音楽はなくならない、笹川美和 デビュー15年を迎えてもブレない信念
INTERVIEW

音楽はなくならない、笹川美和 デビュー15年を迎えてもブレない信念


記者:小池直也

撮影:

掲載:18年10月31日

読了時間:約14分

35歳になったから書けた新曲

笹川美和(撮影=片山拓)

――新曲「真実の雫」の歌詞からはデビュー15周年の歩みも感じました。<孤独の意味を知る>という一節もあったり。

 孤独は…感じちゃいますよね(笑)。どこかしら自分の心情をリンクさせないと曲を作りづらいところもあるので、「15年を経た今、こうありたい」という自分の心を重ねたところがあります。本当の孤独とは程遠いかもしれませんが。ふとした瞬間に孤独なんて、そこらじゅうにあるじゃないですか。そういう時に誰にもすがれなくて。どうしたらいいのかと自分で考えて活動してきた様なところもあります。

 ただ孤独の時って、頭が冴える気がするんですよ。冴えているがゆえに、余計なことを考えて孤独になるのかもしれません。麻痺していれば、孤独になりずらいとも言えるかも。でも、孤独だと感じる瞬間があるからこそ、家族の有難みとかが分かるんです。だから必要な経験なのかもしれませんね。

 きっと誰かと繋がっていたい時期と、ひとりになりたい時期があるんじゃないですか。その繰り返しだなと。10代でこんなことは知らなくていいと思いますが、年齢を経て各々が知っていくことなんですよね。だから「真実の雫」も35歳になったから書ける曲なんだろうなと感じています。

――前回のインタビューでも「<笑え>と命令形でデビューした」と語られていました。

 あの強気加減が今出せるかわからないです(笑)。今聴いてもデビュー曲「笑」は元気ですよね。あれだけ情熱的に、ガーって落ち込めて、ワーって半分怒りもあって、憎しみもあって。今はなるべく心を穏やかにしたいと思うし、憎しみなんてないように何とかしようとします。あの時はやはり体力があって元気なんだろうなと。

 歌い方がまだ未熟だったのもあって、デビューの頃は「発散!」という歌い方をしているんです。今は「『笑』の歌詞を届けたい」という、母性ではないと思うのですが、温かくてドシっと歌いたい気持ちに変わってきました。「金木犀」も「ただ、しとしと好き」という感じで歌う様になったり。感情の面では変わりますよね。受け取り手がどう取るかは分からないですけど、歌っている側はあの元気な頃とは違うと感じています。

――歌詞の解釈の変化などは?

 もちろん変わります。改めて気付くことがあるんですよ。「ああそうか、今の感情をよく言葉にしてたな」と思うこともあって。当時は絶対そんなことを考えてはいませんでした。ただただ目の前の対象に向かって歌っていただけです。それから今はまったく違うことにも置き換えて「答え持ってるじゃん」と感じることもありますよ。特に初期の頃の曲にそういう気持ちを持つことが多いです。

 作り終わってからだったり、レコーディングの後に、「なぜ、この世界観ができたんだろう?」と思うことがよくあるんですよ。逆に「これは今もう出せないな」と思ったりも。だから、その時その時で頭にストックしていたものが、ピアノの前で出てきたりするのかなと。今見ているものが何年か後に歌詞として出てくることもありますし。そういうことが大事なので、景色を見たりとかは意識してやっているかもしれないですね。

――最近は東京の街が好きになったとか。

 そうなんですよ。お友達が増えたのもあって、それが大きいですかね。あとはバスや電車に乗れる様になったり。最初の頃は全然わからなかったので、遊びに行きようがなかったんです(笑)。今ってスマホのアプリのおかげで結構何とでもなるんですけど、デビュー当時はガラケーでした。ここまで便利ではなかったので、あまり東京も知らなかったんです。

 でも電車とバスに乗ると地理もつながったりするじゃないですか。東京のこの景色もいいものだなと思うようになって。だから、もしかしたら新潟の夕暮れよりも東京の夕暮れの方が物悲しいかもと思うこともあります。その物悲しさが好きだなと。

 私が住んでいるというのもあるかもしれませんが、新潟だと夕暮れを見ると「この後家族とご飯が待っている」と思うんです。でも東京だと個人的にお仕事の場ということもあってか「孤独を感じる時間帯だな」と。それは嫌いじゃなくて、すごく美しいなと感じます。みんなが無表情で帰路に向かう瞬間とかも「この後帰ると誰かが待っていたりするのかな?」とか色々と想いを膨らませたりなんかもしたり。

――それは今だから思えることですか?

 そうですね。デビュー当時は東京がしんどくてしんどくて。ただただ都会にしか見えないんですよ。あとはお仕事の場。でも今は友人たちのおかげで、生活している人がいて、時間の流れがあって。これはこれで愛しいものだなと思っています。サポートミュージシャンの皆さんも年が近くなってきて、ご飯に行きやすくなりましたし。過ごしてきている年数が一緒なので、悩みや嬉しいことが分かり合えるんですよ。それも楽しくて。

 デビューが早かったので、周りの方が父親の年齢に近いのが基本でした。今はスタッフさんが年下だったりするので、色々と考えますね。「15年いたんだ」みたいな。やっぱり同世代のよさってあるなと感じます。

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