珍しいという概念の先へ、和楽器バンド 進化する和と洋の融合
INTERVIEW

珍しいという概念の先へ、和楽器バンド 進化する和と洋の融合


記者:村上順一

撮影:

掲載:18年05月09日

読了時間:約15分

毎作少しずつギターの音を減らしている

町屋(撮影=片山拓)

――今作のキーマンでもある町屋さん。改めていかがでしたか?

町屋 仕事量的には今回大変でした。やり甲斐もあり、レコーディング自体が僕は大好きなので苦ではなかったです。より良いものを作っていきたいという思いはないといけないことだし、そういう好奇心を持ち合わせて。その上でプレイヤーとしては、実は少しずつギターの重ねる本数を減らしていって。オーバーダビングは1stの『ボカロ三昧』で多い曲はディストーションで10本とか重ねていてました。

――10本は多いですね。

町屋 多いですよね(笑)。そうすると必然的にギターと和楽器のバランスが完全に崩壊してくるので、聴こえなくなってくるところとかが当たり前に出てきちゃって。そこをどんどん間引いていかなければアンサンブルとして洗練されたものにはなりえないので。いきなり減らすとバンドのサウンドのイメージがガラっと変わっちゃうので、毎作少しずつギターの音を減らしていこうかなと(笑)。

――最終的にはギターがなくなってしまうのでは? という懸念もありますが。

町屋 はは(笑)。最終的には1本にしたいです。コード(和音)を支える楽器というのが今の編成だとギターしかいないので、その役目をやらなければいけないのでなくなることはないかな。今後はもっとアンサンブルの精度を高めていきつつ、最終的に1本まで持っていって、コード感が充実して聴こえたら理想的だと思います。僕は考え方的にはギタリストというよりかは、このバンドのサウンド的なところでバランサーみたいな位置にいます。

――ギターには和楽器と洋楽器の接着剤的な感覚もありますね。プロデューサー感覚が強くなり過ぎて町屋さんが表舞台からフェードアウトしないことを祈ります(笑)。

鈴華ゆう子 私は様々な方と歌を一緒に歌ってきたのですが、ギターももちろんなのですが、町屋さんの歌と私の歌との相性がすごく良くて、それが和楽器バンドの大きな役割となっているので、フェードアウトは無理です(笑)。

――安心しました(笑)。蜷川さんは神永さんのように楽器の限界に挑戦したことなどはありますか?

蜷川べに 私の場合プレイの限界というよりかは、楽器が持っている特性の限界というところがあって。楽曲によって三味線の調弦を変えています。ライブでは三味線を一丁一丁持ち替えて弾いているんですけど、限界の調弦というのがあって、「砂漠の子守唄」は音程をあまり感じられない域まで糸を伸ばして低くしています。限界まで高くするか、限界まで低くするかの戦いだったんですけど。

――イントロで聴ける変わったサウンドは三味線だったんですね。

蜷川べに はい。この曲の雰囲気って音程というよりかは、一音一音の説得力とか雰囲気を醸し出すことが大事なので、楽曲に関しては限界まで低くして弾きました。レコーディングではそれが実現できたとして、これをライブで実現させるとなると、単純に三味線の糸が伸びると出力自体がほとんど聴こえないような状態になってしまいます。それをライブでどうやってちゃんと聴かせていくかとか、今後課題があって…。今回は三味線という枠にとらわれずに、その楽曲の雰囲気や、その人が得意としている曲調の雰囲気だったりとか、そういったものを最大限に活かして「私ができることって何だろうな」ということを考えつつ、自由にアレンジすることができたと思います。

――ライブではどうされるのか楽しみです。続いて、黒流さんの新しい試みは?

黒流 これまでのレコーディングの仕方として、今までは和太鼓が和楽器に対して異質な存在で、それがバンドの中に入っているというのでその良さがあるのかなと思ってやっていたのですが、たくさん楽曲があるレコーディングをしていく中で、色々ともっと音楽的に参加したいなという気持ちがあって。

 もともと和太鼓自体が道具に近いかなという意識があって、除夜の鐘や太鼓、山から山へ何かを知らせる道具だったりと諸説あるんですけど、そういうところからスタートしている楽器を今音楽としてやらせて頂いているのでありがたいことです。今回初めてレコーディングスタジオに太鼓をたくさん用意してもらって、それぞれの楽曲のキーに合わせてもらいました。スタジオ中が太鼓だらけになっているという状態の中で、一つひとつ選んで演奏させてもらって。そういうレコーディングの仕方ができたのが楽しかったですし、新しい挑戦だったと思います。

町屋 まず歌が一番その楽曲に合った歌のキーに設定します。そのキーによって打楽器といえどもドラムも和太鼓も音程を持っているので、そこを全部ぶつからないように帯域を綺麗に棲み分けしてあげて、全部のパーツを振り分けてあげることによって、全部の楽器を全力で鳴らしても、どの楽器も埋もれずに聴こえるという状態を今回作りたかったんです。今回は太鼓のピッチを選べることによって、そこがかなり整理整頓できたのが、聴きやすくなった大きなポイントです。

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