お笑いタレントの今田耕司と作家の鈴木おさむ氏による舞台シリーズの第6弾『三途会~私の人生は罪ですか?~』がきょう22日、東京・新宿の劇場「東京グローブ座」で始まる。この公演には、歌手でタレントのベッキーがゲスト出演。ベッキーとしては14年ぶりの舞台で、今田と舞台で共演するのは初めてだ。稽古も重ね、いよいよ開幕。ベッキーの覚悟が感じられると今田が語っていた今回の舞台はどのようなものになるのか。MusicVoiceでは稽古前にインタビューを実施。2人が語った今作に懸ける想いとは。音楽にも重なる、ライブだからこそ味わえる面白味とは。【取材・撮影=木村陽仁】
はじめに
今田と鈴木氏が2008年からおこなっている舞台シリーズ。第1弾『尋常人間ZERO』は千原ジュニア(千原兄弟)や小木博明(おぎやはぎ)ら、第2弾『愛Pod』(09年)は堀内健(ネプチューン)、高橋茂雄(サバンナ)、小杉竜一(ブラックマヨネーズ)ら、第3弾『NGワードライフ』(11年)は宮川大輔ら、第4弾『The Name』(13年)は立川談春ら、第5弾『AVM』は(14年)は大久保佳代子、徳井義実らと、毎回、ユニークな顔ぶれで世情を描いている。
第6弾となる今回は、渡ると死者になる言い伝えがある「三途の川」を舞台に、人生で様々な罪を抱えた人が川を渡る手前で会議「三途会」を開く物語で、タレントとしては初めての同シリーズ参加となるベッキーをはじめ、町田マリー、加藤啓、伊藤修子、木下隆行(TKO)が出演する。
今回のインタビューでは音楽観点を織り交ぜながら以下の要旨で話を聞いた。
〇14年ぶりの舞台、ベッキーの覚悟
〇過去に歌手活動も…2人で音楽でユニット結成も?
〇音楽にも重なる、舞台によって生まれるもの
今田はこの舞台がきっかけで共演者との親交を深めており、とりわけ、混ざり合う機会が少なかった宮川大輔や堀内健はテレビ番組での共演でもやりとりの変化は顕著に表れている。一方のベッキーは昨年の復帰前後にこの舞台のオファーを受けており「(当時は)この先どうなるか分からないけど、この舞台が1年後にあるんだと思いながら、私にとっての希望だった」と語っており、舞台に懸ける想いは強い。
また、バラエティ番組での共演経験が多い2人だが別の共通点もある。それは歌手活動をおこなっている点だ。今田は1995年に「KOJI1200」名義で、テイ・トウワのプロデュースのもと「ナウ ロマンティック」をリリースしている。ベッキーもまた「ベッキー♪♯」名義でCDをリリースしている。そのベッキーは8月26日放送のテレビ東京系『ゴッドタウン 最初でたぶん最後のゴールデンスペシャル』でおぎやはぎ小木博明とデュエット。自虐を織り交ぜながらも伸びやかな歌声を披露し、反響を集めた。
そうした繋がりもある2人が出演する舞台はどのようなものになるのか。インタビューは以下のとおり。
14年ぶりの舞台、ベッキーの覚悟
――制作発表会見で「ベッキーの覚悟を感じる」と話していました。
今田耕司 舞台に懸ける覚悟というか、そういうのは凄く感じます。コメントというか。普段の雰囲気というよりかは、やっぱり今回の舞台に関してですね。(ベッキーが)「全身全霊」と言っていたので、その気持ちでやるのだろうなという感じは伝わってきます。
――この話を頂いたときはどういう心境でしたか?
ベッキー ありがたいなと思いました。尊敬する鈴木おさむさんと大好きな今田耕司さんと一緒にお仕事ができるということが本当に嬉しかったです。
――今田耕司さんから見て女優・ベッキーというのはどんな感じになる?
今田耕司 バラエティのベッキーしか知らないので、逆に、予備知識もない方がいいなという感じはしますね。だから楽しみです。おそらくですが、(舞台では)絶対に違うものとして見せて頂けると思うので。
――ベッキーさんと聞いたときはどういった印象でしたか?
今田耕司 やっぱり「面白そうやな」ですね。おさむ君、何言わせるんだろう? と。ベッキーを通しておさむ君の言いたいことも言うだろうし、どんな台詞を喋るのだろうと楽しみです。
――化学反応の予感はありますか?
今田耕司 僕とベッキーだけでなく、そこに入ってくる舞台のプロの方もいるので、TKOの木下と向かい合って仕事をするのも初めてなので、みんなどういう反応を起こすのかは楽しみです。最終的におさむ君が必ず何かを起こすはずなので。
――今田さんにとってやりやすい女優とは?
