ましのみ「学ぶことが沢山あった1年」変化した音楽への姿勢
INTERVIEW

ましのみ「学ぶことが沢山あった1年」変化した音楽への姿勢


記者:村上順一

撮影:

掲載:19年02月19日

読了時間:約13分

いつも以上に私がしっかりしなければいけない

『ぺっとぼとレセプション』初回盤ジャケ写

――それは楽しみですよね。そして、今回「Q.E.D.」と「夢ノート」という音楽活動を始めた当時の楽曲も収録されています。この「Q.E.D.」は何の略なんですか。

 ラテン語で「証明完了」という意味の言葉で、数学の答えを導き出した時に最後にQ.E.D.(Quod Erat Demonstrandum)と書くんです。でも、楽曲は証明完了出来ないということを歌ってるんですけど(笑)。

――そこは、ましのみさんらしいですよね。「夢ノート」は音楽活動を始める時、一番最初に出来た曲みたいですね。

 はい。でも、この曲を歌うのが恥ずかしいなと思っている時がありました。というのも、何も考えずに出来てしまった曲なんです。三田祭(慶應義塾大学で毎年11月23日前後に例年4日間行われる学園祭)のテーマソングに選んで頂いたということもあって、最初は大事に歌っていました。でも、「Q.E.D」あたりから音楽性が変わり始めてきたんです。考え方も変わってきたこともあって「夢ノート」を歌うのは恥ずかしいなって…。時が経てば大丈夫なことってあるじゃないですか? デビューしたあたりからは、あの頃の私がいるから、今の私がいるんだと思えているので大丈夫なんです。そして、今大学4年生になって、三田祭の同じステージでこの曲を歌えることになって、それが凄く感慨深かったです。

――当時の思い出が蘇りますね。

 初めに三田祭に出れた時はファンの方の投票で出演することができたんです。実行委員の方が選抜して、そのあとはTwitterでの投票で決まるんです。あの時に応援してくれた人がいたから、今があると思ったし、その時の感謝を込めて来てくれた人に「夢ノート」を配りたいなと思って。でも、その時のままじゃなくて、1番はそのままなんですけど、2番では今の気持ちを綴りました。それをリリックムービーにして、三田祭で配ったんですけど、来れなかった人にも聴いて欲しいなと思って、今作のボーナストラックとして収録することになりました。

――そういった想いがあったんですね。最初は「AKA=CHAN」がボーナストラックの予定だったと聞きましたが、「夢ノート」になったんですね。

 最初はその2曲をボーナストラックにする予定だったんですけど、「AKA=CHAN」は昇進しました(笑)。「AKA=CHAN」は<I want to be a baby >ということを言いたかっただけなんです。私はこの赤ちゃんになりたいというのは、核心をついてるなと思っていたんですけど、周りからはあまり共感されなくて...。でも、私はこの言葉が核心を突いているという自負があったので、この曲は本編の最後だと思いました。

――今の知識や経験値のまま赤ちゃんに戻りたいですよね。「AKA=CHAN」は宮田“レフティ”リョウさんのアレンジがまた良いですね。

 そうなんです。エレクトロなSuchmosさんみたいな感じにしたくて。最初にイメージがあったので、自分が打ち込みでデモを作りました。そこから宮田さんにブラッシュアップして頂いて。

――パンチのあるナンバーに仕上がりましたよね。さて、今回「タイムリー」で歩く人さん、「コピペライター」でGuianoさんが参加されていますけど、このお2人に頼んだ意図は?

 私の音楽がボカロ系と合うのではないかと、私やディレクターさんも含め以前から思っていて。私はボカロがニコ動で流行っている時代から聴いていたわけではないんです。ある時、勧めてもらってから、ボカロ系の歌詞やメロディ感が好きなんだなと感じて。今回、歩く人さんは同い年で、Guianoさんは年下なんですけど、同世代の人と新しいことをしてみたいという欲望が出てきました。ファンクラブサイトの撮影でジャケットの撮影もしていただいた、同世代のカメラマンさんに撮ってもらったのがきっかけで、すごく刺激的だなと思いました。なかなか同世代の方とお仕事をする機会もなかったので。それで、スタッフさんと一緒にSNSで探して、良いなと思ったのがこのお2人でした。これは挑戦だったんですけど、この中で学んだこともめちゃくちゃありました。

――その学んだこととは具体的などうのようなことですか。

 同世代、年下の方とやってみて、今までとは違って、いろんな知識を私自身がしっかり持たなければいけないということを実感しました。今までも横山裕章 (agehasprings)さんにアレンジなど手伝っていただいていたんですけど、横山さんは私の好みを聞いて下さって寄り添ってくれるんです。こういう感じが良いと話せば、すごい沢山アイデアを返してくれちゃうんですよね。

――トッププロですからね。

 そこに甘えてしまっていて、私は伝えるということがあまり上手じゃないんだなと今回気付かされました。私のイメージを伝えるという部分で「コピペライター」は結構大変で、Guianoさんと10往復ぐらいしたと思います。自分の知識やスキルを顧みることになり、めちゃくちゃ勉強になりました。それが向上心にも繋がりました。そして、音にもすごく興味がでてきたんです。昔よりも音に対してのこだわりが、どんどん強くなっていっているのを感じています。サンプリングした音や加工された音が好きなので、自分でも今後サンプリングしてみたいなと思いましたね。

――それは大きな変化ですよね。

 今までの自分だったら思わなかったことなんです。そういった思いが出てきたのも、自分で舵を切らなければいけない、一緒に仕事をする人に上手く伝えてやっていかなければいけない、自分が中心にいるんだということを芽生えさせてくれた2曲なんです。

――制作しながら成長していった部分も多分にあって。

 そうなんです。あと、同世代の方が作ってくれた音が刺激的でそれがすごく楽しかったんです。「こんな音作るんだ!」みたいな。それに対して「私も!」となっちゃって。

――良い相乗効果が生まれていますね。さて、最後に2019年の目標を教えてください。

 目先の目標だとこのアルバムでご一緒した同世代の方や、まだやったことのない人たちと
面白いことをやってみたいです。あと、今も自分で打ち込みとかはやっているので、今度は景色に合う音をサンプリングしにいったり、そういう音から曲を作ってみるというのは、今後絶対にやってみたいことのひとつです。

 この1年間は戦うということが大きかったので、楽しむということを忘れてしまう瞬間もあった気がしました。でも、楽しんでいても私からは戦う姿勢やハングリー精神というものは消えないとわかったので、2019年は目の前のことを楽しみながらやっていきたいなと思います。変わらず今年も勝負の年だなと感じています。

(おわり)

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