篳篥に合うものを選曲、東儀秀樹　新譜で見せた自身の変化とは

今一番好きなギターはSG

東儀秀樹（撮影＝冨田味我）

――「映画『ゴッドファーザー』〜愛のテーマ〜」ではかなりギターがフィーチャーされています。どのようなイメージで演奏されたのでしょうか。

　「ゴッドファーザー」は70年代ロックっぽく、それをストレートにやろうと思ったんです。僕のイメージはハッキリと70年代ロックだったから、僕より上手いギタリストを呼べば簡単に済むんだけど、それで微妙なニュアンスが崩れるくらいだったら自分が弾いた方が良いやと思って、今回も全部自分でやっています。

――ギターは何を使用しましたか？

　今回はギブソンのレスポールを。

――ギブソン系かなとは感じまして、SGなのかなとも思ったんです。

　今一番好きなのがSGなんです。ストラトが大好きだった時代もあったし、やっぱりレスポールだなと思ったこともあったんだけど、今は病気のようにSGにハマっちゃって。毎日ネットでSGを探して…すでに持ってるのにね（笑）。SGって色んな種類があるじゃないですか？　シングルコイルだったりピックガードが違ったり。

――東儀さんは相当な数のギターを所有されていますよね？

　ええ。何十本も持ってます。自宅の倉庫にいっぱい入っていて、あと自宅スタジオの壁にも並べてあっていつでも弾ける状態です。なのでギター愛は強いですね。ツアーでもバンドで一緒に行くからギターの方とずっと話をするのが面白くて。時々ギターを弾かせてもらったりしてギターを楽しんでいますね。

――もしギターを１本しか持っていけないという状況にあったら何を持って行きますか。

　そうなったらレスポールなんだと思います。SGが好きだと言いながらも、結局完成度が高いギターはレスポールだと思うし…ストラトも好きなんだけど。

――さて、「コーリング・ユー 」についてですが、イントロから美しい音色が聴けますが何の楽器でしょうか？

　あれは琴のイメージで色んな楽器を組み合わせています。琴も自分で弾いいてしまおうかなと思ったんだけど、この曲だとけっこう音域の幅も広くて普通の13弦の琴だとカバーできないから、これは琴の音色を意識したシンセの音を作ろうと思って、エレピの音と琴の音源と組み合わせて音を作りました。あの伴奏のコード感は凄く不思議で綺麗な曲だから、音の運びやコードの進行は原曲のままいかなければなと思いました。そのかわり音色にこだわってみようと。

――さて、「風のかたみ（映画『風のかたみ』より）」は東儀さんの楽曲ですが、当時はどういったイメージで制作をされたのでしょうか。

　これは僕がデビューする直前に知り合いから「映画の音楽を作って欲しい」とお願いされて作った曲です。プロデューサーも監督も、平安時代だからといってそのまま雅楽っぽいのではなくて、西洋音楽のイメージでバラード調に作って欲しいと言われただけなんですよ。

――注文としてはそれだけだったのですね。

　ええ。僕が何となく物語も読んで、こんな雰囲気の映像だということで最初にすぐに閃いて曲が出来て、それがドンピシャで「これがいい」と言ってくれて。もうスッとできた感じですね。ちょっとだけ篳篥が入っているけど決して篳篥がメインではなくて、遠くで鳴っている程度の飾り付けみたいな感じで。ピアノとオーケストラ曲として作った曲です。

――スケール感が凄く大きいと思いました。

　平安時代の太古の昔の貴族というイメージで。江戸の映画だったら小粋な感じなんだろうけど、平安時代ってもっと宇宙的だったかもしれないと思って、スケール感を出しました。当時は録音技術も甘かったのと、ピアノ音源とか弾き方もまだ甘い所があったなと思って録り直しました。当時はそれで満足できていたんですけどね。

――改めて過去の曲を録り直すということについて思うことはありますか。

　その都度最高のものをと頑張っている訳だから、当時のものは凄く完成度が高いと思っています。今やり直しをしても編曲を思い切り変えることはしたくなくて。音質や表現力というところで録音し直すんだけど、やっぱり当時の思い入れに縛られているから、「どうやったら当時に近づけられるのだろう」と考えている自分がいます。当時に近づけるというエネルギーの中で音質を今風に良くクリアにしようというので、より良くなっているんだろうと思います。当時を超えようと思って無理に変な風にしないで寄り添った方がいいなと僕は思います。

――確かに超えようと思うと原曲の良さがなくなってしまうこともあります。ちなみに東儀さんは映画音楽を先に聴いて、その映画を観たいと思うこともありますか？　「風のかたみ」のようにスケールの大きな音楽だと、どんな映画なのかなと自分は思いまして。今度観てみたいなと思いました。

　どの映画かは覚えていないけど、そういうのはあります。こんなに素敵な音楽が流れる映画ってどんな景色なんだろうと期待しちゃいますよね。自分の曲でそういう風に言ってもらえると凄く嬉しいですね。