Nulbarichが11月6日、ミニアルバム『2ND GALAXY』をリリース。シンガーソングライターのJQがトータルプロデュースするバンドで、本作には公開中の映画『HELLO WORLD』主題歌のフルバージョンや、アニメ『キャロル&チューズデイ』に楽曲提供した「Kiss Me」のセルフカバー、フェスに出演した際のサウンドチェック中に生まれた曲などを収録。JQは本作について、Nulbarichの中にある無限の想像力を表現したと話す。楽曲制作秘話や12月1日にさいたまスーパーアリーナで開催するワンマンライブに向けた意気込みを聞いた。【取材=榑林史章】
かなり男くさい「Kiss Me」になった
――タイアップ曲がいくつか収録されていて。まず「Look Up」は、北川景子さんが出演しているシチズンのCM曲ですね。
2年連続でCMに使っていただいて、本当にありがたいです。こういう歌詞と何となくのドラフトはあったんですけど、CM側からざっくりとポジティブさとか明るさが欲しいみたいな話を受けて。それで、よりハッピーでよりポジティブになるような要素が必要だと思って、改めてアレンジを加えて完成しました。
――ゴスペルとか、黒人コーラスグループのような感じがありますね。
そうですね。明るく盛大なゴスペル感は欲しいなと思っていたので、上手く消化出来たんじゃないかと思います。あの明るさって、悲しみを知っている人にしか分からない明るさなんじゃないかって思うんです。嘆きが込められていると言うか。ゴスペルはHOPE、つまり願いや祈りです。そういう歴史を持っているところも、ゴスペルという音楽の美しいところだと思っています。この曲のメッセージは、“ここから立ち上がるんだ”というものなので、デフォルトでプラスではないんですね。始まりはゼロないしマイナスの状態からで、ここから立ち上がってプラスに向かって行く。ゴスペルの力を借りて、より深みのあるポジティブさが表現出来たと思います。
――すごくキャッチーさがあって、いつもよりも分かりやすい気がしました。
僕たちにとって新しい何かを探し求めた結果、こういうアプローチに辿り着いたんですけど、確かに世間で言うところの王道な感じになっているとは思います。ただ世間の王道が、僕たちにとっての王道という訳ではないので(笑)、僕たちから見ればとても新しいアプローチを施したという印象です。
――「Kiss Me」は、アニメ『キャロル&チューズデイ』のオープニングテーマで、主人公の二人が歌うキャラクターソングとして制作したものですよね。毎週アニメのオープニングに流れていて反響はいかがでしたか?
スタッフからは、けっこうあったと聞いています。「Nulbarichっぽいと思って聴いていたらNulbarichだった」とか「誰の曲だろうと思っていたらNulbarichだった」などの感想があったと聞きました。僕自身としてもすごく良い曲が出来たと思っていたので、いつかセルフカバーをやりたいと思っていたんです。
――アレンジがだいぶ変わって、Nulbarichっぽくなっていますね。
そうですね。『キャロル&チューズデイ』は十代の若い二人が、音楽で夢を叶えていくという物語で。その二人が歌うことをイメージして、楽曲もポジティブさがあってキラキラとした女性らしさを意識しました。アコースティックギターとキーボードで弾き語りをする二人なので、その楽器を中心にアレンジを構成するという設定もあったし。それをセルフカバーとは言え、十代の女の子が歌う用のものを僕たちがそのままやってしまっては、おかしなことになるので僕たちらしいアレンジで、Nulbarichに馴染ませた感じです。Nulbarichの「Kiss Me」はこういう感じだよっていう。
――十代の女性が歌う「Kiss Me」を、Nulbarich流に再解釈したみたいな。
もともとこの曲は、2000年代初頭、R&Bが全盛期でデスティニーズ・チャイルドなどのアイドルが出てきた、あのへんの流れを僕的にはイメージして作っていて。語尾の処理やニュアンスが違うけどメロディは基本的に変わっていないし、リリックもほとんど同じなので、再解釈までは言えないかもしれないけど、かなり男くさい「Kiss Me」になったかなと思います。