篳篥に合うものを選曲、東儀秀樹 新譜で見せた自身の変化とは
INTERVIEW

篳篥に合うものを選曲、東儀秀樹 新譜で見せた自身の変化とは


記者:村上順一

撮影:

掲載:18年09月05日

読了時間:約13分

「君が代」は雅楽のメロディ

東儀秀樹(撮影=冨田味我)

――今作はシネマというひとつのコンセプトがありましたが、次のコンセプトも考えていますか?

 実は何も考えてなくて。多分これが皮切りになって『ヒチリキ・シネマ』の続編もいずれ作ると思うんだけど、それはいつでもできることだと思うんです。今なら2020年に東京オリンピックがやってきて、世界的に日本が注目されると思うので、もっと王道の雅楽っぽい日本的なものを出してもいいんじゃないかなとか、色んなことを考えています。

――その東京オリンピックでは東儀さんの演奏を期待してしまいます。

 どうしても意識しちゃいますよね。やっぱり日本の文化というと誰もが真っ先に想像するのが江戸の雰囲気なんですよね。音楽にしたって尺八、三味線、琴で、5音階で和音階そのものなんだけど、実はもっとグローバルな音階が雅楽にはあって、江戸時代よりも800年も900年も前にグローバルな雅文化があったということがあまり取り上げられない。「和」というと「わびさび」はみんな言うんだけど「雅」を言う人はいないんです。わびさびは僕も大事だと思うし、そこに「雅」も揃って、全てを見て日本と知らせることがここから2、3年必要なことなんじゃないかと思っているんです。そうすると雅楽の楽器で「雅」というのを意識した日本文化のきっかけを作りたいと思っています。

――「雅」って難しそうですよね。

 難しいです。それを削ぎ落としたものが「わびさび」でしょ? 繊細で豪華絢爛というのが「雅」だから、海外の人がお寺で禅とかに夢中になる人が多いけど、実は凄く繊細できらびやかでゴージャスなものもあるんだというところを…それをどうしたら良いかというのはまだ具体的ではないけれど、そういうのを考えていればまたスッと形になるんだろうと思っています。

――そうすると東儀さんのキーワードは「雅」ですね。

 「雅」ですね。でも東京オリンピックって東京、つまり江戸じゃないですか? だからわびさびが中心になっちゃうと思うんだけど、もっと日本という広い意味で見てもらったときに「雅もあるんだ」という位置付けを僕なんかが表現する立場なんじゃないかなと思っています。

――「和」の部分だけだったら他の人でもできるかもしれませんが、「雅」となると東儀さんしかいないのではないかと思います。

 僕も自分しかいないだろうと思っているんですよ(笑)。あと「君が代」は雅楽の様式で作られている曲で、「君が代」は、実は雅楽のメロディだったということもほとんどの人が知らないから、だったら2020年のオリンピックの表彰式に流れる「君が代」は雅楽バージョンで聴かせたらどうかなと僕は思っていて。あるいは開会式に真っ先に東儀秀樹が「君が代」を吹くことを考えてもらえたらと思っているんですよ(笑)。

――過去にはバスケットボールの試合で「君が代」を篳篥で吹かれていましたよね?

 ありましたね。あれを思いつく人がいるんだから、ここで「君が代」って一体何だったんだ? ということを改めて考えてもらってね。実際に「君が代」は雅楽師が作ったメロディだから「じゃあ東儀秀樹じゃないか!」ってなんないかなと(笑)。

――雅楽という言葉が出てくればきっとそうなりますよ。その部分があまり知られていないだけで。

 そういうことはジャーナリズムで発信してもらって、そういう風に知れ渡ればいいなと期待しちゃいますね。

(おわり)

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