JAY’ED 11月16日にセカンドアルバム「Your Voice」をリリースしたJAY’EDにインタビューを試みた。
 「1stアルバムの『MUSICATION』は初めて世に出すアルバムということで、自己紹介的な部分もあったし、どこか余分な力が入ってる感もあったんですけど、今回の『Your Voice』はより自分を素直に出すことができたっていうか、“これがJAY’EDだ”っていうのを多彩な音楽性で打ち出すのと同時に、自分の内面的な部分を表現できたなって思うんです」
 今作『Your Voice』について語るJAY”EDの言葉は、これまでになく自信に満ちていた。全15曲(ボーナストラックを含めると16曲)というボリューム感のあるアルバムの中で、自分のすべてを出しきることができたという確かな手応え。どんなタイプのトラックも華麗に乗りこなし、どんなタイプの歌もスムースに歌いこなしてきたJAY’EDが、「自分にしか歌えない歌」を遂に見つけたという達成感。そこに到達するまでの葛藤を、彼はこんな風に語ってくれた。
 「もちろん、人から“いい声”って言われるのはとても嬉しいですよ。でも、正直言うと、自分にとって自分の声とか、見た目とかは、本当はどうでもよくて。ただ“いい曲”として響いてほしいっていうか。自分のことなんてそんなに知らなくてもいいから、1曲でも多く、『この曲っていいね!』って言ってもらいたいだけなんですよ。今回の作品で自分のパーソナルな部分を出すようになったのも、自分のことを知ってもらいたいからじゃなくて、自分が実際に経験してきたこと、そこで本当に思ってることを歌った方が、曲のエネルギーがより強くなって、リスナーに伝わるってことに気づいたからなんです」
 『Your Voice』というアルバム・タイトルには、そんなJAY’EDの想いが込められている。
 「これまでの人生で経験してきたつらい出来事や心が折れそうになった出来事を自分の中で整理して、それを乗り越えようとした時のポジティブな気持ちを歌にしたくて。失恋した時とか、仕事が上手くいってない時とか、そういう時にこそ歌ってパワーを発揮するじゃないですか。そういう過去の自分と同じような境遇にある人に希望を与えることができたらなって。だから今回のアルバムは“自分の声”であるだけじゃなく、聴いてくれる人みんなの声、『Your Voice』でありたいと思ったんです」
 そんな今作のキーとなったいくつかの楽曲を、JAY’ED自身が解説してくれた。
 「ターニング・ポイントとなった曲は(シングル『Toy box』のカップリング曲の)“U”かもしれないですね。ギターをフィーチャーしたそのサウンドの自由さも、リスナーを鼓舞するようなメッセージも、今作を象徴してる曲なのかなって。この曲と、その次の(FIRE BALLの)CHOZEN LEEさんと組んだダンスホール・チューン“Identity”の振れ幅が、このアルバムの広がりを表していると思います。どちらも『MUSICATION』にはなかった、自分にとって新しいチャレンジになった曲ですね」
 新しいチャレンジという意味では、次世代のラッパー、AKLO,SALUをフックアップしたヒップホップ・チューン“ブレイブ・ハート”のフレッシュなサウンドにも耳をもっていかれる。
 「そういえば現場のラッパーと組むっていうのを、インディーズ以来やってないなって。でも、今やるなら、彼らのような新しい世代の感覚を取り入れたかったんです。自分にとっての原点であるクラブ・シーンにいつでも戻れることを証明するという意味で、このアルバムにとって必要不可欠な曲だったし、すごく刺激を受けましたね」
 その対極にある曲と言えるのが、JUJUとの“永遠はただの一秒から”も手がけた作曲家、坂詰美紗子によるこれ以上ないほどストレートで流麗なバラード“サヨナラ”だ。
 「“永遠はただの一秒から”の前に坂詰さんにこの曲を聴かせてもらったんですけど、その時から絶対にこの曲は自分一人でやりたいって思った、すごく思い入れのある曲ですね。ピアノ一本で、多重録音も一切なしで、『JAY’EDのライブに行ったらこんな感じなんだ』って思ってもらえるような、素の自分を全部出せる曲だと思ったんです」
 アルバムのクライマックスを飾るのは、トランシーなハウス・チューン“Change The World”。ここで歌われている《世界のどこかに必ず キミの居場所がある筈》というフレーズからは、リスナーを勇気づけるメッセージの裏にある、JAY’ED自身がようやく自分の居場所を見つけた歓びが伝わってくる。
 「この歌の主人公はいつも脇役的存在で、みんなといてもあまり目立たなくて、泣いても笑っても誰からも注目されない。だけど、どんな人でも自分の世界の中では自分が主人公だってことを絶対に忘れちゃいけない、自分の世界を変えることができるのは自分だけなんだよっていうことを伝えたかった。確かに、自分も歌を始める前は引っ込み思案で、人前であまり喋れるタイプじゃなかった。そんな過去を思い出しながら、今同じような思いをしてる人達にこの曲を聴いてもらえたらなって。僕は、“歌”を見つけたことで自分のアイデンティティに気づくことができたけど、きっとみんなにもそれぞれ、自分が自信を持って前向きでいられるものがあるから、それを探そうよって」
 他にも、ずっとシングルにしたかったけどタイミングが合わなかったという秘蔵のキラー・チューン“君の手を〜Don’t Say Goodbye 〜”を筆頭に、驚異の充実度を誇る今作の楽曲群。実際、この2年間のヒット・シングルもたっぷりと収められた今作だが、アルバムを通しで聴くと一体どれがシングルだったか忘れてしまうほど。JAY’EDが自信と誇りを持って差し出すこの宝箱の中からは、きっと「あなたの声」が聴こえてくるはずだ。(文・宇野維正)

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