デーモン閣下「悪魔のフィルターを通さない」新譜は劇団☆新感線との集大成
INTERVIEW

デーモン閣下「悪魔のフィルターを通さない」新譜は劇団☆新感線との集大成


記者:村上順一

撮影:

掲載:19年10月17日

読了時間:約12分

 デーモン閣下が10月16日、コラボレーションアルバム『うた髑髏 -劇団☆新感線劇中歌集-』をリリース。このアルバムは日本の演劇界で圧倒的な影響力と人気を誇る劇団☆新感線とデーモン閣下が作詞や作曲をした劇中歌を集めた作品で、約四半世紀にも及ぶ活動の集大成。インタビューではこの作品をリリースすることになった経緯や、悪魔というフィルターを通さず人間の気持ちを描いたのが新鮮だったと話す作詞について、「解説は自分の新鮮な感情や感覚を邪魔する」と話すデーモン閣下にその真意を聞いた。【取材=村上順一/撮影=富田味我】

劇団に曲を書くのは向き合う姿勢が違う

デーモン閣下

――この最新アルバム、歌詞カードをじっくり見ながら聴くといいですね。

 吾輩の希望としては最初は音だけで聴いてもらって、歌詞カードはあとで見てほしいかな。

――アルバムに入っているライナーノーツにも、まずは解説を読まずに音を聴いて欲しいと書いてありましたね。

 そうそう。解説ってありがたいんだけど、自分の新鮮な感情と感覚を邪魔するよね。解説を読まずに聴くと「一体この曲はどんな場面で使われている歌なんだろう」と想像が増す楽しみがあるじゃない? ライナーノーツにはそれが全部書いてあるからつまらなくなってしまう。じゃあライナーノーツ書くなよ、という話にもなってしまうんだけど(笑)。とりあえず最初は歌詞もライナーノーツも読まずに音から聴いてほしいかな。もっと言えば、このインタヴューも音を聴いてから読んでほしい(笑)。そうすると二度、三度おいしいと思う。

――さて、昨年6月におこなわれたアルバム『うただま』のツアー『うただま プレミアムコンサート』はいかがでしたか。

 『うただま』には反応があって、西川流という日本舞踊の流派があって、その家元から『うただま』を題材とした舞踊の公演をやりたいという話があった。吾輩は一日だけ出演させてもらったんだけど、吾輩が出演しない日も音源を使って舞踊がおこなわれたり。今までとは趣向が違うアルバムだったので、色々なところで「面白いことをやっているね」と感想をもらったね。

――その後11月から12月に掛けて開催された『THE "BIRTHDAYS" ROCK TOUR』でやっていた、お客さんからネタを募集して閣下が歌っていくコーナーは面白いですね。

 面白いだろう? 隠し味のコーナーとして定着してきているもので、今も10月21日から始まる東名阪ツアー『DEMON‘S ROCK “DKR(うたどくろ)” TOUR 』のテーマを何にしようか考え中なんだよね。バンドメンバーも巻き込んでやるので大変なんだよ。(※取材日は9月中旬)

――もうすぐツアーが始まるので、時間がないですよね?

 そう。でも、やっと先日メンバーに曲の指示をEメールで出したんだけど。

――あっ、LINEとかではなくEメールなんですね。

 吾輩はEメールの方が管理しやすくてね。誰にどんな内容で送ったか、全部コピー&ペーストしてテキストデータでまとめてある。Eメールを打つ時も直接メーラーに打つのではなく、テキストで打って確認してから送るので。

――一手間挟んでいるんですね。音楽でいうとプリプロみたいな感じですよね。

 まあ、近しいものはあるな(笑)。

――さて、今作は劇団☆新感線に提供した楽曲で構成されたアルバムですが、どんなきっかけで、この作品を出すことになったんですか。

 TVアニメーションのテーマソングを書いて欲しいとか、何かのコラボレーションで歌って欲しいとか、そういった案件がちょこちょこあって、実はそういう作品を集めると1枚のアルバムに出来るくらい楽曲が溜まっているわけ。まとめた作品を出したら面白いだろうな、とは前から考えていたなかで、一昨年、劇団☆新感線から『髑髏城の七人』シリーズの作詞依頼の話がきて。2公演で10曲以上作ったんだけど、劇団☆新感線の曲も過去にたくさん書いていたので、「それらをまとめたら面白いのでは?」、という提案が吾輩のマネージメント・プロデューサーからあったわけ。

――何でも「刃よ明日に向かえ」という曲を、閣下が歌ってみたらどうかというお話があったそうですね。

 ちょっと違うね。「刃よ明日に向かえ」は『髑髏城の七人 Season月』のエンディング曲で吾輩が歌詞を提供して、元々は冠 徹弥君が芝居のサウンド・トラックで歌っていたんだけども、プロデューサーが次は吾輩が歌ってみたら良いじゃないかと、劇団☆新感線の会長に言い、「それはいいね」となったらしい(笑)。なので、この曲がきっかけにもなっているといえば、そうなのかなと。それで、次のSeasonでの数曲を吾輩が歌う事になったんだけど、吾輩からは何も言ってなくて、特に相談もなく社長会長同士で話が進んで行ってしまったんだよね(笑)。

――結果、こうやってアルバムに繋がったので良かったですよね。24年前に劇団☆新感線から曲をお願いされた時はどんな感じだったのでしょうか。

 最初は吾輩も出演して、その中で歌も歌うという話だったので、特別お芝居のために曲を書くという感じでもなくて、自分がバンドやソロで曲を書く時とそんなに変わらなかった。でも詞に関しては、聖飢魔IIや自分のソロで書くのと、演劇用に書くのとではかなり向き合う姿勢が違う。芝居の流れを壊してはいけないのと、芝居の世界観の中で書くのでね。吾輩は先に世界観があったほうが詞が書きやすい。

――私はこの『髑髏城の七人』の舞台は拝見したことがないのですが、音を聴いてどんな作品なのか観てみたくなりました。

 それは結構!他の作品ももちろんだけど『修羅天魔』なんかは天海祐希嬢が出演されていて、すごく豪華で面白いよ。

――1曲目に収録されている「修羅と極楽」はMVも撮影されていますが、場所はどこで撮影されたのでしょうか。

 山中湖。ロケだから雨だったらどうしようとか、撮影が8月だったのでカンカン照りだったら嫌だなとか思ってたんだけど、ちょうど良い具合に曇っていて、湖の上にも靄(もや)が立ち込めていたので、暑くもなくベストなコンディションだった。やっぱり雰囲気的に建物が映っていると興醒めしちゃうじゃない? 靄のおかげで対岸の建物が見えなくなって、吾輩の日頃の行いがよっぽど良いんだなと思った、悪魔なのに(笑)。

――もしかしたらCGで処理して、あのような雰囲気を出しているのかと思ってました。映像の最後の方で魚が飛んでいるのも印象的でした。

 あれいいでしょ。当たり前だけどあれは偶然だからね(笑)。最初のカット割りでは魚のシーンは入っていなかったんだけど、あのシーンを吾輩からリクエストして入れてもらったんだ。

この記事の写真

記事タグ 

コメントを書く(ユーザー登録不要)

関連する記事