花束を結ぶリボンになれたら、三浦祐太朗 歌い継いで感じた変化
INTERVIEW

花束を結ぶリボンになれたら、三浦祐太朗 歌い継いで感じた変化


記者:村上順一

撮影:

掲載:18年07月27日

読了時間:約12分

 シンガーソングライターの三浦祐太朗が8月1日に、4年ぶりとなるアルバム『FLOWERS』をリリースする。昨年は母である山口百恵のカバーを収録したアルバム『I'm HOME』をリリースし8万枚(2017年11月付け)を売り上げ、同作は『第59回日本レコード大賞』では企画賞を受賞した。現在もじわじわとセールスを伸ばし続けている。今作『FLOWERS』には2010年から活動休止中のバンド・Peaky SALT時代から存在していた楽曲や東京MX系アニメ『邪神ちゃんドロップキック』のEDに起用された前山田健一(ヒャダイン)作曲の「Home Sweet Home!」、宇崎竜童と阿木燿子による新曲「菩提樹」などバラエティに富んだ1枚に仕上がった。『I'm HOME』をリリースしてから変化した心情など話を聞いた。【取材=村上順一/撮影=冨田味我】

歌い継いでいく重要性や使命感

三浦祐太朗(撮影=冨田味我)

――『I'm HOME』をリリースされてから約1年が経ちましたが、歌い続けて変化はありましたか。

 はい。『I'm HOME』の楽曲を歌ってきて、気持ちの面でも母が歌っていた楽曲を歌い継いでいく重要性や使命感、そういったものがどんどん大きくなっていきました。歌い込むとどんどん自分のものになっていくという実感もあって、その集大成を3月のライブで皆さんに観せることができたという手応えがありました。

――使命感ですか。

 全国でインストアライブをたくさんやって、それこそ買い物に来ている人を引きつけるみたいなのも、もちろんあるんですけど、今回は特に母の楽曲を歌うことが多かったので皆さん反応もしてくれて、僕を観に来てくれた訳ではないのにフラっと立ち寄って涙を流してくれたり、それでCDを買ってくれたり。そういうのを見ていて、やっぱり母の楽曲を歌うと空気が変わったりするんです。固唾を飲んで聴いている感じで。そういうのを各地で実感して、やっぱりこういう昭和の名曲と言われる楽曲を歌い継いでいく重要性を何となく感じ始めていて。「歌い継ぐというのはこういうことなんだ」ということを凄く思いました。あと、人の作った楽曲を歌うことの責任感も生まれました。

――さて、今作『FLOWERS』はいつ頃から着手されたのでしょうか。

 『I'm HOME』をリリースしてからは漠然と、次はどういうものにするかと難しいなと思っていて。具体的に決め始めたのは半年くらい前ですね。

――作曲者の人選はどのようにして決めましたか?

 まずは宮永治郎さんは、ツアーのバンマス及びギターでアレンジも全部やってくださって。もの凄く相性が良くて、自分の思いをすぐに形にしてくれたり、意思の疎通がとりやすいんです。最初から上げてくれたアレンジが最高だったりするので、自分の中でしっくりくるアレンジをして下さるという意味で、もう曲もお任せしようと。あと、ずっと一緒にやっているキーボードの高木博音さんがいるんですけど、以前の曲はほとんど彼が作ってくれていました。彼の楽曲もどうしても入れたいということで、「凍てつく太陽」を選ばせていただいて。

 このアルバムを出すとなった時にどうしてもやりたかったのが、昔組んでいたバンドのPeaky SALT時代にリリースできなかった楽曲を収録することでした。レコーディングも済んであとはミックスという段階までいっていたんですけど、色々あってバンドは活動休止になってしまって…。でも自分としては凄く気に入っていて、どうしても世に出したかった楽曲「月と木星の距離」をこのタイミングで入れたいと。

――そうなると時系列的には幅広い楽曲が集まっていますね。

 5、6年前のバンド時代の曲もあれば最近の曲もあります。

――バンド時代の曲を今やるとなるとだいぶ感覚が違いますか?

 そうですね。当時思っていたことと今とでは考え方も違うと思いますし。でもやっぱり楽曲として優れていて。「WITH (10 years after Ver.)」もバンド時代の曲なんですけど、ソロになってからもずっとやり続けていました。自分の中でこの曲の解釈も変わっていって、ソロになってからのお客さんの中でもだいぶ浸透してきたこともあり、今の僕の歳で歌う「WITH (10 years after Ver.)」はどうなるのかというのをやりたくて、この2曲は選びました。

――ライブのMCのとき「永遠というのが好きじゃなかった」ということを仰っていて、それが歌詞にも入っていますよね。

 結局バンド時代でも「永遠は信用ならない」と言っているし、「永遠の細胞」という曲では「永遠なんてない」と言っているし、一貫はしていたんですけど、そこから永遠も悪くないなと思えてきたのが『「I'm HOME」ツアー』くらいなのかなと。

――それは大きな変化ですね。他にもそういった変化はありますか?

 自分のことを歌って、自分のことを歌詞に書いて…というのが格好いいというか、それがシンガーソングライターだ、バンドのボーカルだ、という感覚が昔は凄く強かったんですけど、今回作品を聴いて頂くと分かると思うんですが、そうじゃなくて何でも歌いこなせることが格好いいなと最近思っていて。それは『I'm HOME』を作って人の曲を歌わせて頂いて気付けたことかもしれないんですけど。凄く素敵な曲があるのに自分が歌えないのは悲しいと思って。だったら、ちゃんと自分の色に染められるシンガーになりたいと思いました。そこは心変わりですね。

――『FLOWERS』というタイトルに込められた思いは?

 こんなに個性が強いバラバラな楽曲が集まっているけど、自分の中では全部花なんだよな、と思いました。それをギュっと花束にして、それを結ぶリボンに自分がなれていたらなと思ってタイトルを考えました。この『FLOWERS』というタイトルが一番強さがありました。「WITH (10 years after Ver.)」の歌詞のプリントにディレクションマークを付けたりしているときに、何となく落書きの一つに「flower」と書いていて(笑)。それが印象に残っていて全部大文字にしてみたら強さを感じました。

――確かに大文字は存在感があります。そんな『FLOWERS』の中でも「Home Sweet Home !」は異色ですね。

 みなさん一様にそう仰います(笑)。アニメが大好きで、アニメ好きと公言していたので、このお仕事の話を頂いてメチャクチャ嬉しくて。今回は歌詞に関しては全部物語に即していて。職業作詞家じゃないですけど、そういう立ち位置で初めて書いた曲です。

――前山田健一(ヒャダイン)さんが作曲・編曲をされています。

 「ハタラクワタシヘ」という楽曲もヒャダインさんにお願いをして、凄く自分にしっくりくる曲を上げてきて下さったということもあって、いざアニソンを誰に書いて頂こうかという話し合いの中でパッと思い浮かんだのがヒャダインさんだったんです。

 そうしたら、快諾してくださって打合せでアニメの話も通じるので、「これこれのエンディングの感じ」とか「これこれのオープニングの曲があってこういうのが好きです」という話をしたら「ああ、浮かびました」と言って一瞬で打合せが終わりました。本当に早かったです。それで実際に上げてきて下さった楽曲が、完全にそのアニメにガチっとはまっていたので「お願いして良かった」と。でも、その後「これ僕が歌うんだ…」って(笑)。

――最初この曲を聴いた時、耳を疑いました(笑)。歌はいかがでしたか?

 凄く難しかったです。速いし苦戦しました。けっこう色んな歌い方で試して、奇をてらわない方が良いと思って結局その歌い方でやりました。

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