ジェシー・ハリス、ノラ・ジョーンズに提供 運命を変えた名曲誕生秘話
INTERVIEW

ジェシー・ハリス、ノラ・ジョーンズに提供 運命を変えた名曲誕生秘話


記者:編集部

撮影:

掲載:19年02月16日

読了時間:約8分

「ドント・ノー・ホワイ」はフェリーニ映画からも発想を得た

――あの有名な「ドント・ノー・ホワイ」は、あなたの中でどんな風に生まれてきた曲なんですか?

 あの曲は、実はいろいろな段階を踏んだ曲なんだよね。まず最初は曲とメロディーができた。歌詞は当初“あなた”を主人公にしようと考えていた。だけど、結局、“僕(私)”を主人公にした歌詞になって、よりパーソナルになった。パーツによって、いろいろな段階があったんだ。

 例えば1つのパートでは知り合いのことを考えていた。そして別のパートでは、フェデリコ・フェリーニ監督の映画『道』(1954年イタリア映画)のラストシーンのことを考えていたのに、他のパートでは、また別の人のことを考えていた…みたいにね。数週間かけて、少しずつ歌詞を完成させたんだ。

 いろいろなインスピレーションが混じっているという訳だ。要するにパズルみたいに仕上げていった曲なんだよね。

――「ドント・ノー・ホワイ」をセクシュアルな楽曲という人がいますが、その意見をどう思いますか?

 わからなくもないけど、そういう意図で書いたわけじゃない。でも、どう解釈するかは聴き手の自由だと思ってる。「歌」というものがすばらしいのは、人によって受け取る意味が違っていいということなんだ。もしセクシュアルな意味があるとしたら、歌の奥深くにそういう要素が隠れていたのかもしれない。ただ僕自身は歌詞を書いた時に、そういうことは考えていなかったけどね。

――この曲でグラミーの最優秀楽曲賞を受賞しました。以降、あなたに曲を書いて欲しいというオファーがたくさん来たと思いますが?

 確かにオファーはたくさん来たよ。ただそれは、僕が期待していたようなオファーではなかったんだ。みんな僕が書きためた曲を欲しいんだと思っていたんだ。だけど僕が受けたのは、ほとんどが共作のオファーだった。当時は、そのコンセプトが理解できなかったんだよね。

 もちろんそれまでにも共作経験はあったけど、それはわずか数人で、しかも同じプロジェクトで活動している人だった。知らない人と一緒に曲を作り始めるなんてやったことがないし、意味もわからなかった。今はやり方を学んだよ。業界は自分が思っていたのと違う、と気づくのに結構時間がかかったんだね。

 とにかく「ドント・ノー・ホワイ」以来、多くの人が僕の曲をカバーしてきた。そもそも当時の僕が期待していたのはそういう事だった訳だけど、それって実は古いスタイルの音楽ビジネスなんだ。僕の前の時代、60年代とか70年代、もしくはそれより前は、“君の曲を歌わせてくれない?“と頼んだものだよ。そして、送った曲を歌手がレコーディングする…。

 でも“ある歌手がいて、君と共作させたいんだけど…”というのは新しいコンセプトなんだ。音楽業界でそういうビジネスモデルが普及したのは、近年になってからだ。今はそのモデルが主流だし、むしろさらに進化している。以前はソングライターとプロデューサーは別だった。けど今は、ソングライター兼プロデューサーだ。プロデューサーが、自分がプロデュースするアーティストと曲を共作する。ゲストもたくさん使うようになった。ソングライター兼プロデューサーというのは新しい枠組みだ。

 でも誰かとコラボレーションするのは好きだよ。実際これまで僕にたくさんの新しい経験をもたらしてくれたんだから。

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