キーボード弾き語りスタイルで活動している女性シンガーソングライター・ましのみが3月21日、東京・渋谷ストリームホールで「ぺっとぼとリテラシー vol.3 ~レセプションパーティーin TOKYOでひとつになりまショータイム~」をおこなった。2月20日にリリースした2ndアルバム『ぺっとぼとレセプション』のリリースを記念し、3月15日の大阪・アメリカ村 BEYONDと東京・渋谷ストリームホールの2公演をおこなうというもの。ライブはニューアルバムの曲を中心に、アンコール含め全18曲を披露。デビューから約1年、意識の変化が生んだ、成長を感じさせるステージで魅了した。今月で無事大学を卒業し、学生最後となるライブのもようを以下にレポートする。【取材=村上順一】

ましのみという概念のなかにみんなで….

ましのみ「ぺっとぼとリテラシー vol.3 」

 「どうぞかしこまることなく、心と体を自由に柔らかくして存分に楽しんでくださいませ」。レセプションというテーマを感じさせるアナウンスから会場が暗転し、サポートメンバーの藤井洋(Key)とMIZUKI(Dr)が登場。そして、フォーマルなジャケットを着用したましのみがステージに。オープニングを飾ったのは「’s」。パワフルな歌声で劇的な幕開け。一気にましのみの世界観へいざなってくれた。続いては「一緒に踊りましょう!」と投げかけ、1stアルバムから「プチョヘンザしちゃだめ」で体を弾ませ楽しんだ。序盤からアトラクションを体感するかのようなワクワク感。

 「ましのみという概念のなかにみんなで入ってもらって、心のわだかまりを粘土みたいに柔らかくして、自由に楽しんでもらいたいです。感情の交換をできるのを楽しみにしてきました」と語り、この日にバッチリハマる渋谷が舞台の1曲「Hey Radio」、そして、ライブではおなじみの一人芝居を挟み、ニューアルバムから「美化されちゃって大変です」と軽快なビートのナンバーを、ハンドマイクで自由にステージを動きながらフロアを盛り上げていく。

 証明終了という意味を持つ「Q.E.D.」は、そのタイトルとは真逆の“証明できない”という天邪鬼な一面をみせるましのみらしさ溢れる1曲。テンポも縦横無尽に変化する様は、感情の揺れ動きを見せるようだ。そして、「個性ってなんだろう?」という事を改めて考えさせてくれる「コピペライター」。他とは違った感性を楽曲を通してぶつけてくるましのみ。演奏前にレクチャーした合いの手も、バッチリ決まりライブならではの一体感を高め、今後のライブの定番曲になりそうな予感。

 再び一人芝居でストーリーを作り上げ、キーボード弾き語りで「凸凹」を披露。ましのみのアバンギャルドなキーボードテクニックにも目を奪われる一曲で、レコーディングも一発録りでおこなったナンバー。レコーディング時もこんな感じだったのではないか? と、思わせてくれるような熱い歌声をホールに響かせた。続いて、自分たちを肯定して前を向いて進んでいけたら…という思いが込められた「フリーズドライplease」を披露。ステージ後方のカーテンには同曲のミュージックビデオが投影され、楽曲の世界観を後押し。切ないメロディに心臓の鼓動と連動するかのようなビートが我々を高揚させてくれる。

 ましのみは「時間に逆らえないという経験をしているからこそ、みんなとの関係が時間とともに薄れていってしまったり、熱量が下がっていってしまうのはすごく嫌だな...。ひとつわかったことがあって、お互い凸凹がぴったりハマっていたとしてもお互いを完全に理解することは出来ない。それを認めるからこそずっと興味を持ち続けられるし、熱量や関係性とかも傲ることなく続けていけるんじゃないか」と、今彼女が考えていることを語り、それを表現した1曲「錯覚」を披露。ファルセットが印象的なナンバーで、しっとりと透明感溢れる空間を作り上げ、続いての「タイムリー」は歌と歌詞でしっかりと情景をイメージさせてくれる説得力がある1曲。今まで以上に表現力が高まっているのを感じさせてくれた。

