変わり続けることが自分であること、Nulbarich 前へ進む音楽
INTERVIEW

変わり続けることが自分であること、Nulbarich 前へ進む音楽


記者:榑林史章

撮影:

掲載:18年03月07日

読了時間:約11分

『H.O.T』は、『Hang On Tight』の略

――曲のタイトルや歌詞にはユニークな比喩がたくさん出てきて、読み解くのも楽しいと感じました。「Almost There」は、「あと一歩」みたいな。

ライブの様子(撮影=佐野円香)

 歌詞に<We Are Almost There>と出てくるのですが、「僕らはもうすぐ着くよ」という意味です。もうすぐたどり着くからこそ、今は焦らなくてもいい、そのままの自分でいいんだ、と。あとちょっとという時や何かにたどり着きそうな時って、つい急いで滑り込もうとしがちじゃないですか。

 ゴール目前でラストスパートをかけて、焦ってコケてケガしたり、電車の駆け込み乗車で結局遅延に繋がったり。「もうすぐ」だからこそ一度落ち着いて、冷静になったほうがいいと思うんです。サビでは<もうすぐ着くから、嵐が過ぎ去るまで本を読みながら明日を待とう>という感じのことを歌っています。つまりマイペースにいようぜってことなんです。

――<長い1日が終わりまた誰かがsinging>という歌詞があります。「誰かが」というのがいいですね。

 「君はよくやったよ、明日も1日大丈夫だよ、僕たちはもうすぐなんだから」と、誰かに歌ってもらえることが、自分にとって明日への一歩になりますよね。労ってくれるみたいな感じです。「よくやったよ」と言ってもらったら自分でも救いになりますし。ここは、自然と出てきた言葉です。

――また、「Handcuffed」という曲は、最初はギターと歌だけでワンコーラス続くミディアムナンバーです。タイトルは、「手錠をかけられている状態」ということですか?

 はい。<君がいなくなってから僕の心は手錠に繋がれたようだ>と歌っています。大事な人を失って気づく苦しさと言うか。恋愛ソングなのですが、自分の心が手錠に繋がれたように苦しいという気持ちを表していますね。と言っても、あまり恋愛の面を全面にした感じではなく、その時の心の在り方みたいなものを歌っていて。誰かに伝えていると言うよりは、主人公の嘆きを綴っているみたいな感じです。ちょっと悲しげな曲ですね。

――ラストの「Heart Like a Pool」は、どういう意味ですか?

 よく海外の家には、庭にプールがあるじゃないですか。それで、「もしあなたが庭にプールを作るとしたら、どのくらいの大きさのプールを作りますか?」と質問をして、その答えがその人の心の在り方を表しているんじゃないかと思ったんです。例えば「友だちをいっぱい呼んでみんなと楽しめるように、すごく広くて大きなプール」と答えたとして、じゃあ小さなプールを作った人は孤独な人とは言い切れない。

 それに、大きなプールだと掃除や維持も大変で、そもそも作るのに費用がいりますよね。友だちと楽しむために、そこまでできるのか? という問いかけにもなるし。考えているとキリがないんですけど(笑)。

――なるほど。面白いですね。アルバムタイトルの『H.O.T』も、きっと「アツい」という単純なものではないんでしょうね。

 単純にアツイとかイケてるという意味もありますけど、ダブルミーニングで『Hang On Tight』の略でもあります。「ain't on the map yet」の歌詞にも出てくる言葉で、「しっかり掴まっててね」という意味です。

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