INTERVIEW

西垣 匠

フェンシングで培った本番強さ
東宝芸能が送り出す男性俳優の素顔


記者:木村武雄

写真:木村武雄

掲載:21年03月20日

読了時間:約5分

 沢口靖子、斉藤由貴、長澤まさみ、上白石萌音・萌歌、浜辺美波らが所属する芸能事務所「東宝芸能」からデビューした新星がいる。俳優の西垣匠(21)だ。女優のイメージが強い東宝芸能が送り出す男性俳優ともあって期待は大きい。「ミスター慶應2019グランプリ」を獲得したルックスと、インターハイベスト5の実績を有するフェンシングで鍛えた身のこなしで新風を起こす。

本番強さ

 フェンシングは、小学3年から大学まで勤しんでいた。高校時代はインターハイでベスト5入りし、日本代表にも選ばれた。おっとりした口調とルックスからは“剣士”の表情は想像できないが、時折見せるきりっとした目はそれをうかがわせる。

 「フェンシングは相手の目が見えないので全体を捉えながらも相手の肩に意識を置いていました。相手が剣を伸ばすときは肩から動き始めるので、そのタイミングを計るためです。試合では相手との間合いは一番大事で、自分が突ける間合いがあり、それを常に維持できるかが勝敗を決めます。それは芝居も同じで、相手の距離で声の大きさや強さを変えなくてはならないので、その経験を活かしていきたいです。最後まで諦めないことや納得できるまで練習してきた精神力で頑張りたいです」

 そんな西垣。フェンシングの試合以上に緊張する場面はなく、撮影もリラックスして臨めているという。その本番強さが芸能界入りを決めたきっかけにもなっている。

 芸能界は小さい頃から憧れていた。なりたかったのは映画監督で、自身は表に出るタイプではないと思っていた。大学進学のため18歳で出身の石川県から上京。芸能界に入るタイミングは「ラストかなと思っていました」。悩んでいた時に友人にすすめられたのが「ミスター慶應2019」へのエントリーだった。

 「このコンテストでスピーチしましたが、あまり緊張しなくて逆に楽しいなと思いました。人前に立つのは苦手じゃないのかもと。それまでは裏方をやろうと思っていましたが、そこで知らなかった楽しさに気づいて。自信がついて表に出ようと思いました」

 コンテストではグランプリを獲得。その後、東宝芸能からスカウトされた。憧れの芸能界、しかも表舞台に立つ今の状況は「不思議な感覚」といい、次々と決まるドラマ出演に「自分の理解が追い付かなくて、スピードにのれるように頑張っています」と気を引き締める。

西垣 匠

いろんなことが経験

 そんな彼が、MBSドラマ特区『夢中さ、きみに。』第5話にゲスト出演した。俳優デビューとなる役柄はいじめっ子の高校生役。デビュー作とは思えない自然体で堂々した演じぶりを披露した。

 「もっと自分に近い役柄でデビューするのかなと思っていましたが、真逆で。でも似ている部分がない分、思いっきり演じることが出来ました。口調や表情も考えて彼だったらどう座るだろう、どう弁当を食べるだろう、どういじめるのかということを考えました」

 自分にないものを作り出すのは役者の醍醐味でもある。事前に立てた演技プランが採用されないこともあったが「自分が出来る限りのことをやりました。完成したものをみると反省点ばかりで落ち込みましたが終わったらどうにもならないので、次に活かそうと思っています」と前向きだ。

 共演者から学ぶこともあった。山田章太郎を演じた望月歩。「きっと僕は毎回お芝居が変わっていたと思います。でも望月さんは全て完璧に合わせてくれて助けて頂きました」

 一方、本番に強い西垣らしさも出た。カフェラテを頭で浴びるシーンだ。「一発撮りだったので成功して良かったです。でもこの時ばかりは緊張しました」と照れる。

町田啓太に似させるため体を絞る

 MBSドラマ特区『西荻窪 三ツ星洋酒堂』では主演の町田啓太が演じる主人公・雨宮涼一朗の高校生時代を演じた。自身の性格と真逆だった『夢中さ、きみに。』のいじめっ子役とは異なるキャラクターだ。

 「自分に近い役だったのでどうやったら印象に残るだろうと考えました。自然にやると印象に残らないので、『夢中さ、きみに。』と同じように彼だったらどういう行動をとるだろうかと考えながら演じました」

 町田の高校時代を演じるともあって、町田に似させようと励んだ。撮影現場に行き、町田の芝居を見て表情を真似した。体格も似させるために体を絞った。「どの現場も学びが多くて刺激があります」

西垣 匠

共演者に刺激

 そして、SEKAI NO OWARIの楽曲「YOKOHAMA blues」のショートドラマに出演した。ABEMAが音楽を独自の視点で解釈し、そこから紡がれる物語をショートドラマ化するミュージックストーリーシリーズ『Music Story produced by ABEMA』の第一弾だ。

 「YOKOHAMA blues」の切ない歌詞とメロディに載せて、望むものは手に入れても、本当に愛する人だけは手に入れることのできなかった男による“あと一歩届かなかった恋”が描かれている。Kaito演じる「男性目線ver.」と、古川琴音演じる「女性目線ver」で構成され、西垣は古川演じる新婦の結婚相手役として出演している。

 「SEKAI NO OWARIさんの楽曲は友達とよくカラオケで歌っていて好きでした。『YOKOHAMA blues』は切ないラブソングで、もともとそういった曲をよく聞いていたので、この曲も大好きな曲です」

 Kaitoや古川琴音は今後の活躍が期待されている俳優の一人。その2人にまざって芝居することで刺激を受けている。「お二人には現場でとても助けて頂き、たくさんの刺激を頂きました。また共演できるように頑張りたいです」

 そんな西垣が目指すのは、どんな役も演じられる役者。「王道も脇役も、3枚目もいろんな役柄をこなせるような長く活躍し、愛される俳優になりたいです。フェンシングは剣技の部類に入るので、いずれはアクションも挑戦していきたいです!」

 「周りからは明るい性格と思われがちですが、実はインドア派でゲーム好き。漫画や映画もバッドエンドが好きで…」という一面も明かした西垣。そうした性格が活かされる役どころも楽しみだが、役柄を通してどのような表情を見せてくれるのか、今後に期待だ。

西垣 匠

(おわり)

【取材・撮影=木村武雄】

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