音楽はなくならない
――ご自分の世代について思うことなどはありますか。
私は今35歳なんですけど、高校生の時期はルーズソックスからハイソックスになる時代でした。PHSもポケベルも知っているんですよね、世代的に。バブルもギリギリ知っているみたいな。ただ大人ではなかったので、バブルの恩恵は受けていないですけど。だから色々なものを経て、時代の移りかわりを結構見ているんですよね。ただ「覇気がない」とか「キレる10代」とか言われた世代です。あとギリで肉食男子がまだいるくらい(笑)。
だから色々なことに関して受け入れる体制は出来ていた世代じゃないですかね。でも、変化って急に起きるわけではなくて、おだやかに流れていくことでもありますから。棒みたいな携帯から始まって、2つ折りの機種が出たり、カラー液晶になった時の感動ですよ。あとは着メロ(笑)! そういう時代を経てきましたね。
――それでも音楽の作り方はずっと変わらないわけですか?
小6から変わらないですね。ただ向き合い方は変わってきます。最初に作った曲は「向日葵」なんですけど、この曲に関しては、空想の世界で歌っているんですよね。もちろん好きな男の子が昔いて、その経験が混ざっているのは変らないんですけど。歌詞は私的に屋根の上の出来事の話なんですよ。
当時、私の家は近所で一番屋根が高かったので、友達と屋根の上に乗ってお菓子を食べたり、漫画を貸してもらって読んだりしていたんです。その時間がすごく好きだったんです。だから「向日葵」は好きな男の子と女の子が屋根の上でお話をしているという、私の中の絵本やストーリーを曲にしました。私、子どもはいませんが、自分の子どもに歌っても通じる内容だなとも思うんです。これが12歳と35歳の差なのかもしれません。
――年下が現場に増えてきたという話もありましたが、世代差は感じますか。
みんなしっかりしていますよ。頼りっぱなしですよね(笑)。新しい情報を入れる事に対する抵抗の無さはすごいなと思います。調べることが身に付いているので、ある意味で即戦力なんですよ。私なんかもやっと最近調べるということが身に付きましたけど…。Tik Tok(スマホアプリ)とか、私は全然ついていけないです。でも、若い子たちは「こんなの出たんだ、使ってみよう」くらいじゃないですか。すごく良いことですよ。偏見がないということだと思うので。
――逆に屋根で遊ぶ、という概念が理解できなかったりもするのかなと。
確かに。私は屋根に上るのが大好きで、周りが畑で、空も近かったです。今はさすがに抵抗がありますが、中学生くらいまでは屋根の上で好んでぼーっとしていました。他にも女の子同士で相撲を取ったり、地域の子みんなで遊んでいました。年上とか年下も関係なかったです。そう考えると、やっぱり自分が昭和生まれなんだなと感じます(笑)。若い方がこの歌を聴いて、どういう景色と当てはめるのかは聞いてみたいです。
――スタッフと言うと、「物販チームが全員女性だった」という様なことをSNSで発言されていましたね。
ミュージシャンは圧倒的に男性が多い様な気がするんですよね。こういう取材の場だと半々くらいですけど。ストリングスのチームや、あとはベースのTOKIEさんくらいですかね、現場で一緒になったことがある女性は。下手したら、私だけ女性であとは男性という感じなので、新鮮ですね。みなさん私より年下だけど、新しい感覚も持っていて。なんて可愛いチームなんだろうと。
割と最近の方って、いい意味でフランクな感覚もあるじゃないですか。年上だから、とかそういうこともないので全然やりやすいです。「いいっすね」て言われると「いい!? 本当!?」って思ったりとか(笑)。私はフレンドリーに来られた方が、こういう性格なので楽なんですよ。とは言え、私の周りの人は年上に対しての行動もちゃんとできていて、そういう感覚の使い分けも器用ですよね。色々な情報があるから器用なのかな。
男性多めのチームでも気は使わないですけど、考えてみると女性との方が気を使わないですね。感覚が合っているということかもしれません。みなさんが合わせてくださっている可能性もありますが(笑)。ワイワイお菓子食べたりとか。
――そういう意味ではデビューからの15年で現場の空気感や、社会も変わったと感じますか。
CDが売れない時代になりましたもんね。デビューした頃はまだミリオンとかありましたから。今だと「ミリオンって?」という感じ(笑)。当時の自分の売上を見ると、今どれほど上位のランクになるんだ、というくらいの枚数に匹敵しますよ。最近はCDも作らない人もいるくらいですからね。そういう時代が来るだろう、と思ってはいましたけど、来ましたね。だから、この先15年で一体どうなっていくのでしょう。
でも、音楽はなくならないと思います。私はそこまで先見の明がないのでわかりませんが。ただ壁画とか書いていた時代から、太鼓を叩いてたくらいですから、音楽はなくならないんだろうと。ただ確固たる自分の自信があるので、曲を作るという意味においてはどんな時代においてもブレずにいられるかなと思っています。ただ15年活動して、また「高鳴り」を覚えることができたのは、とても嬉しいことです。
――この次にやりたいことのイメージなどは?
「同世代の方とたくさんお仕事をしてみるのが楽しいかもしれない」というのと「いいな、と感じる人とお仕事をして新しい音に出会いたい」というイメージがありますね。それが今やりたいことです。
――11月には『笹川美和 Concert 2018 〜春待ち月唄会〜』も迫っています。
このベストアルバムを引っさげて、という形になるとは思います。でも往年のファンの方も、新曲から私を知ってくださった方も楽しめるものにします。楽しみにしていてください。
(おわり)