ポップロックバンドのNulbarichが7日に、2ndアルバム『H.O.T』をリリース。シンガーソングライターのJQを中心に結成。昨年は第9回CDショップ大賞にノミネートされたほか、大型フェスに出演しその名を轟かせ、ジャミロクワイの来日公演でサポートアクトも務めた。今作『H.O.T』は、洋楽を取り込みながら、より最先端のサウンドにも意識した作品。JQは「2017年のフェス経験が大きく影響している。さまざまな情景がよみがえり、エモい気持ちで聴くことができるアルバムになった」と話す。Nulbarichの音作りの根底にあるもの、歌詞やタイトルに込められた言葉遊び、そして今年の活動についてJQに語ってもらった。【取材=榑林史章】
ライブ想定の曲が多い
――アルバム『H.O.T』は、どんな気持ちで制作を?
2017年は、たくさん良いインプットがありました。いろんなフェスに出させていただいたり、ジャミロクワイのサポートグアクトを務めさせていただいたり。このタイミングで、その経験を曲として留めておきたいなと思いました。
たとえばジャミロとの時は、20年以上も日本にファンがいて、世代を超えて親子で観に来ている人もいて。彼らのファンを見て、僕らも長く愛されるアーティストになりたいと思ったんです。そういう普遍性があって、尚且つ自分たちらしいアルバムを作りたいと思いました。
――普遍的なものは、人によっては古くさいとかダサいと思う部分も持っているわけで、それをこういうオシャレで今風なものに仕上げるのは、バランス感覚やセンスが必要ですよね。
そうですね。単にクラシックのものをなぞるだけなら、クラシックを聴けばいい。温故知新じゃないけど、クラシックに重きをおきながら、しっかりと新しいものを提示することは意識しました。でもそれは、いつの時代でもたくさんのアーティストがやってきたことで、それと同じにするのは恐れ多いことですけど…自分たちの中に持っているクラシックの部分と、今の自分たちらしさのバランスを取りながら、がむしゃらに作りましたね。
――以前のインタビューでは、昔のソウルミュージックやブラックコンテンポラリーなどが、自分のルーツやクラシックにあるというお話をされていて。新しいものでは、どんな音楽から影響を受けましたか?
細かいところで、音色に影響が出ていると思います。洋楽のトラップとか、ちょっと前だけどトロピカルとか。クラブ系の音色は毎年どんどん変わるので、そこは敏感に追いかけたつもりです。
――アルバムの新曲は、わりとシンプルな音作りで、ギターリフがメインになっているものが多いと感じました。
それは昨年、夏フェスにたくさん出演した経験が大きかったと思います。今作は、作りながら「2018年の夏はこのアルバムを携えてフェスを回らせていただくことになる」と、どこかで意識していて。だから、フェスで自分たちがよりアガれる曲だったり、ライブを想定して作った曲が多いです。
フェスでは、限られた時間内でどれだけお客さんと共有できる部分を増やしていくかを考えるわけで。やっぱりダンサブルでビートが強い曲のほうが、お客さんの反応が良かったし、僕たちとしてもやりやすかったです。
――フェスに出演しながら、自分たちが感じていた曲の感触とお客さんの反応が違っていたり、きっと発見することもたくさんあったのではないでしょうか。それによって自分たちの中で、“やり方”が確立されてきたんでしょうね。
まだ、何となくですけど。やる場所によって見せる、表情の違いを感じることができました。たとえば昨年リリースした1stEP『Who We Are』では、「Follow Me」が1曲目で「It's Who We Are」が2曲目なんですけど、ライブは逆で、1曲目に「It's Who We Are」をやって、「Follow Me」は最後のほうにやるほうが、反応もいいし気持ちいいんです。
――今作『H.O.T』では実際に、「H.O.T (Intro)」の後の2曲目に「It's Who We Are」で、「Follow Me」は10曲目ですね。それに「It's Who We Are」の乾いたギターカッティングが入ってきた瞬間、ゾクゾクしました。
ライブでやることによって曲の印象が育ち、こういう曲順になりました。全体的に曲順はライブ想定で、セットリストの感覚です!