一番きれいなところを見失わないように

ましのみ「ぺっとぼとリテラシー vol.3 」

 「ラストに向かって心を解き放ちたい!」とライブはラストスパートに突入。今の記憶のまま、赤ちゃんになりたいという人間の心理をついたアゲアゲなナンバー「AKA=CHAN」から、盛り上がり必至のおなじみの1曲「ストイックにデトックス」、そして、「どうせ夏ならバテてみない?」の春バージョンということで、「どうせ春ならバテてみない?」へ。昨年12月に東京・duo MUSIC EXCHANGEにておこなわれたライブ『MashinomiX vol.1』では冬に変えて届けていたのも記憶に新しい。季節の概念を感じさせない曲へと進化した1曲でオーディエンスを扇情させた。

 ましのみは「日々生活していく中で苦しいことしんどいことがあって、そういう時に私の曲を聴いて元気になったり、気が軽くなってくれたら良いなという気持ちがあります。私は夢を追って生きていく上で、嫌なことが積み重った時に前が見えなくなってしまうことがあるんです。その中で念頭に置いているのが目的の一番きれいなところを見失わないようにしようということです。私は辛いところに寄り添えるような曲、一番きれいな目的に立ち帰れる曲を書きたいと思って届けています。曲を聴いているみんなにも幸せになってもらえたら…」とアルバムを作りながら感じたことを語った。

 愛の頂点を景色で切り取り書いた曲だと話す「ゼログラビティのキス」を本編ラストに届けた。苦しみという重力から開放してくれるようなミディアムナンバーで、心がふっと軽くなっていくような感覚を与えてくれる歌声。それは“一番幸せな瞬間”を思い出させてくれるよう。余韻を残しながらステージを後にした。

 アンコールに応え、再びステージにましのみが登場し、早速「名のないペンギン空を飛べ」を披露し盛り上げる。そして、5月と6月にツーマンライブ『ましのみpresents 心が上昇するツーマン』をおこなうことを発表。5月ツーマンの対バンには大学のクラスメイトだという、4人組バンドのとけた電球と、6月は過去にも共演経験のあるシンガーソングライター・番匠谷紗衣というラインアップ。

 ファンにとって嬉しい報告に続いて、ましのみは2ndアルバムを作っていく中で一番強く感じたことは「今を幸せだと思えない人に、これからの人生も幸せだと思えるはずがない」ということに気づいたという。今までは今を犠牲にして未来の幸せのために行動してきたと話すましのみ。「未来の幸せを追いかけて人生が終わってしまうんじゃないかと感じた。楽しんで頑張ったことが未来へ繋がっていくのが健全で、自分にとっても良いことだと思いました。私が夢を頑張り続けられるのはみんなの存在が支えになっています。私もみんなにとって支えになれるような、最高のアーティストになっていきたいと思っています。これからも冷めることなく、みんなと良い景色を見ていきたいです」と決意の言葉から「ターニングポイント」でタオル回しで盛り上がった。

 鳴り止まない手拍子にダブルアンコールに応えるましのみ。「みんなの“それ”であり続けますように…」と願いを込め、弾き語りで「それ以外」を最後に披露。<君にとってたったひとつの それに私がなれたらいいな♪>と、ファンとの絆を確かめあうかのような空間を作り上げ、「ぺっとぼとリテラシー vol.3 ~レセプションパーティーin TOKYOでひとつになりまショータイム~」は大団円を迎えた。

 2ndアルバムを完成させ、またひとつ成長を感じさせてくれたライブだった。より一曲一曲に意思が反映され、今のましのみがステージ上で進化していく、そんな感覚すらも感じさせてくれた。“今を生きる”ましのみに、未来はどのような展開を見せるのか楽しみになった一夜であった。

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