作ることと届けるということを分けて考えられるようになった
――そのアレンジもけっこうやりとりがあったみたいですね。
迷惑を掛けました(笑)。でも、sasakure.UKさんすごくクリエイティヴに関して、最後まで妥協せずに付き合って下さいました。耳に引っかかる音を使いたいとか、生々しい効果音を入れたいとか、カッコ良すぎないで欲しいというのは一貫しているんですけど、私がエレクトロへの理解もそんなになくて、深めている最中だったので、アレンジャーさんに委ねている部分が多かったんです。私はsasakure.UKさんのセンスがとても好きで、音楽のセオリーに囚われないセンスとか、今作のイメージに絶対合うと思ってお願いしました。やりたいことが今まで以上に明確だったんです。
――sasakure.UKさんとはもともと面識はあったんですか。
面識はなかったんですけど、紹介していただきました。お会いして話を聞いていたらsasakure.UKさんは「どうせ夏ならバテてみない?」という私の曲を知っていて下さったみたいで。
――それは嬉しいですね。そのアレンジ面でのこだわった部分は?
ピアノはグランドピアノで生で入れたいとか、ピアノ、ベース、ドラムの3つを軸に効果音は面白いのを入れたいというのがありました。でも、まだ私の知識が追いついていないところをsasakure.UKさんに補っていただいた感じなんです。私の意見に対して色んな提案をしてくださるんです。あと、エンジニアの兼重(哲哉)さんもアドバイスをして下さって、歌にもあまりコンプレッサーを掛けないでもらったり。
一番大きかったのはsasakure.UKさんが打ち込みで作ってくれたピアノを、私がほぼコピーして弾いてみたんですけど、それが生になるとどう変わるのか、というのはsasakure.UKさんもやったことがなかったので、レコーディングするまでどんな感じになるのかわからなかったんです。結果すごく変わったんですけど。生にしたら、情感や良い意味でのイレギュラーなところもあったりするので、それが自由な感じに繋がったのかなと思います。
――その生音と自由というのがすごくリンクしているんですね。
心揺さぶられると言いますか、心に届く感じの音を作りたいなと思っていたので、生ドラムの空間ごと入っている感じとかすごくいいんです。
――歌詞に<駆け引き>という言葉も出てきますけど、音楽の駆け引きが上手くなった印象があります。
作ることと届けるということを分けて考えられるようになったのかもしれないです。メロディなど作るところは本能で作って、届けるというところに頭を使う感じです。例えばジャンル分けされるのがすごく嫌だったけど、ジャンル分けした方がみんな聴きやすいんだなとわかったり。アー写やジャケットのアートワークもどういう音楽をやってそうなのか伝わるものを考えたり、MVも自分が出ていると客観視しにくいので、自分が出演しないものにしたり。
――だから、キャストさんを使った形のMVになったんですね。
どんな人が歌っているのかわからない、匿名性を持たせたかったんです。
――ジャケットのアートワークもかわいいですね。
コラージュアーティストのQ-TAさんにお願いしました。Q-TAさんの視点で、こういう音楽を歌っていそうな人のジャケット、アートワークからでもイメージできるものを考えていただけたのが、嬉しかったです。ティーカップを頭につけているのが、どこかエスパーっぽいですし(笑)。
――かわいいですよね。ちなみに、もしましのみさんがエスパーになれるとしたら、どんなことをしてみたいですか。
うーん、お金持ちになれる能力とかは欲しいですけど(笑)。歌詞の中では相手の気持ちがわからないから見透かしてみたい、という曲ではあるんですけど、自分ではその能力はあまりいらないかもしれないです。私はわからないことを考えるのが好きなので、見透かす能力があったらあったで、つまらなくなってしまいそうで。あえてあげるとしたら、海外に行きたいので、瞬間移動の能力は欲しいです(笑)。
――その能力は僕も欲しいです! 最後に11月に開催されるワンマンライブへの意気込みをお願いします。
「エスパーとスケルトン」がリリースされますよという感じだけではなく、この曲からましのみ事体が新しいところにと思っているので、今までの曲も私が届けたい形で音とかこだわれたらなと思っています。ライブも新しい編成なので、ここからどうなっていくのかなというワクワクした気持ちで観に来ていただけたらなと思います。今の私は「音楽真っ向勝負」といった感じなので、楽しみにしていて下さい。
(おわり)