シンガーソングライターの近藤晃央が去る2017年12月8日に、東京キネマ倶楽部でワンマンライブ『ONE MAN TOUR 「damp sigh is sign」』のツアーファイナル公演をおこなった。ツアーは12月1日の名古屋ダイアモンドホールを皮切りに、東名阪をまわるというもの。ストリングス・カルテットを含めた9人編成のアコースティックライブ。時に静寂を時に情熱的な面など楽曲の多面性を表現したステージ。ライブはBlack SideとRed Sideの2部編成で「テテ」や新曲「相言葉」などアンコール含め全17曲を披露。近藤の楽曲の世界観を余すことなく再現し、観客を魅了した。【取材=村上順一】

Black Side

近藤晃央

 会場にはクラシカルなピアノの旋律。このキネマ倶楽部の雰囲気によく合っており、早くも今回の世界観に浸らせてくれる。開演時刻になり暗転、SEが鳴り響くなか、サポートメンバーがステージに。そのあとゆっくりと近藤がステージ中央に置かれた椅子に座ると始まったのは「ひとつになれないことを僕らはいずれ知ってゆくよ」。生のストリングス・カルテット、グランドピアノと贅沢な編成で、届けるバラードは極上。そこに乗る近藤の歌声もまたいつもとは違った艶やかな音色で紡いでいく。

 <キミは何色...? ボクは何色...?>と問いかけが響き渡った「グラデーションフライ」。観客もスタンディングで軽快にクラップ。近藤の声はその楽曲に色を付けるかのような鮮やかさを放つ。異国の地へいざなうようなイントロで始まった「仮面舞踏会」。優雅さの中にある憂いを帯びた歌声は、この会場の雰囲気も相まって、情景を鮮明に映し出すようだった。

 そして、体が自然と動き出してまうほどの情熱的なナンバー「テテ」。近藤もスタンディングで相棒であるMartinのアコースティックギターを掻き鳴らす。ギターのアタック感が心地よくアグレッシブに響くなか、会場のテンションもうなぎ登り。エンディングではサポートメンバーの鈴木督和(Gt)と向かい合い、ギターを掻き鳴らすパフォーマンスに大歓声が上がった。

 第1部ラストはピアノとチェロ、そして、近藤の3人で届けた「ベッドインフレームアウト」。何かが近藤に憑依したかのような熱演。ファルセットが伸びやかで官能的な空間。観客もその歌と演奏を浴びるように静かに聴き入る。エモーショナルを通りこした、歌は記憶へ刷り込まれるようだった。近藤は歌い終わるとそのままステージを後にした。

Red Side

近藤晃央

 休憩を挟み、第2部は、藤井洋(Key)によるピアノの音色に導かれるように、赤い衣装に身を包んだメンバーと近藤が再びステージに登場。奏でられたのは近藤の原点とも言える楽曲「らへん」。幾度となく歌われ、近藤と一緒に成長してきたといっても過言ではない「らへん」は新たな表情を見せてくれた。そして、木漏れ日のような温もりのあるライティングのなか、「恋文」を届ける。観客の目を見て語りかけるように歌う、近藤の姿が印象的。

 ここで本日初のMC。「日常の疲れやストレスを忘れるのではなくて、上手く調和して帰ってほしい」と、投げかけ、この日ライブ初披露となる「相言葉」を披露。“ひとりじゃない”をテーマに、リスナーやファンからエピソードを募集し、近藤がそこから歌詞に落とし込んだ珠玉のバラードナンバー。近藤がアコギでアルペジオを奏でると、楽曲の世界観が一気に広がる。そこに乗る歌声は感情を揺さぶるように空気を振動させていく。最初はひとりだった…そんなマイナスの共有から生まれた言葉たち。そのメッセージを受け止めるように聴き入る観客。

 バラードで扇情させた後は「かわいいひと」「HONEY」と爽やかな風が吹き抜けるようなアレンジ、走り出したくなるような軽快なリズムが観客の体を揺らし、緩急をつけたセットリストで楽しませる。再びMCを挟み2018年の予定を話す近藤。春以降はライブを休止し楽曲制作に集中することを告げ、「らしさを残したまま戻ってきたい」と決意とも言える言葉を述べた。

 そして、9月にZepp DiverCity Tokyoおこなわれた『近藤晃央 5th Anniversary Live「KAIKAKI」』でも話していた自分の曲が、誰かの曲になっているという感覚を改めて伝え、本編最後に届けたのは「涙腺」。ハンドマイクで感情をマイクに注ぎ込んだ全霊の歌。楽曲に込められた想いを全てを放出するかのような熱演。

 アンコールの声に応え、Tシャツに着替えたメンバーと近藤がステージに。クリスマスが近いということもあり、シングル「ブラックナイトタウン」に収録されている「わたしはサンタクロース」を披露。そして、もう一曲、昨年、盟友であるシンガーソングライターのダイスケとのコラボでリリースした「クリスマスチキン」を届ける。クリスマスベルにストリングスの音とゴージャスなサウンド。多幸感溢れる空間がキネマ倶楽部に降り注ぐ。時間を確認する近藤は「もう一曲いけるよね?」と「あい」をプレゼントし、『damp sigh is sign』は大団円を迎えた。

 楽曲の新たな表情を見ることが出来たライブは、近藤自身も新たな気づきがあったと話していた通り、聴く側にも大きな気づきを与えてくれたステージであった。4月8日には渋谷WWW Xでオールスタンディングでのライブも発表。2018年にはどんな楽曲を生み出し、表現していくのか楽しみだ。

セットリスト

▽Black Side

01.ひとつになれないことを僕らはいずれ知ってゆくよ
02.あの娘が嫌い
03.ブラックナイトタウン
04.グラデーションフライ
05.仮面舞踏会
06.理婦人ナ社会
07.テテ
08.ベッドインフレームアウト

▽Red Side

09.らへん
10.恋文
11.相言葉
12.かわいいひと
13.HONEY
14.かな
15.涙腺

ENCORE

EN1.わたしはサンタクロース
EN2.クリスマスチキン
EN3.あい

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