今田耕司 そうですね、お芝居経験のないモデル上がりの人とか。「これから女優をやりたい」という人はいいですね。稽古場に行くのも楽しいじゃないですか。稽古場にカワイイ子がいる、タイプの子がいる、みたいなことですから。
――ベッキーさんは器用なイメージもあるので、こなしてしまいそうな感じもする?
今田耕司 プロ中のプロですから。
――逆に今田さんがプレッシャーになる?
今田耕司 もちろんです。全身全霊ということもありますから。滅茶苦茶プレッシャーになります。オーラとうかそういう存在感を出してくると思うので、負けないように頑張らないとって思います。
――14年振りということで、前回は19歳くらいの頃でしたが、当時を振り返ってどうでしょうか?
ベッキー 何となく記憶はありますし、「舞台ってどんな感じだっけ」という風に振り返りました。前回は、お話を頂いたときから幕が開く瞬間までずっと緊張しっぱなしでした。でも、一歩踏み出したらけっこう楽しめたんです。今回は、緊張はまだそんなになくて逆の現象が起こっているので、本番で緊張したらどうしようと思っています。
色々と思い出したんですけど、稽古場の下にモロッコ居酒屋があって、そこでよくみんなとご飯を食べたなとか。私が演出家さんに指導をされると必ず「はい、わかりました」と言うんですけど、それをみんながよく真似していたなとか。色々よみがえってきます。
――この舞台は6作目ということですが、今田さん自身が毎回役作りをするということはありますか?
今田耕司 それはないです。おさむ君の中で、今回はこういう風にやらせたいであるとか、僕の中におさむ君が考えていることが入ってきたりするので、おさむ君が言うままに「こんな風に言ってください」ということならそうしますし、「ここはこんな気持ちで」と言われたらそうするので、まっさらな状態でいる感じです。
――ベッキーさんは演技に入るときに準備することはありますか?
ベッキー できるだけ、お友達の誘いを断って集中する、という感じです。特に舞台のときはそうです。違うエッセンスを入れたくないというか、舞台のことだけを考えたいし。役作りというカッコいいことは何もしていなくて、今田さんと同じで素のまま稽古場に行って指導してもらって演技を付けてもらってという感じです。
――バラエティをやるときとのモチベーションの違いはありますか?
ベッキー 全然違います。バラエティは編集がありますけど、舞台は全てがみなさんの目に映るので、また違う緊張感があります。
――自分をアピールする大きな機会でもあると思いますが、「こういうサプライズがしたい」ということはありますか?
ベッキー そういう気持ちは全部捨てて、ただただ頑張りたいとシンプルです。あまり欲張ったり、雑念は入れないように純粋に役者として頑張りたいです。
――役者のベッキーさんとバラエティのベッキーさんはどっちが本当のベッキーさんに近いでしょうか? 自分らしいのはどちらでしょうか?
ベッキー バラエティの方が自分らしいです。好きなときに笑っていいし。でも、感情は舞台の方がリアルというか。お芝居のときの方がドキュメンタリーみたいにリアル感があって、バラエティのときの方がちょとお芝居したりとか。
――今後は女優業に力を入れていこうという思いは強いですか?
ベッキー メインがバラエティというのは変わらないんですけど、女優業はお話があればという感じです。自分からマネージャーさんに「女優業を売り込んで」というのはなくて(笑)。頂いたお芝居の話はやるという感じです。
過去に歌手活動も…2人で音楽でユニット結成?
――ところで、この間、テレビ番組『ゴッドタン』(テレビ東京)でおぎやはぎの小木さんと歌った曲が凄く反響がありましたね。
今田耕司 あの話題の。
ベッキー いっぱい記事にもして頂きましたね。
――ああいった歌を歌えるということは心境の変化があったのでしょうか?
ベッキー 私はいつでも、ああいうのは歌えます。心境の変化があったから歌ったという感じではありません。
――だいぶ振り切れていたような印象を受けました。
ベッキー そう色々と書かれていましたね。自分をどう見せたいというよりも、あのゴッドタンをいいコーナーにしたかったので、番組のためにという感じです。
――今田さんは昔、曲を出されていますが、今後お2人でということは考えていますか?
今田耕司 デュエットですか?
ベッキー (笑)
今田耕司 ヒデちゃんとのみいたな?
ベッキー やりましょうよ(笑)
今田耕司 思ってもみなかったですよ(笑)。いいですね。歌番組にも出られるし。あるかもわかりませんよ。
ベッキー 経済効果が色々あるらしいですよ。(※編注=制作記者発表会時に記者から経済効果があると言われた)
――是非、その方面でも音楽業界を湧かせて頂けたらと。
今田耕司 本当ですね。いいかもわかりませんね。
――音楽は最近聴かれますか?
今田耕司 いえ、最近は全然。おすすめあります? 多過ぎて付いていけないんです。若いカッコいいバンドとか多いじゃないですか?
