INTERVIEW

福本莉子

感情を大切にしたい――、人間っぽさを見た「あらしのよるに」


記者:木村武雄

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掲載:19年08月01日

読了時間:約7分

 福本莉子(ふくもと・りこ)が、8月3日から3日間にわたり東京・日比谷の日生劇場で上演される音楽劇『あらしのよるに』に出演する。きむらゆういち氏による同名絵本が原作。オオカミとヤギという捕食する側とされる側の垣根を越えて生まれる真の友情を描く。オオカミのガブ役を渡部豪太が務め、福本はガブと密かな友情を育むヤギのメイ役を演じる。稽古も佳境を迎えるなか、福本に取材する機会を得た。本作への思いとは。【取材・撮影=木村陽仁】

台本にびっしりと書き足された役柄の心情

福本莉子

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 そこに立つ彼女は、凛とした透明感があった。純朴な美しさ、吸い込まれるような瞳。その佇まいは絵画からそのまま飛び出してきたかのようだ。その女性こそ福本莉子、18歳。15歳の時に、沢口靖子や長澤まさみらを輩出した第8回「東宝シンデレラ」オーディションでグランプリに輝いた逸材だ。

 昨年8月公開の映画『センセイ君主』や、今年1月~3月にテレビ朝日系で放送されたドラマ『僕の初恋をキミに捧ぐ』など話題作への出演が続く。そんな彼女が今回挑むのは音楽劇『あらしのよるに』。オオカミとヤギの姿を通して真の友情とは何かを問う。小さい頃にアニメを観て「良い話だな」と感動したという彼女は演じるにあたり改めて原作と向き合った。

 「絵本やアニメを見なおして、小説にもなっているのでそちらも読みました。きむら先生が様々な派生本をお書きになっていて、その総集編のようなものが小説で。それを読んでみると、絵本よりも細いいろんなエピソードがあって、メイの心情もたくさん描かれていました。それを抜き取ってお芝居に活かしています」

 その小説からは新たなヒントを得た。

 「ヤギとオオカミは補食される側とする側という関係。それなのに、なぜわざわざ天敵と言われるオオカミと友達になるんだ、というメイの心境を理解しないといけないと思いました。小説を読んで『だからガブと仲良くなりたかったんだ』というのが理解できて」

 福本が理解できたもの――。オオカミとヤギの関係性から人間との共通点を感じたという。

 「オオカミとヤギの話ですが、人間っぽさもあるというか、共感できる部分があります。というのは、友達になってからの最初は楽しいんですよ。違う種類だし。ヤギからしたらオオカミは怖いというイメージがあったけど、ガブはそういうオオカミじゃなくて、自分の知らない世界をたくさん見せてくれる存在。ガブの方も、メイといると落ち着くというのがあって。舞台でも出てくるんですけど、ガブは雷が苦手で、友達を大切にするんです。メイからすると、自分が想像していたオオカミではなく、むしろ自分に似ている。そのギャップに惹かれて。だから秘密の友達と言っていて。特別な存在というか、“2人”とも特別な存在。でもオオカミに追われて2人で逃げて行かなきゃいけなくなって。その共同生活のなかで、ガブは動物食べるし、血なまぐさいし、そういう嫌な面も出来て。最初は楽しいけど嫌な面が見えてぎくしゃくするというか。そういうところが動物を描いているけど人間を描いているなと気がして。演じるのも私たち人間なのでそういう面も大切に描いていけたらなと思います」

 そう語る福本は、ブックカバーされた台本をおもむろに取り出し、ページを広げた。

 「私は原作に書いてある心境を台本に書き写すタイプなので、(今回も)シーンごとにメイの気持ちを台本に書いて、パッと見たときに分かるようにしています。ガブの一つ一つの表情や言葉をキャッチして、それに対して自分はどう思うのか、その時その時の感情を大切にして、それを積み上げています」

 そのページには、小説に描かれていた「心情」がびっしりと書き足されていた。もちろん福本の手書きによるものだ。役柄のバックグランドを汲み取り、心に宿す。セリフにはない「心情」だが、それを語気や表情でみせる。そうしたきめ細かい作業を垣間見た。

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