須田景凪「一人と一人という関係性と距離感を実感」追加公演初のホールライブ

　シンガーソングライターの須田景凪が14日、『須田景凪 TOUR 2019 追加公演 "teeter"』を東京・中野サンプラザホールにておこなった。この日の公演は、東名阪ツアー『須田景凪 TOUR 2019 "teeter"』のチケットが即日完売になったことを受けての追加公演となった。ボカロP“バルーン”こと須田景凪にとって初のホール公演となる。ツアー最終公演となった中野サンプラザホールでは8月21日リリースの2nd EP『porte』から2曲の新曲を披露し、来年2月29日からの全国ツアー開催もアナウンスした。【取材＝平吉賢治】

繊細とエモさのコントラスト

　須田景凪は赤いテレキャスターを構えてステージに佇んでいた。プロフィール等、ややミステリアスなベールに包まれている須田だが、ライブでは堂々と演奏する姿をオーディエンスに見せた。須田初となるホール・ライブは4人編成のバンドセットで、ソリッドなギターサウンドが刺し込まれる「Dolly」から走り出した。

　シャッフルビートに合わせたクラップが響き渡るなか「farce」へと続き、観客はスタンディングでの好反応を見せる。叙情的にメロディアスに歌う須田は深いブルーの照明に包まれ、彼の神秘的な存在感を映えさせているようだった。ハイテンポの楽曲では瞬くような演奏と歌唱をホール中に響かせた。

　MCでは「全員で良い日にできたらいいなと思っていますので、最後まで宜しくお願いします」と、須田は控え目な口調でクールにオーディエンスへ告げた。楽曲「シックハウス」では、ステージ上方から吊り下げられた5枚の短冊状のスクリーンに、1st EP『teeter』アートワークを彷彿させる花束が左右に揺れるビジュアルが映し出され、曲の世界観とマッチする光景がソフトに広がった。繊細な響きのギターアルペジオ・フレーズと須田のエモーショナルなボーカルのコントラストは、楽曲の風景を明瞭に表すようだった。

　ギターを置いて、ステージ前方でハンドマイクにてアグレッシブに歌唱する場面も。「レソロジカ」のキャッチーなメロディを歌い上げる須田の堂々たる姿にオーディエンスは刮目した。

　雑踏を音に表したようなフィールドレコーディング的なアンビエントSEのなかで演奏された「morph」では鮮明に光が咲き乱れる。これまでインサイド寄りの雰囲気を醸した会場の照明が真逆のアプローチを見せ、ライブの緩急は須田の世界観を一気に広げた。

2nd EP『porte』より新曲2曲を披露

　「新曲をやってもいいですか？」と須田がオーディエンスに伝えると、割れんばかりの拍手がわいた。TVアニメ『炎炎ノ消防隊』エンディング主題歌でもある「veil」が披露されると、アボガド6が製作したMVの映像と共に須田は四つ打ちのビートに乗ってクールなパフォーマンスを見せた。

　「mock」では勢いのある演奏を見せ、「シャルル」では清涼感溢れる歌唱を見せ、「ポリアンナ」ではオーディエンスが一斉に拳を上げる激しい空気感も醸す。印象的なギターフレーズに踊るようなアンサンブル、須田のカラフルな楽曲たちは活き活きと中野サンプラザホールに舞った。
　
　ライブ終盤で須田は、「初のホールライブでは見える景色がメチャメチャ違う」と、この日の追加公演のステージからの光景を感慨深く語った。スモークが濃艶にステージから客席前方まで包み込み、アコースティックギターの音色が煌めくサウンドのなか、須田は「浮花」を披露し、最終曲へとライブは進んだ。

　本編ラストは、8月に公開のアニメーション映画『二ノ国』主題歌「MOIL」を初披露。軽快なビートのなかで須田は、抑揚、叙情、旋律を、内から込み上げるような溢れんばかりの感情をもってフレキシブルに表現した。

　アンコールに2曲応えた須田は、MCで2019年の2月29日Zepp DiverCity(TOKYO)から始まる全国ツアーの開催をアナウンスした。会場からは拍手と共に「おめでとう！」という祝辞の声が飛び交う――。

　ツアー終了後にステージを下りた須田の表情は、清々しく、これからの未来を見据えた熱意と秘めたるポテンシャルを深く感じさせるものだった――。