入ってみたいと思ったのか。

 「役者心としか言いようがない。この歳になって感情的に取り乱すことは現実世界ではなかなかない。大人になれば自分で立ち直れる方法を見つけていて、半ば諦める方向に向かうといいますか。本当は取り乱すような感情は誰もが持っていると思いますし、出来れば出したいと思っている。でもそれは現実的には難しい。ただ、お芝居ではそれが許される。今回は決して軽いテーマではないうえに、役としてもやりがいがあって。私は出演を決めるときは割とそうした傾向があります。この作品なら感情がかなり出せるなと。それが楽しみでもあります」

 役者にとって感情はその役柄を表現する上で最も重要な要素とも言える。ただ、真木は過去にその感情から抜け出せなくなったことがある。

 主演作に『さよなら渓谷』がある。芥川賞作家・吉田修一氏による同名小説が原作で、幼児殺害事件をきっかけに暴かれていく一組の夫婦の秘密を描きながら、男女の絆を問うた作品だ。この作品で過去に強姦にあった女性を演じた真木は当時をこう振り返った。

 「まだ若かったので、すぐに役とのオンオフができなくて。やっているつもりではいたんです。でもホテルに帰ったら思い出してしまって精神状態が不安定になる時があって…」

 そんな時に助けになったのが音楽だった。

 「木村カエラちゃんの明るい歌とか、前を向こうみたいな歌をガンガンに流して、なんとか自分の気分を変えていきました」

 この映画では、役作りのため被害女性のエピソードを聞いた。そのなかで、実際にその人が聴いていた曲を聴いてから撮影に臨んだ。その曲は、Mr.Childrenの「タガタメ」だった。

 「この曲には、子供たちが被害者になっても加害者になっても、出来ることは愛する事以外無いという歌詞が書かれています。被害者の方が綴った『どうしてこの人達(ミスチル)はこれを分かるのに、私の両親は分からないんだ』を見たときに、そういう気持ちはやっぱりあるんだと思って。強姦されたことを恋人に伝えるシーンの前にこの曲を聴いて、そういう想いになったことがあります」

 音楽は大切な存在で、先の作品に限らず、「役に飲まれてしまうところを引っ張って助けてもらった音楽は結構あります」。

 音楽は「すごく好きです。ロックも好きでよく聴いています」という真木。最近は…「娘がTikTokで聴いている曲を聞いたら、Official髭男dismさんで。私、疎いので、全く分からなかったんですけど、娘から教えてもらった曲を聴いたりもしています」と笑みを浮かべた。そしてこう語った。

 「娘と親を繋ぐ関係としても音楽はいいですよね」

真木よう子

(おわり)

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