稲垣吾郎、草なぎ剛、香取慎吾の3人による「新しい地図」がリリースした「雨あがりのステップ」。パラスポーツ応援チャリティーソングとして3月19日に配信限定リリースされたこの楽曲は、MVの動画再生数(100万再生超)やダウンロード数(8万DL)など、セールス的な数字を見るだけでも大注目されていることがよくわかる。

 「どんなに良い曲なのか?」と思い、何度も聴いてみたところ、確かに、良曲だった。「凄く心に響きます」「チャリティーにもピッタリですね!」「この三人だから生きる曲」という声が上がる中、素直に聴いて楽曲を楽しむのがベストではあるのだろうが、「具体的に考察すると、どう良いのだろう?」ということで、「雨あがりのステップ」の楽曲の魅力をちょっと深堀りしてみた。

良曲の条件には切れない関係“メロディと和音”

 元SMAPの稲垣吾郎、草なぎ剛、香取慎吾の3人が歌うキラキラしたメロディ、そして<このまま一緒に 見知らぬ 新しい世界まで 飛び出せる気がしたよ>というこれだけでも気になる歌詞のフレーズ。「キラキラしたメロディ」と言うと、何とも簡単な表現で全く考察になっていないのだが、具体的には以下のように思えた。

 サビの部分が特に顕著なのだが、メロディは素直に踊るように、“高低の躍動感”があり、譜割はシンプル。そして、和音の移り変わりは比較的多く、ほぼ等間隔で進行している。何と言うか、安心して歌を聴いていながらも、適所は細かく、伴奏は青空のように開かれている印象だ。このアプローチはシンプルなようで非常に難しく、下手をすると「何かあの曲に似てる」という感想で一蹴されかねない。しかし、そこは菅野よう子氏の作曲・編曲の所為。伊達ではない。

初の野外ライブでのびのびと歌唱する香取慎吾、草なぎ剛、稲垣吾郎

 歌詞の一節一節の言葉のイメージがメロディと、そしてコードと見事にシンクロしている部分に注目する。たとえば、サビの最後の<見飽きた窮屈な世界から 飛び出せる気がしたよ>という部分は、メロディとコードが言葉の意味と、そこから湧く感情を素直に音でも表現されているように聴こえる。もう、“スッと歌が入ってくる”とはこのこと、という感じである。

 そこまでストレートに進んできた和音進行に、ちょっと音階を広げたコードのスパイスを入れる加減とタイミングが秀抜で「ごく自然に聴こえる」訳なのだが、メロディの裏では凝った音の構成となっており、そこの“やりすぎず”、“足りなすぎず”という加減が心地良いのである(少々専門的な話だと、ノンダイアトニックコードのまぶし方が絶妙)。楽曲全体のバランスとの干渉を起こさず、間奏のカワイイ音色のシンセメロディへと自然に繋がっている。非常に細かい点であるが、そこだけでもこのように目をみはるセクションだ。

 そして次のサビ前の<水しぶき見たでしょ?>という部分で、意識してあえてメロディではなく伴奏の音に耳を傾けると、この楽曲で一番気持ち良いのではないかというアンサンブルが味わえたりする。次のサビへの導入としてはこれでもかという程だ。

3人に“似合う”楽曲

 「雨あがりのステップ」は、シンプルに言うと“いい歌”なのだが、深堀りしてみるとまず見えてくるのが、楽曲自体が「はっきりと一つの方向に向かっている」ということだ。歌の言葉と、メロディ、そして和音がバランス良く、支え合い、そこに妙なトリックはなく(トリックはあるのだが、聴き手には意識的に感じさせない)、アンサンブルを構成する音色の、ピアノ・シンセサイザー・グロッケン・ストリングス・トレモロエレピ、そしてポップス仕立てなのだがさりげなくオーケストラ的なリズムセクションなども、稲垣・草なぎ・香取の3人のキャラクターに寄せているように感じ取れる。

 メロディ・和音は「雨あがりのステップ」の世界観を明瞭に表し、アンサンブルはバランス良く構成され、隠し味はちゃんと隠れている。楽曲を聴いて、「新しい地図」の現在と未来への想い、そして<誰もが新しい道を行ける気がした>というメッセージが心に残る。

 そして何より、この楽曲の魅力の最たる要素は、稲垣・草なぎ・香取の3人に“似合っている”ということではないだろうか。欲を言うと「5人で歌って欲しい」という声も上がっているが、確かにそのバージョンも可能ならば聴いてみたいものである。

 菅野よう子氏が作曲、麻生哲朗氏が作詞を手がけた書き下ろしのオリジナルソング「雨あがりのステップ」を、ちょっと深堀りしてみたが、いかがだったろうか。せっかくの良曲を、細かい所をつつくような感じで野暮かもしれないが、「聴きやすくて、口づさみたくなる曲」を歌う3人の声を聴くことができると、ファンであってもファンならずとも、やはり嬉しくなる。楽曲自体もそうだが、やはりこの3人にはそういった魅力がある。稲垣吾郎、草なぎ剛、香取慎吾の3人「新しい地図」がどのような楽曲を展開していくのか、今後も期待と注目が寄せられている。【平吉賢治】

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