時間をどれだけ濃いものにして返せるか
――家入さん作詞の「微熱」で、作曲と編曲を担当しているのが本間昭光さん。
本間さんは松任谷由実さん、槇原敬之さん、ポルノグラフィティさんなど、日本の音楽シーンを作ってきた方々とご一緒されていて、余裕を持って作業をされても平気で200〜300点出せる方です。それなのに、他の作家さんたちの曲に対しても熱く心を燃やしていらっしゃるのが最高に格好いいと思いました。広い視点とバランス感を持たれている方だなと。そんな本間さんに対して、他の方々も、追いつけ追い越せで。家入レオというフィールドで、みなさんがどんどん高め合って、それによってもともと良かった1曲1曲のクオリティがさらに高くなったと思います。
「微熱」は、私はピアノ1本で歌いたいと思ったんですけど、いろんなアレンジパターン考えてくださって。全部試して、最終的に後半アーバンな展開になるこのアレンジになりました。
――「微熱」の作詞はどんなイメージで?
「こういう曲を作りたい」とプロットをお渡ししたら、本間さんはそれが歌詞だと思ったらしく、それにメロディを付けてくださったんです。
――ちょっとした勘違いで生まれた曲という。
そうそう(笑)。私はポエムっぽい感じでプロットを書くので、最初から歌詞っぽいと言えば歌詞っぽいので、それで成立したことですけど。シンプルに最初に出てきた言葉が、そのまま曲になっています。
――「微熱」というタイトルは歌謡曲っぽいですね。
ああ、確かに工藤静香さんの曲でも「微熱」ってありますしね。世代で捉え方が違うのも、面白いです。
――20代の家入さんは「微熱」には、どういうイメージを?
この歌詞を冷静に読んだ時に、恋に恋をしている感じでけっこうファンシーだなと思って、「ちょっと熱病みたい」という苦笑い的要素を込めて「微熱」と付けました。
――では最後に、アルバムタイトルの『TIME』について、どうしてこういうタイトルを付けたのか教えてください。
「パパの時計」が分かりやすいですけど、「微熱」にも<時間>が出てくるし、「祈りのメロディ」にも<この胸の時計が逆回りはじめたの>と出てきます。どの曲にも、時間が関係している言葉が出てくるのがヒントになりました。それに自分のいろんな日常を切り取って、曲にしていったという点でも『TIME』だし。
言葉やお金は、そこに気持ちがなくても言えるし使えちゃうけど、時間はみんなに平等に与えられていて、仕事や恋や夢など優先順位がそれぞれある中で、みなさん私に時間を預けてアルバムを聴いてくれています。私は、みんなから時間を預かっているのだと思うんです。預けてもらった時間を、少しでも「聴いて良かった」という思いに替えられたらいいなという気持ちを込めています。
5月からツアーも始まりますが、ライブにきてくれる方も、いろんな時間を調整してきてくれているので、その時間をどれだけ濃いものにして返せるか。それが、自分が音楽をやっている意義だと思っています。
(おわり)