今年9月に引退する安室奈美恵さん。昨年大みそかに放送された、第68回NHK紅白歌合戦で久々に“テレビ生放送”で姿をみせ、自身の言葉で引退に言及。視聴者へ思いを届けた。=写真はHuluで公開されている安室奈美恵さんの密着映像の一コマ=

 放送に先立っておこなわれた3日間のリハーサルは報道陣に非公開でおこなわれたため、その姿を見ることができなかった。ただ、他の出場者の囲み取材では安室さんへの想いを語る場面が多々見られ、今回の紅白が安室さん色に染まっている空気感を感じることができた。

 そのなかで迎えた本番。総合司会の内村光良さんとのやりとりのなかで、安室さんはこの時披露した「Hero」への想いを語ったあとに、深く息を吐き、自身に向けて手を仰ぎ、次の言葉を述べた後に再び手を仰いだ。その姿に内村さんは「だいぶ緊張していらっしゃっている」と声をかけた。

 久々のテレビでの生放送。緊張感は画面越しからも伝わったが、内村さんがあえて言葉にすることで「やっぱり緊張しているんだ」ということが事実として確認されたように思える。内村さんのあの言葉、そしてタイミング的も絶妙だったと感じる。安室さんが抱えたプレッシャーは相当なものだったのだろう。この時、リハが報道陣に非公開でおこなわれたのも分かる気がした。それだけ繊細な空気感だった。

 紅白としては最後のステージ。まばゆい光をめいいっぱい浴びた安室さんは光のゲートのなかで「Hero」を歌った。今回、紅白のリハーサル取材を共にし、過去に安室さんのライブ取材をしたことがある小媒体の記者は筆者の隣で、彼女の姿を見入って、こう語った。

 「終わりに向かう悲壮感を感じますね。一つひとつ扉を閉めていく感じというか、胸にグッときます。白組司会の二宮和也さんが『この瞬間を迎えたくない』と語っていましたが、凄く納得しました。NHK側の見せ方だったのかもしれませんが、この曲はリオ五輪・リオパラ五輪テーマですが、曲が持つ本来の趣とはやや異なるというか、選手の背中を押すというよりも、自身や視聴者の背中を押すような感じにも受け取れました」

 筆者もそのような感じがした。紅白リハーサルや放送後の安室さんに密着した映像がHuluで1カ月間限定で配信されている。これに関連して安室さんは「自分でもびっくりするぐらいリハーサルでも緊張していた。一大イベントですよね」と語っている。そして、歌い終えた後に涙を流す姿も収められていた。それだけ、あのタイミングでのあの舞台は特別なものがあったのだろう。

 批判的な記事も散見されるが、筆者には人間性も垣間見えた素晴らしい時間だったと思う。【木村陽仁】

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