映画とは何か、周防監督が語る「カツベン!」の意義×成田凌が明かす舞台裏
INTERVIEW

映画とは何か、周防監督が語る「カツベン!」の意義×成田凌が明かす舞台裏


記者:木村武雄

撮影:

掲載:19年12月21日

読了時間:約12分

活動弁士と向き合い学んだこと、成田凌

――さて、成田さんは活動弁士という役を通して作品全体を意識するようになった、とも話されていました。

成田凌 作品の全体を考えるようにはなっています。映画全体を通してですけど、当たり前のものを一回考えてみるようにはなりました。当たり前にあるものを、ちょっと一回待って、これは本当に正しいのか、ということを考えて、主に自分を信じるというか。それと、活動弁士に向き合ったときに、ずっと喋るよりも必要なところを必要な分だけ喋る方が魅力的に感じました。だから、色んな事に対して「ちょっと待った」あるいは「ちょっと待てる」人になりたいと思いました。

――本作でも、いろいろな「間」はありましたね。

成田凌 そうです。この役をやってから「間」は全然怖く感じなくて。それはセリフがあってやることが明確なので、そう思える。僕が演じた俊太郎は「この間を埋めたい」と師匠に伝えるけど、その師匠は「埋めたくない」と。その意見も今ではすごく理解できます。お客さんに画を見せたいからここは少し待ちたいとか。明確な理由があって。

――間をコントロールするイコール、その人の感情までもコントロールしそうな感じがありますね。

成田凌 そういうのありますよね。(大金を奪い泥棒・安田虎夫を演じた)音尾琢真さんはゆっくり喋るので、その間合いが魅力的で、逆に(館主青木富夫の妻・豊子を演じた)渡辺えりさんは間がゼロで、間をとるのが一切許されないという人もいらして、いろんな間の取り方があって面白いです。

――役者としての意識はこの映画で変わりましたか?

成田凌 やはり全体を見るということと、楽しむということを忘れないでやっていこうと思いました。初めて主演をやらせて頂いて、やらないと分からないことも沢山ありました。なので、「とりあえずやってみる」。その考えは監督や共演者から学んだことでもあるので、以前よりも高まっている。

成田凌

成田凌

――全体的に昭和の正月映画という印象も受けました。

周防監督 その辺は意識しました。今は正月映画ってピンとこなくなったけど、僕の子供の頃って、家族みんなで観る感じとか、映画会社も盆と正月は違うというのがあって、今は季節感ないけど、あえて昔の正月映画の豪華さ、楽しさというのを意識しました。

――撮影期間は4カ月と聞いていますが、現場はどうでしたか?

成田凌 とても一つ一つ丁寧に撮っている印象があったので豊かな現場だなと。(青木館主・青木富夫を演じた)竹中直人さんがいるときは、竹中さんの口笛が鳴っているという(笑)すごくいい雰囲気でした。

――雰囲気の良さは作品からもすごく伝わってきました。

成田凌 楽しさが漏れているというか、だからこういう楽しい作品が出来たと思いますし、現場がすごく楽しい、良い現場だったからこそ「ちょっとやってみよう」という挑戦した部分もあって。色々な人や色んな場所に助けられました。

――竹中さんのアドリブも多かったと聞いていますが、受け答えは?

成田凌 それは大変でしたよ(笑)。僕が悪くないのに、監督から「笑うのを我慢して」と(笑)。僕は笑うのを我慢するのが一番苦手だってことはこの作品で改めて思いました。でも、竹中さんの自然体で演じている姿が格好良くて、そうなりたいと思いました。

――監督は成田さんの印象変化として「二枚目だと思ったが三枚目だった」と話されていて、個性的で人間的な魅力もある成田さんじゃなかったら今回の作品は撮れなかったと思いますか?

周防監督 役者は不思議で、成田さんならではのヒーロー像があって、違う人だったらその人に合わせたヒーロー像になる。イメージキャストで「この人」と思っても、出ていただけないこともある。でも、僕が「この人」と思った役者ではなくとも、観た人にとっては「この人じゃなきゃ考えられない」というキャラクターになることもある。役者は、その人なりにキャラクターを築き上げます。それが出来るのがいい役者で、その人がやったらその人なりのヒーローになっていく。今回は成田さんだからあの方向でのああいうヒーローになった。僕のイメージの中にある理想の主人公になってもらったというよりも、成田凌が本来持っているものを活かして、自分の力で魅力的な主人公を作り上げてくれた、ということだと思います。当然ですけど、違う人がやるとまた違う映画になる。

成田凌 それはそれで観てみたいですね。でも脚本だけ読んだだけではどうなるかが全く想像できていなくて。

――それと黒島さんはもともと美しいですが、成田さんだったからこそ黒島さん演じた栗原梅子が更に可愛く見えた気がして。

成田凌 僕のおかげではないと思いますけど、一番綺麗だったのが無声映画に出た時の黒島さん。白塗りした姿が綺麗すぎて、びっくりしました。普段はおとなしいイメージの方だけど、画面に映る黒島さんは本当にきれいで。銀幕のスターですよ。

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成田凌
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周防正行監督
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