細田善彦「最初から強かったわけではない」表現したかった剣豪武蔵のリアル
INTERVIEW

細田善彦「最初から強かったわけではない」表現したかった剣豪武蔵のリアル


記者:木村武雄

撮影:

掲載:19年06月04日

読了時間:約11分

武蔵の殺陣稽古は本物を持つところから始まった

細田善彦

細田善彦

――それと、戦いのシーンでは刀の重さも感じました。

 それは剣法によるところだと思います。監督からは「ダンスではなく、斬りに行け!」と言われましたので、当てているふりではなく、気持ち的には斬りに行っている。もっと言えば、当てた後の、刀を抜くところに力を入れました。斬るよりも、斬って抜く方が重く感じると思うんです。だからそう見えたのかもしれません。

 実は、殺陣稽古が始まる時、本物の刀、真剣を使って巻藁(まきわら)を斬らせてもらったんですよ。「刀を扱うことはどういうことなのか、まずは体感しろ」という監督の意向で。実際に持ったらやっぱり怖いんですよ。でもこれを体現させてもらえたのは大きかったですね。刀を振った時に自分の足を斬らないように、左足を引くんですよね。そういうことを、本物を持って体験したからこそ、そういう細部へ気がいくようになりました。

――鞘を抜いた真剣を目の前で見たことがあります。すごく怖さを感じました。

 僕もそうです。怖くて、腰が引けました。改めてスクリーンで見てみると、別人のような感覚です。今「やれ!」と言われても出来ない。ある種のすごいのめり方をしないと成立できないと思います。撮影3カ月前から殺陣稽古が始まり、そして、撮影1カ月前からは毎日の殺陣稽古。カレンダーでいうと12月からは本格的な稽古に入り、1月から撮影、その最後の1カ月間に関しては体をとにかく大きくすることと、殺陣をやること、ただただそれだけでした。

――そういえば薪割りで上半身裸になる場面もありますが、筋肉すごかったですね。もともと筋肉質ですか?

 いや、筋肉質ではないですよ!(笑)。この作品の前に『民衆の敵〜世の中、おかしくないですか!?〜』(フジテレビ系、主演・篠原涼子)というドラマに出ていて、役どころが市長の私設秘書で、同僚にはめられてショックで自殺するという。その時は痩せていて、体重は63キロぐらいでした。それが8月ぐらい。その後に三上監督にお会いして「武蔵をやろう」ということになって。そこから体を作っていって、武蔵の時は80キロぐらいでしたね。

――17キロ増量! 胸筋もすごかったですね。

 松平さんや目黒さんは、着物の着方が格好良くて、厚みがある。着物を着るために生まれてきたんじゃないか、と思うぐらい。お二人に限らず、今回出演された方々は長年、時代劇をやってこられて、皆さん着物姿が格好良い。そこに乗り込んでいくわけですから、負けないように体を作りました。筋トレはもちろんですが、11月から鶏肉を1日1キロは食べていました。毎日、鶏むね肉…きつかったですよ(笑)。撮影が終わってしばらくは見たくありませんでしたね(笑)。

――食べる、ということでは畑に出来た大根を食べるシーンもありました。

 あれは監督が育てていたんですよ。すごく甘くておいしかった。大根だけじゃなくて、その当時にあった近いものをいくつか育てていたようです。スーパーで買ってきた大根をひゅっと埋めたのではなくて、ちゃんと育てていたという。そのこだわりがすごいですよね。しかも、あの畑一面分ですから。その細部のこだわりは素晴らしいと思いました。

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