――今田さんはもともとユーロビートがお好きと聞いています。
今田耕司 僕は80年代のが好きです。
――今、80年代のリバイバルが起きています。
今田耕司 そうですよね。結局80年代あたりのが。
――是非、また復活を。
今田耕司 確かにね。KOJI1200(コージ・トゥエルブ・ハンドレッド)を。テイ・トウワさんのね。
――“feat. ベッキー”で。
今田耕司 そうですね。でも宮迫と友近もやっていますからね。ベッキーとデュエットをやったら話題にもなるし、いいかもしれませんね。いや、でもそこは小木君に譲らないと。
ベッキー 一応“オギッキー”で。
――今回の舞台で歌うということは?
今田耕司 わからないですよ? 何があるかわからないですから。前は大久保さんと歌いましたから。
音楽にも重なる、舞台によって生まれるもの
――そんな今田さんですが『明石家さんま向上委員会』(フジテレビ系)でホリケンさんとバーミヤンズを結成されていますが、なぜあそこまで仲が良いのかと思って調べたら、過去にこの舞台シリーズで共演されているんですね。そこから仲が良くなったのですか?
今田耕司 そうです。それまではホリケンと会うことなんてなかったですから。仕事で一緒になってもネプチューンで来ているので、その場限りじゃないですか? 「ご飯行こう」という感じにもなりませんし。やっぱり舞台からですね。ダイスケ(宮川大輔)もそうですよ。テンソ(吉本印天然素材)と世代も違うし。ダイスケもテンソの人間以外は先輩が苦手なタイプなので。
――この舞台をきっかけに今後、人間関係も発展する?
今田耕司 そうですね。舞台を一回やっていると距離感は近くなりますね。大久保(佳代子)さんにしたってそうだし。それ以前とは違いますね。“メスゴリラ”とか言いにくかったりしましたね(笑)。舞台をやると仲間意識が強くなるので、ちょっとキツめにいけなかったりするんですよ。観ている人にはわからないくらいの、自分の中だけの精神状態ですけどね。
――音楽にグルーヴがあるように、舞台でも決められたことをやっていく中でグルーヴはありますか?
今田耕司 もちろんそうです。生で、お客さんがいて、ですから。こっちだけじゃないお客さんとのグルーヴがあるんです。役者さんもよく言われるんですけど、やっぱり生は同じ出来がないです。今回の芝居だったらどの答えが一位を獲るかな、みたいなのが毎回です。
――回を重ねていくと完成度が上がっていく、というものではない?
今田耕司 そうです。一発目の緊張感が良かったりもするし。「結局、一回目が一番良かったな」とか。一回やっちゃうと客の反応もわかるので、ちょっと熟れてしまって邪念が入って「もっと泣かそう」とか「もっと笑わそう」となると肩に力が入って、「初日、二回目が良かったな」とか。そういうことがあるのも舞台の面白いところではないでしょうかね。
――表面には表れないけど葛藤があるのですね。
今田耕司 全舞台観た人にはわかるかもしれませんけど、「あそこの部分は三日目のが良かったけどな」と、自分の評価とおさむ君の評価も違ったりするんです。やはり俯瞰で観ているので、そのグルーヴ感を一番観ていると思うんです。僕はけっこう自分の出来次第で「今日は最高やったな俺!」って、他の人がミスろうが。だから「今日は一番良かった」と思ってもおさむ君の中では全然だったり。やっぱり気持ちが一番出ていました、という舞台が一番いいっていうんです。
――ご本人の中でも新たな発見があるのですね。
今田耕司 言ってしまえば、細かいテクニックとかはどうでもいいと。トチろうがどうしようが、クライマックスに向けて気持ちがブワっと出ていたり、みんなの感じが一体になって噛み合っているのが舞台にはあるみたいなんです。だから自分の中で「今回はミスった…」と思っても、「すっごい良かった」という評価だったり。だから面白いですね。
――一人一人のパワーや経験というのは大事になってきますか?
今田耕司 大事ですし、カバーとかもありますしね。だから音楽とちょっと似ているかもしれません。それこそライブなので。
公演情報
主演:今田耕司×作・演出:鈴木おさむのタッグで送る舞台シリーズが3年ぶりに開催。今回は、ベッキーが14年ぶりに本格的に舞台に挑戦する。他にも、町田マリー、加藤啓、伊藤修子、そしてTKO木下と曲者ばかりが集まった。
タイトルは「三途会!」そこは三途の川の手前。三途の川を渡れば、死者になる。そんな三途の川の手前で、会議が行われている。今日も、死ぬ一歩手前の人間の意識がそこに集まった。人生で様々な罪を抱えた人たちが会議を開く。三途会。 『三途会~私の人生は罪ですか?~』 公演概要 日時:2017年11月22日(水)~26日(日) 全7公演 11月22日(水) 開場18:30 開演19:00 ■会場:東京グローブ座(新宿区百人町3-1-2) |