会社員役は「一般常識に入れるという喜びがあった」
――昨年末は『NHK紅白歌合戦』への出場、大変お疲れさまでした。どうでしたか、あの大舞台で演じられた感想は?
もう夢のような世界でしたね、待ち時間も長かったですけど(笑)。でもそれも含めて、結構緊張のあるステージでした。パフォーマンスをしている時は意外に緊張しなかったんですけど、そこに出るまでの準備とかで、結構緊張していました。歌やダンスはずっとこれまでの公演でもやってきたことなので、それほどでもない感じだけど、リハ室からいざ本番という時に、NHKホールまで歩いている時のほうが緊張した、という記憶があります。
――それは大変でしたね。でも今回この大舞台に出られたということに対して“今までやってきたことが報われた”という達成感もある感じなのでしょうか? 『NHK紅白歌合戦』は、なかなか出られる舞台でもないですし…。
そうですね。ミュージカル『刀剣乱舞』としては、目標の一つとしていたところでもあるし、ご縁があって今回出場させていただいたこともあって念願が叶ったというか。同時に“夢って叶えられるんだな”と実感できた瞬間でもありました。
――では、年も越えて次の目標も考えなければいけない時期ですね(笑)。ミュージカル『刀剣乱舞』としては、日本武道館など大きな会場でのライブ公演もありました。でもこれから個人として黒羽さんがクローズアップされていくという意味では、今回出演されたドラマは、すごくいいタイミングで始まるような気もします。
そうですね、1月から。まあ“別のところで盛り上がるだけ盛り上がらせていただいた勢い”を、ちょっとお借りしつつ、というところもあると思いますが(笑)
――もちろん黒羽さんのことをご存知の方は舞台とは違う黒羽さんを見られることを楽しみにしていると思います、一方で今回、連続ドラマ初主演ということに対しての気持ちはいかがでしょう?
実は途中まで自分がドラマ初主演だったということに気が付いていなくて(笑)。主演なのはもちろん知っていたんですけど、ドラマでは初めてなんだって。
今まで映画とかもやらせていただいていましたが、今回はそんなことに気づかないくらいリラックスして臨めた作品だったので、よりナチュラルに「おかずくん」の世界の住人、主役の西尾和として生きられたかと思っています。変にプレッシャーとか“俺が俺が”みたいな気負いがなかったのは、良かったですし。
――そうでしたか。主役だと「座長」みたいな立場はついて回るかと思いましたが。例えば作品の第一話のストーリーからして、結構役柄から周りに挟まれる羽目になったり…(笑)
そうですね、いろいろ大変な目に遭うという…ワチャワチャと個性豊かな方々に囲まれて、揉まれていくというか…。
――でも黒羽さんご自身としては、意外とああいった立場になっても、結構ススっとすり抜けていくような性質もあるのかと(笑)
そうですね。逃げるほうですね、僕の立場としてはうまいこと深くかかわらないように生きて(笑)。トラブルの輪にはなるべく入らないように。
――輪に入らないというのは、どちらかというとマイペースで、素のままの自分でうまく渡り合っていく感じで?
そうですね。それかもしくは、どちらかというと僕が輪を乱しているというか(笑)。まあ、それが得意な人はあまりいないと思うけど、僕はあまり基本的に人に合わせるのが苦手で、自分の時間軸でいろんなことをやっていきたいタイプなので。
――ではこの「おかずくん」とご自身の共通しているところというのは?
真面目さと、一生懸命さというのは…あったら嬉しいかなと(笑)。あまり自分で“真面目な人間です”とは言い辛いので(笑)。でも多分、僕は真面目な人間だと思っています。真面目だし結構物事に取り組むにあたっては一つのことしかできない、すごく不器用なので、一生懸命向き合うこと以外はできないと思っているし。そんなところは、一緒だったら嬉しいなと。
――ではそういう部分がドラマで出せて、皆さんに希望が与えられるといいですね。ドラマ的にも、やっぱり“社会人として生きていくところの苦労話”的なところは、毎回テーマとして上がる格好になると思いますし。
そうですね。あ、それで一つ思い出したんですが、実は僕、これまで名刺を出したことがなくて…。
――それは今回、役を演じる中でなかなか貴重な体験でしたね。
“初めで名刺を出した!”って、自分の中で勝手に感動していましたね(笑)。
――そもそもスーツを着られたり…。
確かに少ないですね。まだあまりそういうものを着て表に出る、というのは…まあ会社員というのは、どちらかというとそんなに多い経験ではないので。
――普通の社会人になるというのは、例えばオファーを受けた時には、どのように思いましたか? 今回はパソコンに向かってスーツを着て、って…。
普通はこっち側なので、演じるというか。まあラケットや刀を持つこと自体のほうが、特殊といえば特殊だし(笑)。普通にお芝居をするというのは、普通の人を演じていくということのほうが多いだろうし。僕はたまたまそういう漫画やアニメなどの原作ものを多くやらせていただいている、非日常のことをやらせてもらうということが結構多いですけど、本当に普通の俳優さんからしたら、普通のことをやっているので…。
――あまり違和感みたいなところは?
特にありませんでしたね。でも僕の人生としては、やっぱりスーツとか会社員というのは、経験としてはなかったので、一般常識に入れるという喜びはありました。
――“喜び”ですか?
ありましたね。普通の人が、まあ僕の同級生とかもそうですけど、デスクワークをしていたりすることに対して、“こういう感じなのかな”というのが垣間見られて。会社員というか、会社で働くというのを、自分のデスクがあって、上司からやんや言われて(笑)、クタクタになって帰るというのを経験できたということもですね。
――では、例えば役者の道に進まなかったら、俺はこんな感じになったのかな? みたいなことも?
それもあったかもしれませんね。でも実は僕、以前は教員になりたかったんです。
――学校の先生ですか?
体育教師に。あまりチョークを持って黒板に向かって、というのは苦手なんですけど、体育だけはすごく成績が良かったんです。
――得意なスポーツとかは?
野球が好きで、クラブ活動でプレーしていました、ポジションはピッチャー。だけど途中で肘を壊しちゃったんです。だから高校生の時にできなくなっちゃって…。それで、芸能を始めたんですけど、それまでは体育大学の学校案内とかにも行っていましたし、そっちの道に行こうとしていました…。まあ、自分の目標はまだ漠然としていましたけど。
――そうだったんですか? それは高校時代に大きな分かれ道を経験されましたね。
今、まさかこうなるとは…(笑)