大事なのは「愛」、ピコ太郎 「PPAP」ムーブメントを総括
INTERVIEW

大事なのは「愛」、ピコ太郎 「PPAP」ムーブメントを総括


記者:小池直也

撮影:

掲載:18年04月28日

読了時間:約15分

ビンテージ機材を駆使したピコ太郎のDJ

ピコ太郎

——短い曲で場を繋げていく見せ方も圧巻です。

 ステージで8割喋るという、さだまさしさんを参考にしました(笑)。私は基本15分くらい時間を頂ければ、1曲で出来ますし、曲の前後は45秒から2時間までいけますから。皆さんと一緒に楽しんでパフォーマンスできる、という事だけが私の特技なので。曲は短いですが、その前後も曲のつもりでやっています。曲は基本1分で終わるので。

——観客にお子さんも多くいましたね。

 いましたね。親御さんからすれば一番近づいたらいけないタイプの人間だと思うんですが(笑)。なので昔は近寄ってくれなかったんですけど、ここ2年くらいはたくさんのお子さんに「ピコ太郎―!」と言ってもらえる様になりました。「子どもがパパ、ママよりも先に『アッポーペン』と話した」というご意見もよくもらっています。

 ただ、たまに「アッポーペン」と言っている子どもに「フリッツ・フォン・エリックですか?」とか訊いたりするんですよ。ジャイアント馬場を苦しめた人ですけど、これがどうしても通じなかったりして。コーエーの『信長の野望』の話も。そういうところは私もまだプロ歴が短いので、修正ができていないのかもしれません。

——教育しているところもあるのかなと思いましたが。

 教育なんて事は思ってないですよ。自分はわかりやすくという事しかないので。ただ、ゲームと言われても今のアプリゲームはよくわからないので、ついつい『バンゲリングベイ』とか『ヘクター'87』とか『さんまの名探偵』とかあっち側にいってしまいますよね(笑)。『ツムツム』とか言われてもわからなくて。だから老若男女のインターフェイスとしてとらえて頂ければと思います。

——映像ではライブ終盤、ピコ太郎さんがDJをしてからの盛り上がり方も凄かったです。

 あそこは一番意識した見せ場でしたね。私はやはりダンスミュージックが好きですから、皆さんに歌って踊って喜んでもらいたいんですよ。なのでDJもやりたいなと思って、機材を準備してもらいました。音作りに1番時間がかかったかもしれませんね。オープニングの曲からSEから、何から何まで古坂さんが全部作ったので。その辺は大変だったと思います。その辺の準備が1カ月くらいしかなかったらしいです。さらに12月にアルバム『PPAP』も出していて、その準備も数週間しかなかったですし。なのでその期間は僕も含めてスタッフ全員が臭かったです(笑)。

 DJ機材は全て古坂さんの物です。本物のTR-808とTR-909をローランドから買ったそうで。だから手元にはTB-303も含めた3種の神器が置いてありました。ローランドの倉庫にあった1番良い中古だった様ですよ。5、60万円ずつくらいかかると思うんですけど。古坂さん曰く「あの綺麗さで、ほとんどボタンが潰れていない。モレーションシンセのファンや、リズムマシンのファンの方が見たら泣くんじゃないかな」と。多分お客さんは一人も気づいてないと思うんですけど(笑)。

——「PPAP」は2拍目4拍目に鳴るカウベルが凄い特徴的ですよね。

 「PPAP」って7年前に曲が出来ているんです。古坂さんの単独ライブでやったのが最初。お笑いライブでも笑ってもらえるんですけど、音楽のライブの方がウケるんです。特にPAさんが笑ってくれるんですよ。「何でカウベルを2拍目、4拍目で鳴らしているの?」と(笑)。「スネアの代わりです」と言うと「いやいや、代わりにならないよ」と言われたみたいです。でも古坂さんはスネアになる様に、TR-808のスネアの高音と中音を切って加工した物を混ぜてアタック感を出しているみたいですね。

 「PPAP」は色々な人に分析もして頂いていて、学術論文になったりもしているんですよ。「なぜこうなったのか?」というのを皆さんが考えてくださっていますが、自分の中では集約できてはいるんです。これも古坂さんの受け売りではあるんですけど「おまえの間はコントの間だ」って言っているんです。コントの間は人間の根幹でもあるんですよ。

 先日、日本音響研究所で「PPAP」でなぜ子どもが泣き止んだり、見入ってしまうのかというのを分析してもらったんです。あの曲はBPM=136なんですよ。このテンポは子どもの心拍数に近いそうです。それに加えてあのイントロはチャイムみたいに人間の注意を引く音。注意した瞬間に音が止まって「PPAP」と言って踊り出す、という流れ。でも、僕が大事にしていたのは間なんですよ。皆が笑ってくれる間というのは、ちょい早かちょい遅なんです。皆が気持ち良い間だと笑わない。

——なるほど。シンコペーション(拍に対してリズムを先にとる)ですね。

 そうですね。それから言葉の並びなんですけど、事実は皆さんから見ると「ペンアッポーパイナッポーペン」。僕から見ると「ペンパイナッポーアッポーペン」。あくまでも僕からの視点なんですよ。あと海外の人と話すと「パイナッポー」って凄い笑うらしいです。とても日本人ぽくて面白いんだと。

 ただ日本人が知っている英語を重ねました、というのを一聴で笑うのは難しいんです。意味を持つと駄目だし、意味が無いと駄目だし。だから、より意味が無くて、意味を持つものが良いなと。でも結局「なぜ恋に落ちたのか」みたいのと一緒ですよね。落ちただけの話で(笑)。

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