映画とは何か、周防監督が語る「カツベン!」の意義×成田凌が明かす舞台裏
INTERVIEW

映画とは何か、周防監督が語る「カツベン!」の意義×成田凌が明かす舞台裏


記者:木村武雄

撮影:

掲載:19年12月21日

読了時間:約12分

奥田民生だからできた当時と今のつながり

――さて音楽の事も伺えればと思いますが、劇中の音楽はどのように?

周防監督 いつもいとこの周防義和さんに音楽を作ってもらっているので、今回は、撮影前に書生節(しょせいぶし)を一緒に聴きに行きました。書生節は明治から大正期に流行った歌です。大正時代には、学生アルバイトにバイオリンを貸し出して、街角で歌わせて商売をしていたようです。だからバイオリンの弾き方もかなりいい加減で、却って面白い。その書生節の催しに行ったときに、たまたま東京節というエノケン(榎本健一)が歌ってヒットしたものがあって、とても懐かしかった。1960年代生まれの人くらいまでは馴染みがあると思います。そしたら、義和さんから、東京節をこの映画のイメージとして使えないかという話があって。そう言われれば、大正時代を象徴する音楽としてピッタリじゃないかと。エノケンの東京節がひとつのヒントになりました。

――エンディングの奥田民生さん「カツベン節」を聴いた感想は?

成田凌 主題歌は作品のイメージになりますから、ぴったりだと思いました。実は音楽の周防義和さんに最初、「成田君、君歌わない?」と言われて、「すごく下手ですよ」と伝えても「それでもいい」と。でも気付いたら無くなっていて、本当に良かったと思いました(笑)。

周防監督 でも、書生節ってそういう面があるんですよ。素人がとんでもないバイオリンの弾き方でやっていたから。あのいい加減な感じというのは、プロの歌手では出せないかもしれない。東京節という大正時代の節を今やると、知らない人は、聴いたことはないけど、なんだか古臭い音楽という感じになってしまう。奥田民生さんに歌ってもらうことで、現代とリンクするのではないかと思って。それが奥田さんにお願いした一番の理由で、確かに大正時代の歌だけど、現代につながるような雰囲気をもってほしい。奥田さんは、ご自身が決して譲ることのない音楽性を持っている人だと思うから、こっちらの映画的な意図にそった歌を引き受けてくださるか不安だったけど、僕らの狙う世界観を表現してくれて、ありがたかったです。改めてその音楽性に感動しました。

成田凌と周防正行監督

(おわり)

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成田凌
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周防正行監督
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