リード曲「アウト・オブ・タイム」はパーソナルな楽曲
――「アウト・オブ・タイム」はアルバムの中でも重要な1曲ということですが?
この曲はレコーディング開始の数日前に書き始めて、前日に完成した。スタジオに入って、最初にレコーディングしたのがこの曲なんだ。もちろんバンドはそれを知っているはずがないよね。彼らは他の曲の準備をしてきていたから、“知っている曲から始めようよ”と言われた。だから僕は“いや、知らない曲から始めよう”と答えた。そんな風に作業を始めて、僕は手応えを感じたよ。
レコーディングでそのエネルギーを捉えることができたと思う。歌詞のことでいえば、これはとてもパーソナルな曲だ。その頃、この世を去った友達のことを思いながら書いた歌詞なんだよ。
――どんな風に出来上がっていったんでしょう?
「アウト・オブ・タイム」はフランスのマルセイユで書いた。リスボンに向かう途中で、
1人でホテルに泊まっていたんだ。実際、書き始めたのはポルクロール島という島だったけど、そこで曲を書き始めてマルセイユで仕上げた。
また(アルバムに収録された)「カルーセル」という曲は一気に書き上げた。バルコニーに座って、ギターを弾きながらひと息で仕上げたインストゥルメンタル曲だ。曲を作ったことを覚えていないってことも時々ある。
なぜかわからないけれど覚えていない。会話でもそういうことあるだろ。過去に言ったことを覚えていないみたいな…。“あの時、こう風に言ってたよね”と言われても、覚えていないんだ。そういう感じ。
――「アウト・オブ・タイム」は曲を書いてすぐにレコーディングしたということでしたが、しばらく寝かせておくみたいな方法をとることはありますか?
どちらかというと急ぐ方だね。最近2つのプロジェクトでいろんな人と一緒に作業していたんだけど、何度かスローダウンしてもう少し練ったほうがいいよ、と助言されたよ。まあ、どっちのやり方もいいと思うんだ。状況によるよ。
ブライアン・イーノは、一度曲を書いたら、できるだけ早くレコーディングしたほうがいいという考えだと聞いたことがある。僕も、そこにかなりのメリットを感じる。
曲を覚える前のフレッシュで新しい何かを捉えられるからだよ。曲を覚えてしまうと、自然と生まれてくるようなパフォーマンスができなくなる。すべてではないけど、初期に自然発生するものは確実に失われる気がするんだ。
曲を書き終わった時の、自分でもまだどう演奏しようかはっきりわからない感じがいい。
曲をよく知り、自分では違うと思っていても体に染み込んでしまうと、魅力が少し失われてしまう。急ぐ理由はそこなんだよ。
(おわり)