Kitri「未踏の地を目指して」音楽の歴史踏まえた上で新たに紡ぐストーリー
INTERVIEW

Kitri

「未踏の地を目指して」音楽の歴史踏まえた上で新たに紡ぐストーリー


記者:村上順一

撮影:

掲載:19年07月10日

読了時間:約13分

単語を組み合わせた矛盾律

Kitri

――確かに個性がすごいですよね。今回も大橋トリオさんのプロデュースですが、どんなお話をして制作に取り組んだのでしょうか。

Mona 曲によって違うんですけど、例えば「矛盾律」は私が1人でピアノを弾いているのですが、そのディレクションもすごく細かいところまで、ご自身の曲のようにお話ししてくださったのが嬉しかったです。忘れていた、曲のポイントを教えて頂いて、そこから改めて意識して弾くことが出来たのが良かったです。最初に作っている時は覚えていたはずなのに、だんだんポイントが薄れてきてしまっていたのを思い出させて頂いたんです。本当に細かい表現まで気を使ってレコーディング出来たので良かったです。

Hina 前作「羅針鳥」に続き神谷洵平さんに編曲に参加していただいて、さらに世界観が広がって、想像以上に面白い曲になったと思いました。
私自身もギターやパーカッションなどで演奏に参加して、自分もすごく楽しめる1曲なんです。

――歌詞も矛盾を詰め込んだ、独特な世界観がありますよね。

Hina 最初、歌詞を見ないで音だけ聴いていたんですけど、珍しい組み合わせの単語が耳に入ってきて、何を言ってるんだろうと思いました(笑)。でも、歌詞を見た時にその単語の組み合わせが引っかかるんです。

Mona 私は今まで文章で物語を構築していくような歌詞の作り方をしていたのですが、単語だけでその曲の世界が見えてくるような、書き方に挑戦したいなと思いました。ありえないと思っていることも、もしかしたら思い込みで、あり得ることなんじゃないかと、固定観念をなくして作りたかったんです。

――歌詞を読んでいるだけでも自由度をすごく感じました。特に気に入っている組み合わせは?

Mona <常夏マトリョーシカ>はその組み合わせももちろんなんですけど、メロディとの音としての乗せ方も、上手くいったなと思ってましてお気に入りです。あと、<唐草模様サリー>も気に入っています。

Hina どれも面白いんですけど、私は「ジャングルで神輿」です。歌詞ももちろんなのですが、ジャングルと入ってくる言葉のアクセントが特に気に入っています。この言葉だけ強拍で入ってくるんです。

Hina

――注目ポイントですね。音にもそういったこだわりを反映されていますよね?

Mona はい。メロディの音階なのですが、色んな国や地域のスケールを取り入れて作ってみました。西洋のクラシックを学んできたので、ドレミファソラシドというスケールを使うのが一般的なんです。まだまだ勉強中なのですが、私が使ったことがない音階を取り入れて未知の国を表現出来ないかなと思いました。リズム面でもピアノで刻んでいるリズムとギターのリズム、さらに歌のリズムが違ったり自由に作りました。

――面白い響きの秘密はそこにあったんですね。続いての「目醒」も変わった曲ですが、着想はどのようなものだったのでしょうか。

Mona 歌詞を見ると、少し窮屈な感覚を持つと思うのですが、最初に自分が行きたくない、なりたくないものを描いて、そこからどう変化していくかというものを書いてみました。キーワードは個々と集団で、その対比を音楽で表現してみようと思いました。

――常にそういったことは考えていますか?

Mona どこか客観的に見ていた自分がいて、例えば大勢人がいてみんな同じ動きをしているけど、それは当たり前なのかなとか、疑問に思っていたことが曲に繋がることは多いです。

Hina この歌詞を見た時面白いなと思いました。最初、曲を作りながら描いていた落書きみたいなものを見たんです。それが棒人間みたいなものなんですけど、個と集団というのがイメージ出来ていて、制作初期段階からしっかりイメージを落とし込んでいるんだなと思いました。

――ちなみに集団行動は得意ですか。

Mona Hinaは普通だと思うんですけど、私はどちらかといえば苦手かもしれません。

Mona

――だから、疑問に思ったのかも知れませんね。この曲は変拍子ですけど、演奏は難しいですか。

Mona 難しいです。最初は7拍子でサビにあたるセクションで6拍子に変わるんです。

Hina 楽譜をもらった時にコロコロ拍子が変わるので、大変そうだなと思いました。

Mona その中で7拍子でラップっぽい、喋っているような感じで歌ったのも挑戦でした。喋りと歌を混ぜてやることに今まで照れがあったんです。

――ここにも新たな挑戦が詰まってるんですね。ライブが楽しみです。さて、3曲目の「Dear」はHinaさんが作詞ですね。これは実体験ですか。

Hina 実体験と映画や小説からヒントをもらいながら書いています。初めて1人で作詞をさせていただいたので、姉から曲をもらって悩んでいた時に、歌詞を書くというより、誰かに手紙を書く感じで書いてみたらどうだろうとアドバイスをもらいました。曲を聴いた時に切ないけどサビで高まっていく印象を受けたので、それに添って歌詞を書けたらと思いました。

――ちなみに映画で好きな作品は?

Hina たくさんあるんですけど『ローマの休日』は好きな作品です。すごく感銘を受けました。

――その景色ももしかしたら入っているかも知れませんね。なぜMonaさんはこの曲の歌詞をHinaさんに書いてもらおうと思ったのでしょうか。

Mona この曲を書いた時に、「ピアノ1本で聴かせられるバラードが出来た!」と思いました。私の歌詞は妄想や空想を取り入れて物語を書いていくスタイルが多いので、この曲は美しい言葉で物語を展開した方が良いんじゃないかなと思い、Hinaは映画や小説など沢山読んでいるので、そういったものが書けるんじゃないかなと思いました。結果、私では書けない歌詞が上がってきたので嬉しかったです。

――2人いるメリットを活かしましたね。Hinaさんは実体験も入っているとのことですが、具体的にイメージされた人はいたんですか。

Hina 具体的な人物はいませんでした。ただ、人は寂しい気持ちになることもあると思うんです、その気持ちや場所などを大きく捉えて書きました。

――その中でHinaさんが気に入っている描写はどれですか。

Hina <帰り道の歩道橋から>です。これは実際に自分が通っていた歩道橋がイメージにありました。それもあって自分にとってキーポイントになっています。聴いてくださる方たちが自分にとっての思い出の場所だったり、何度も通った道など想像していただけたら嬉しいです。

――Monaさんはいかがですか。

Mona 私は<切手のない葉書が積もってる>というところです。この部分がすごく切なさを表現しているなと思いました。きっと葉書をたくさん書いて募る思いはたくさんあるけど、それが届けられていないというのが私の中でグッと来ました。Hinaは積極的に想いを伝える感じではないんですけど、熱い想いはすごく持っているのでそれが出ている歌詞だなと思いました。

――その出せなかった葉書をずっと取っておいてあるというのもいいですよね。Hinaさんは大事に物は取っておくタイプですか。

Hina それが、私はすぐに捨ててしまうタイプなんです…。

Mona 捨てられない、断捨離出来ないのは私の方でどんどん物が増えていってしまうんです(笑)。

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